<植物体への影響>
栽培中期において各処理区の一定の場所からの草丈を求めた結果、草丈は対照区と比較してN+A区では有意に小さくなっており、N+M区でも小さくなる傾向が見られたことから、強度の溶存酸素ストレスにより茎の伸長は抑制され、ストレスがより強いほどその傾向は顕著に現れると考えられた(第2図)。昨年の実験でも強ストレス区で茎の伸長が抑制されたとあり、溶存酸素ストレスにより茎の伸長は抑えられることが明確となった(加藤:1998)。栽培後期に調査した茎の直径は対照区と比較して他の全ての処理区で小さくなった(第3図)。対照区と比較して溶存酸素ストレスを与えた処理区では茎の伸長、肥大が抑制されたことから、植物体は溶存酸素ストレスを受け生長が抑制されたと考えられる。しかし、その影響はN+A区でのみ顕著に見られたことから、少々低い溶存酸素濃度では植物体への溶存酸素ストレスの影響は小さく、強度の溶存酸素ストレスを植物体に与えるためにはより低い溶存酸素濃度に設定する必要があると思われる。栽培中期にサンプリングした葉の葉面積は対照区と比較して他の処理区で小さくなり、特に溶存酸素ストレスの強い区ほど小さくなった(第4図)。葉の乾物重には有意な差は見られなかった(第5図)。葉面積あたりの乾物重は対照区と比較して他の処理区で大きくなり、特に溶存酸素ストレスの強い処理区で顕著であった(第6図)。溶存酸素ストレスにより葉面積は小さくなるが、面積あたりの乾物重は大きくなり、水分ストレスを与えた植物体に見られるような厚い葉が得られた。栽培後期(摘心後)にサンプリングした葉については、D区、N区は対照区と比較して差はみられなかったが、N+M区、N+A区は葉面積、乾物重ともに小さくなった(第7、8、9図)。葉色の調査結果によると、SPAD値は対照区と比較して全ての処理区で高くなった(第10、15図)。しかし、葉色は全処理区で処理開始から徐々に薄くなったが、摘心後に再び濃くなった(第10、11、12、13、14図)。栽培が長期にわたると溶存酸素ストレスにより水分とともに養分の吸収、転流までもが抑えられることにより、葉緑体が作られず葉色が薄く能力の低い葉になったと思われる。摘心後には、シンクの減少により葉に葉緑体を構成する養分が十分供給できるようになり、このため葉色は濃くなり高糖度トマトの生産が可能な能力の高い葉になったと思われる。ただし、摘心後N+A区の葉色が濃くならなかったのは、植物体が枯死してしまうほどのストレスがかかっていたためと思われる。厚くて葉色の濃い葉になったことから、摘心後、ストレス区では高糖度トマト生産に適した葉になったと考えられる。各花房の開花日を調査した結果、各処理区の開花日に大きな差はなかったが、対照区と比較して溶存酸素ストレスを与えた区で開花日が遅れる傾向が見られた(第2表)。開花日が遅れるということはそれだけ溶存酸素ストレスにより生育速度が遅くなっていたということである。栽培中期から後期にかけてDO2区、N+M区、N+A区の植物体に萎凋症状が確認されたことから、溶存酸素ストレスにより水分ストレスがかかっていたと思われる。特にN+A区の植物体は顕著な萎凋症状を呈し、栽培終了時には処理区の約9割の植物体が枯死に至ったことから、ストレス強度の限界を超える溶存酸素ストレスがかかっていたと思われる。