【概要】


【緒言】水耕栽培での高糖度トマト生産の新たな手段としての溶存酸素制御利用の可能性が、本研究室の昨年の実験により示された。しかし、短期間の実験であったことから、長期的な栽培に適しているか不明である。また、ストレス強度の限界も確認されていないことから、最適な溶存酸素濃度の特定がなされていない。そこで本実験では、溶存酸素制御を利用した高糖度トマト生産技術を探るべく、さらに低い溶存酸素濃度下でトマトを長期間水耕栽培し、生育、果実収量および品質を調査した。
【材料および方法】トマト'ハウス桃太郎'を供試した。溶存酸素(DO)の制御は濃度が設定値より下回るとポンプで養液が循環され、途中に取り付けた通気弁から空気が取り込まれるようにして行った。処理区はDO7ppm(対照区)とDO2ppm(DO2区)で一定に設定した区と、ポンプを対照区に連動して動かし、時間帯(昼間、夜間、夜間+午前、夜間+午後)別に通気弁を閉じ空気を供給しない時間帯通気制限区を設けた。各処理区の生育について、草丈、茎径、葉面積、葉の乾物重、葉色および各花房の開花日を調査した。果実については着果数、尻腐れ果数、重量、外観、空洞、糖度および酸度を調査した。
【結果および考察】溶存酸素ストレスを与えると茎の伸長、肥大が抑えられたが、葉面積あたりの乾物重は重くなった。葉色は対照区と比較してストレス区で濃かったが、全処理区、処理開始から徐々に薄くなり、摘心後に再び濃くなった。各花房の開花日はストレス区で遅くなる傾向がみられた。栽培中期以降、ストレス強度の強かった区では萎凋症状が現れ、特に夜間+午後通気制限区では栽培終了時には約9割の植物体が枯死するに至った。着果数にはストレスによる一定の傾向が認められなかったが、尻腐れ果の発生割合はストレス区で高くなった。収量は夜間+午後通気制限区で対照区の2/3になった。外観と空洞の評価はDO2区で高かった。果実の糖度、酸度は栽培後期まで処理区間で差がなかったものの、摘心後、全処理区で糖度の上昇がみられるとともに、処理区間にも差が現れた。以上より、今回の実験では植物体が萎凋症状を呈するほどのストレスを与えても、栽培後期まで果実の糖度は上昇しなかったことから、栽培が長期にわたると低溶存酸素濃度により水分とともに糖の合成に必要な養分の吸収が抑えられることが考えられ、これが糖度の上昇しない要因と推察された。しかし、摘心後に糖度の上昇が確認されたことから、栽培方法を考慮すれば溶存酸素制御を利用した高糖度トマト生産技術の確立が可能であることが示唆された。