『フク・ホロヴァーの生涯を追って−ボヘミアに生きた明治の女
  吉澤゚子・著  草思社 2002.3発行 2500円
 
 この本の作者、吉澤゚子さんは、先日の会報9号で『地元作家に聞く』に紹介されたので、既に読まれた方も多いかと思いますが、あえて投稿しました。
 この本は推理小説でも恋愛物語でもないがそんな要素をすべて含んだ明治生まれの女性のドキュメンタリーなのである。
 明治19年に和歌山県で氏族の娘として生まれた竹本福が、大阪瓦斯の技師として来日していたチェコ人カレル・ヤン・ホタと20歳で結婚、フク・ホロヴァーとなった。幸福な新婚時代を横浜/上海で過ごしたが、戦争の影に追われて彼の母国チェコに移住し、幾多の苦難に耐えて昭和40年78歳で没するまでの生涯を埋もれた歴史から発掘したノン・フィクションである。
 彼女の一生は東欧の近代史=宗教・民族・思想・独裁・暴力などが世界戦争と結びついた暗黒時代=に埋もれていたのを、吉澤さんは愛情を込めて彼女を掘り起こすことで強大な隣国に囲まれて翻弄されてきた小国チェコの悲哀までもが描かれている。
 厳しい環境に耐えて、楽しみを作り出して生き抜いた「フク」の人生とチェコの歴史が重なって見えてくるようである。
 15年という長い歳月をかけてこの大作をまとめられた、吉澤さんの前向きなエネルギーにひたすら感服する次第です。(M/S)
※会報9号に関連記事
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