2002年GW 白馬沢・金山沢の急斜面滑降
森川 記
参加者:風流士亭所属 平田和男・森川孝雄
日程 :4/29 − 5/1 予備日5/2
天気予報では、29日は晴天。他の日は曇り又は雨。以前から白馬沢は気に
なっていた。滑走斜面を確認しながら登りたかったので、猿倉ベースを計画。あと
の二日で白馬鑓温泉ルートと金山沢も行けたら行くの計画をした。
4月29日
前夜18:00戸塚区平田宅を出発、22:30頃白馬着。白馬には酒類の自販機が
無い。冷たいビールが飲みたい一心で取材の結果、駅南300mに24:00迄オープン
の酒屋を発見。例によって車中で前途を夢見て宴会モードに入る。酒は平田持参
の高清水。車は二股で進入禁止だ。猿倉までのオープンは5月1日10:00。ちょっ
と当てが外れた。
二股(820)5:50−7:15猿倉(1230)7:40−8:50馬尻(1510)9:05−10:15ルンゼ下(1750)
10:35−11:25(2055)11:40−12:50(2300)13:15-14:00(2550)14:15−14:30
稜線直下(2650)15:00−16:00猿倉荘泊
起床後、支度を済ませスニーカーで猿倉まで向う。平田は兼用靴。猿倉まで雪
は無い。例の代かき馬が見える。あの横を登り滑ると思うと気が遠くなる距離だ。
標高差は約1900m有る。出発時の気温は3℃。
猿倉荘の裏の林道のショートカットを2〜3段登り、シール登行を始める。天気
は上々。馬尻からの沢入口は狭いが、左に曲がった処で広くなる。ルンゼ状の喉
部分で一瞬のためらい。左側のルンゼは2本共、全面デブリだ。右側の広い沢の
方が快適に見える。気を取り直し、アイゼンに履き替え、真中のルンゼに入る。雪
玉や落石が来るので気を抜けない。大きな奴が来たら一発でお陀仏か。雪の安定
期にしか入れない斜面だが、例年と違うような時は、どんな判断で安定期で有る事
を確認するのだろうか。登行はデブリの凸凹の方が平らな面より歩き易い。喉部分
を過ぎると斜面は一段と急になる。アイゼンも3回位ステップを繰り返しながらの登
行で非常にペースが遅くなる。表面は柔らかいが中が硬い雪だ。滑るにはまあまあ
の雪だ。この斜面でアイスバーンはご免だね。森川は斜め登行に切替える。平田
は依然直登だ。風が無いのが救いだ。気温は猿倉から沢上部まで7℃〜10℃の
間を行き来している。今度登るならピッケル使用か、ストックのリングを外せるよう
にした方が良さそうだ。代かき馬の横辺りからは右へ斜行すれば斜度はやや緩い
が我々は馬の真横を稜線に向って直進。稜線は雪解け気配の個所も有るが、我
々の行く手は雪の絶壁で、直下の這松の上で滑降準備をすることにした。
スキーを履いたら、登る時あんなにドキドキした急斜面がそれなりの斜面に替わ
る。現金な物だ。登る技術が足りない証拠でも有るようだ。ぶっ飛ばしたくなる素晴
らしい斜面だが、万が一転倒して止まらなくなるのは避けなければ。ここで怪我でも
したら笑い者になってしまう。出だしは明るく広い急斜面で快適だが、すぐに斜面は
日が陰った処へ入る。スピードセーブとこまめな停止を心掛けゆっくりと滑る。気温
と風に恵まれ、日陰の雪もそんなに固くなく、快適だが、喉部に入ると土混じりのデ
ブリを避けながら、小回りと横滑りの連続になる。喉の下からは又広く明るい、緩
斜面が馬尻まで続く。馬尻からは左右の足荷重を交互に換え、疲れた足をいたわ
りながらの直滑降が延々と続く。ストックはそんなに使用しなくても猿倉荘直上まで
滑り降りる事が出来た。
白馬沢の登下降では、他に誰も居ず、馬尻からの下りで数パーティの登りに出
合ったのみ。まずはビールで今日の成果に乾杯。あとはニッカのモルト水割りで、
明日の計画に話が弾む。猿倉荘の相客は一名のみ。今日頂上から降りてきて、
明朝帰るそうだ。
4月30日
猿倉(1230)7:00−8:30(1650)8:50−10:10(2050)10:15−11:30非難小屋(2550)12:00
−猿倉12:50
5時20分起きたら、今日は雨。天気は明日の午後まで悪いらしい。曇り程度
を期待したが駄目だった。森川は停滞を提案したが、平さんは行く気だ。大雪渓
から白馬頂上−柳又源流−雪倉−蓮華温泉泊で明日は天狗原−栂池でいいや、
となった。鑓温泉と金山沢はお預けとする。
出発は遅いが昼過ぎに頂上へ出れればいいだろうと出発。雨と急ぎたい気持
