平成12年7月6日付 日刊建設工業新聞より抜粋

京浜急行線油壺延伸−−半島性打開に大きな期待−−基盤整備に合わせ具体化へ

 京浜急行線油壺延伸計画は何を置いても実現させたい地元三浦市の長年の悲願である。三浦半島の最先端に位置し文字通り半島性という負の財産を背負う同市にとって交通手段を確保し交通機能を向上させることがまちづくりを考える上で不可欠な要素となっているからだ。
 唯一乗り入れている京浜急行線の現在の始発駅は三崎口駅。所在地は隣接する横須賀市との市境から約1.7
km南下した三浦市初音町下宮田でここから先に鉄道はない。
 マグロのまちとして有名な市の中心地三崎町へは自動車によるアクセスしかなく、三崎町へ向かう道路は半島西岸と東岸をそれぞれ南下してきた主要道路が一本に合流する典型的な渋滞路線となっているなど交通機能の低さは折り紙付きだ。
 延伸計画は三崎口駅から三崎町小網代地内の油壺駅までのわずか1
kmだが、市はこの1kmを「人の流れを円滑にし他地域との交流を活性化する大きな1キロ」と期待する。この区間には交通渋滞のメッカの一つ引橋交差点があり、鉄道が油壺まで延伸すればこの交差点を通らずに三崎町までたどりつけることになる。油壺駅から三崎町までは車で約10分で到達でき現状に比べて格段に利便性が向上するという。
 観光客を呼び込むことが地域を活性化させる重要な手段であるだけに首都圏からのアクセスの簡便さは大きな武器となる。運輸政策審議会が答申したA1路線(2015年までに開業することが適当である路線)の位置づけは市にもたらされた福音である。

2015年までの開業にメド
 延伸が予定されている地区では県などにより農地造成事業(47ha)と土地区画整理事業(49ha)が計画されており、既に防災工事が始まっている。鉄道延伸はこれら基盤整備事業を踏まえて実施。この中に鉄道用地が確保され鉄道を挟む形で両事業が具体化することになりそうだ。
 京浜急行電鉄ではこれら事業の進捗に合わせ事業スケジュールを決めていく方針。なお基盤整備の完了は10年頃になる見込み。
 大正年間には鉄道免許を取得(1969年に一部廃止)している同路線はこの油壺までの1
kmで整備が完了する。


京浜急行延伸計画図(新聞記事挿絵を参考に作成)