材料および方法


1999年5月30日にトマト"ハウス桃太郎"を育苗培土"土の素"をつめた播種箱に播種し27℃に設定したインキュベーター内に2日間置き発芽させた。6月19日に本葉が出芽した苗をロックウールキューブ(75×75×50mm)に移植し、高知大学農学部附属農場内のガラス温室に溶存酸素の制御が行えるようベッドを準備し定植した。本実験はM式水耕システムを用いた(第0.1、0.2図)(今泉:1973)。ベッドは長さ810cm、幅35cm、深さ15cmで、1ベッドに植物体25本、株元間30cm、一株あたり根域容積15,750cm3となるようにし、1処理区2反復とし、処理区のベッドを回すようにした。仕立て方法は2条でつる下ろし整枝法を用い、条間60cm、株間60cmとした。培養液は水耕栽培用液肥"大塚ハウス1号"、"同2号"および"同5号"(大塚化学株式会社)を用い、基本濃度の0.8倍液を基準に適宜調整し与えた。培養液の補充はボールタップを用いてベッド内に常に一定量あるようにした(第0.2図、写真)。溶存酸素濃度の制御はDOセンサーと養液循環ポンプに連動した制御板:D-480D((有)日亜産業)を用いて行い、DOが設定値より下回ったときにポンプで養液が循環され、途中に取り付けたウェアー(通気弁:空気混入器)から空気が取り込まれるようにした(第0.1、0.2図、写真)。DOセンサーには正確な値が取れるようバスポンプを用いて常に15~20cm/s の水流をあてた。本実験は7月26日より処理を開始し、第6果房収穫までを栽培前期(栽培開始〜9月末)、第7果房から第11果房収穫までを栽培中期(10月始〜11月末)、第12果房収穫以降を栽培後期(12月始以降栽培終了まで)とし、12月8日に摘心をし、1月いっぱいで調査を打ち切った。処理開始時に草丈、葉数およびSPAD値を測定し、ほぼ生育が揃っていることを確認した(第1表)。各処理区は制御板を用いて溶存酸素濃度をDO7(5)ppm(対照区)とDO2ppm(DO2区)で一定に設定した区と、ポンプは対照区に連動させて動かし、時間帯で通気弁を閉鎖し空気を取り込まない時間帯通気制限区を設けた。時間帯通気制限区は通気弁を閉じる時間帯として、昼間(8:00から16:00)、夜間(16:00から翌8:00)、夜間+午前(16:00から翌12:00)、夜間+午後(12:00から翌8:00)の4処理区を設けた。計6処理区は、対照区(DO7(5)ppm):時間帯通気制限なし、DO2区:時間帯通気制限なし、D区:昼間通気制限区、N区:夜間通気制限区、N+M区:夜間+午前通気制限区、N+A区:夜間+午後通気制限区とした。DOの日変動を定期的に携帯式溶存酸素濃度計:NDM-1((有)日亜産業)を用いて調査した。処理開始時の対照区の溶存酸素濃度設定値はDO5ppmだったが、溶存酸素濃度の影響が植物体および果実に処理区間で差があまり見られないため、9月15日に対照区のDOの設定値を5ppmから6ppmへ、9月20日に設定値を6ppmから7ppmへ変更した。第1花房は除去し、第2花房より調査を開始した。7月28日より、週2回、3花以上開花した花房にトマトトーン(石原産業)でホルモン処理を各花房に1回施した。適時、カルクロン(日本曹達株式会社)でカルシウムの葉面散布を行った。植物体の生育に伴い脇芽の除去、誘引を行い、つるを引き降ろした際に果実の着いている最下位果房の下3葉を残し摘葉した。12月8日、ホルモン処理の済んでいる最上位花房の上3葉を残して摘心した。培養液のEC(電気伝導度)をEC計:CM-53(TAKEMURA ELECTRIC WORKS LTD.)を用いて定期的に測定し必要に応じて培養液を更新した。11月7日から12月4日まで1週間おきに計5回、植物体の一定の果房からの草丈を測定し各処理区で比較した。12月11日、12月29日に完全に肥大したできるだけ若い節間の茎の短径、長径を計測し、平均を直径として求めた。11月10日、12月22日に各処理区より一番若い完全展開葉を採取し、葉柄を除いた小葉の葉面積を測定した後、80℃で72時間乾燥させ、乾物重を量り、葉面積1m2あたりの乾物重を求めた。試験期間を通して葉緑素計:SPAD-502(MINOLTA)を用いてSPAD値を測定し、葉色を評価した。各花房の開花日として3花以上開花した日を調査した。各果房の着果数および尻腐れ果実数を調査し、尻腐れ果実の発生割合を求めた。9月6日より、週2回、完熟した果実から収穫して果実重として生果重を量り、収量を求めた。各処理区、各果房の果実を無作為に選び外観を以下のとおり評価した後、赤道面を上下半分に割り、空洞、〔心室数〕および食味を以下のとおり評価した。外観は変形指数を変形具合で0〜2の評価し、変形果実の発生割合を求めた。空洞は空洞指数を空洞具合で0〜3の評価し、空洞果実の発生割合を求めた。〔心室数は赤道面断面で確認できる心室を数えた。〕食味は、口に含んだときの香り、甘味、酸味、を総合的に判断しおいしさ具合で1〜5の評価をつけた。各評価をつけた後、サンプル果実をホモジナイザーで均質化し、均質化されたどろどろ状の果実を遠沈管に40ml入れ遠心分離機で3,000rpmで15分間遠心分離し、その上澄み液をNo.101またはNo.5Bの濾紙を用いて濾過し、濾液の糖度と酸度および糖酸比を以下の方法で測定し求めた。糖度は屈折糖度計(ATAGO)を用いてBrix(%)を測定した。酸度は濾液5mlに脱気した蒸留水を加え10mlとし、0.1%のフェノールフタレインを2滴加え、0.1規定の水酸化ナトリウムで中和滴定し、クエン酸含量に換算し算出した(式:滴定量×0.999(ファクター)×0.1(NaOHの規定度)×192/1000(1M/l のクエン酸分子量)/3(クエン酸の規定度)×100/5(ml)=100ml当たりのクエン酸含量(g/100ml)=酸度(%))。糖酸比は前述のように求めた糖度を酸度で割ったものである。栽培終了間際の果実については、糖度に差の出た処理区について、果汁のグルコース、フルクトース、およびスクロースの含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて以下の方法で測定し、糖組成の割合を比較した。糖含量は均質化、遠心分離し濾過した果汁を、サンプル前処理用フィルター(0.45μm)で更に圧迫濾過しHPLC(日立製作所、カラム:CosmosilPC5NH2、カラム恒温槽の温度:30℃、移動相:アセトニトリル7:蒸留水3)に5μl注入して定量した。有意差検定はダンカンの多重検定(5%水準)を用いた。 補足調査として、高知大学農学部附属農場における慣行の水耕栽培トマト(M式水耕)の調査を行い、生育について茎の直径、葉色を、果実について果実重、糖度、酸度、および糖組成比を、溶存酸素濃度を基に比較検討した。また、本年度において佐藤が行った実験での、土耕栽培における高糖度トマトの糖組成比について調査し比較検討した。なお、佐藤の実験結果については1999年度卒論参照(佐藤:1999)。