ちで登行ピッチは何時もより長めにとる。1650mでシールをアイゼンに替える。
風は無い。視界も数百mは有る。雪は雨のせいか昨日より柔らかく幾分登り易い。
2200m位から風が出だした。平さんが寒さに震えだした。頂上宿舎まであと60
0mだ。頂上宿舎へ何とか潜り込もうと登行を続行する。風が更に強く、登行も風
が弱まるタイミングを測りながらの歩きになる。目の前の急斜面を登りきったら休
憩にしよう。目の前に屋根が見える。非難小屋に入れるかと喜んだが、出ている
のは屋根だけ。がっかり。すぐ横の岩の陰に入る。気温は4℃。休憩にツエルト用
のフライシートを出す気力も無く、お互いにワンピッチを残して猿倉まで撤退する
事で合意。
平さんの逃げ足は速い。先に風の弱い処まで降りて待ってくれる。森川の支度
は何時もながら時間が掛かる。やっと合流し、猿倉まで一目散の滑降。かなり足
に負担があるのか、荷が重いのか快適では無い滑走だが50分の滑走で猿倉荘
に到着。登り下り他のパーティー無し。
ストーブ前で、持ち物・衣類他乾かすが、結構に心まで疲れている。寒いがとり
あえずビール。暖かい食事をと言うことで、ストーブ前でソーセージ入りインスタント
ラーメンを作り食す。猿倉荘には乾燥室が無いので、多分衣類は乾かないと判断し、
今夜は白馬村まで降りる事にした。旨いものでも喰いに行こう。出発は3時半と決
めた。二股の車まで歩かなくては。その頃除雪のオペサンがお茶を飲んで居て、降
りるのなら荷物を除雪車に積んでくれると言う。渡りに舟で、是非にとお願いし、空
身で降りる事になった。登りに85分掛かった道もスキー靴で50分で下りきった。
オペサンには充分お礼を言った積もりだが言い足りない様な気もする。
とりあえず、平川近くの「岳の湯」に入る。露天風呂は無し。濡れ物は車の中に
ロープを掛け、有るだけの物を吊るした。次は飯。若い頃のうろ覚えで「焼肉八方」
を捜し、一次会。車は白馬駅前に置いて、雨の中傘をさして歩いて行った。値段・
ボリューム・味ともに満足。二次会は「居酒屋花舎」。これははずれ。つまみが乾燥
干からび気味か。酒一杯で早々に撤退。車中で三次会となる。後席は干し物の山
なので、運転席・助手席での就寝となった。疲れのせいか、酔いのせいかぐっすり
寝れたが、車中の暖房を28度設定で掛け放しなので、喉が渇いて夜中に目が覚
めた。
5月1日
猿倉(1230)10:25−11:40喉の下(1600)12:00−12:40急斜面下(1880)13:10−14:00
(2230)14:30−15:25猿倉
今日も雨。午後には晴れると言う。吊るした衣類とスキー靴はすっかり乾いた。
猿倉までの道が10:00まで開通しないので、10時の雨の具合で金山沢を途中まで
攻める事にした。稜線まで出なくても適当な時間まで登り、温泉に浸かって早めに
横浜着にしようと計画。雨が上がらなければ、温泉のはしご?
9:15霧雨。スキーにシールを貼ったり、準備万端。9:55ゲートオープン。10:25猿
倉駐車場横からシール登行開始。金山沢の入口も、ほんまかいなと思うような、狭
い入口だ。おまけに北股沢の上の雪は、もうひびが入っている。やがて金山沢も広
くなるが、すぐにルンゼ状の狭い喉に出る。狭いルンゼの真中は割れて豪流が音
を立てて流れている。斜度は白馬沢より緩やかだ。1880mでシールをアイゼンに
替える。霧雨は上がりガスが出だした。又狭いルンゼになる。その上は結構な急斜
面だ。雪が柔らかい。気温は8℃。2100m位で天気は快晴になってきた。斜面の
切り替えになったところで、休憩とする。
眼下は、一面の雲海。素晴らしい眺め。左下に地形図上の2070m点の池らし
い地形が見える。稜線まではあとワンピッチだが、時間の都合もあるし、途中での
諦めは昨日で慣れたし、下降に入ることにする。上部は白馬沢に劣らない急斜面
で快適な滑降が続く。喉を過ぎると広大な中斜面。ルンゼの途中はスキーを外して
下降。その下は、快適な緩斜面。あとは馬尻まで一息だ。今回の滑降は3日間とも
休憩を入れなかった。今日も殆ど人はいない。
駐車場からは、「小日向の湯」を通り過ぎ、「倉下の湯」へ一直線。ビールで乾杯。
湯は鉄泉か。湯船は露天のみ。半分は屋根が掛かっているが。眺望は最高。杓子・
白馬鑓・天狗・八方尾根・五竜が目前に。洗い場は屋内。真っ白の季節にも来て見
たいものだ。今回の山行は雨にたたられた割には、斜面・束の間の眺望・焼肉・温
泉と満足出来るものになった。