◆東京にデポジットライブラリーを
    −多摩むすびの構想
 
 『東京にデポジットライブラリーを――多摩発、共同保存図書館基本構想』(ポット出版)という本が12月に発行されました。多摩地域の住民、公共図書館員、図書館員OBなどによる任意の団体「多摩地域の図書館をむすび育てる会(略称:多摩むすび)」の手になるものです。
 2001年の都立図書館再編計画の策定以降、知事本部の「抜本的見直し」という行政評価(評価のよし悪しは別にして5段階評価の2で、1にあたる「廃止」寸前の評価)のなか、都立図書館はその機能を変更、また蔵書の廃棄(結果的には「再活用」)、地域の図書館にない本・雑誌を貸してくれる協力貸し出しの範囲縮小など、残念なことにだんだんとサービスを後退させてきています。最近の例でいえば、

@新刊書については、館内閲覧の利用者と競合することから、閲覧室の書架に並んでから30日間は、館内利用を優先するため、協力貸出を行わない、
A高価な資料については、紛失があった場合の回復が非常に困難であることから、1冊10万円以上の資料は協力貸出を行わない、
B古い資料については、全般的に傷み具合が進み、紛失や損傷があった場合の回復が非常に困難であることから、昭和25年以前に刊行された資料は協力貸出を行わない、
C重複所蔵している雑誌約870タイトルの除籍(これまで貸し出し対象となっていた約600タイトルを含む)というものです。

すべてにアンチを言うつもりは毛頭ないが、もう少し検討の余地はあるのではないか、利用者への周知はどうなっているのか、というのがわたしの率直な感想です。そんななか、「蔵書の廃棄」問題に「利用のための保存」という視点を据えて対案を出してきたのが、この『東京にデポジットライブラリーを――多摩発、共同保存図書館基本構想』です。

 その内容を一言で紹介すれば、都立図書館に限らず市区町村立図書館の書庫のスペースに限界があるため溢れ出てしまう本を共同で選択・保存する図書館(=デポジット・ライブラリー)をつくろうではないか、ということになります。多摩むすびの公共図書館員によるプロジェクトチームが素案を作り、4回にわたる「公開説明検討会」で参加者延べ120名の討論を経て成案が得られました。第1部がメインの「多摩発・共同保存図書館基本構想」で、第2部には「資料」として関連する論文・統計などを収録しています。
 ざっとですが、目次を眺めてみてください。

第1章 保存と利用をめぐる図書館の現状と課題(図書館を使い分ける〜図書館の役割分担〜/保存と利用の現実)、
第2章 東京にデポジット・ライブラリー(Deposit Library)を作ろう(デポジット・ライブラリーとは/なぜ東京にデポジット・ライブラリーを求めるのか/実現の可能性/必要な資料を必要な時に必要な人に届けるために/わたしたちの考えるネットワーク作り)、
第3章 多摩地域デポジット・ライブラリーの基本的な対応(基本的な機能〈本体事業〉/基本的なスタンス/資料の収集と購入/収集する資料の選別/個人への資料提供/サービス内容の限定/組織体としての活動範囲/保存目標/運営主体の検討/プロジェクトとしての運営体制の提起など)、
第4章 デポジット・ライブラリー実現に向けた経費の概算、
第5章 NPO法人でデポジット・ライブラリーを運営した場合
資料 デポジット・ライブラリー実現に向けた背景動向/デポジット・ライブラリー構想を考えるための参考文献とウェブサイト/多摩地域公共図書館の共同保存書庫構想について/デポジット・ライブラリー構想にいたるまで/多摩地域図書館、デポジット・ライブラリー構想をめぐる統計データ/新聞報道
 

紙幅の都合で詳細に解説しませんが、1点だけ、資料の中から小平の図書館に関係する数字を紹介しておきます。「2001年度:図書3,200冊、雑誌613冊」。これは小平市立図書館で所蔵していないために、都立図書館からの協力貸し出しを通してわたしたち利用者がこの年借りた冊数です。また2001年度に38,849冊が小平市立図書館から除籍されています(なお除籍本は「ブックリサイクル」というかたちで無料配布されます。今年度、雑誌は終了しましたが、「一般書(文学書含む)」の無料配布が2月21・22日に中央公民館、各地域館でおこなわれます)。

『東京にデポジットライブラリーを』は、中央図書館が2冊所蔵、新着本のコーナー(請求記号014.68)と2階の地域・行政資料コーナー(請求記号K A1/000)にあります。友の会にも1冊あります。ぜひ手にとってお読みいただきたく紹介しました。なお友の会主催で、3月8日に多摩むすびのメンバーによるこのプロジェクトの説明会を開く予定になっています(詳細は次号の交流紙で案内します)。
 暮れと正月に「この春、電子書籍の有料レンタル(配信)スタート」として読み物としての電子出版の本格的な始動が新聞などで報じられました(朝日12/28、日経1/4、『考える人』2004年冬号)。とはいえ、本が無くなるわけではありません。今後は紙と電子の使い分けとなる可能性が強いとおもわれます。だからこそともいえますが、すでにある本の「利用のための保存」は今後ますます考えていかなければならないことと思っています。
東京にデポジット・ライブラリーを : 多摩発、共同保存図書館基本構想 / 多摩地域の図書館をむすび育てる会編・著. - ポット出版, 2003.12. - 189p, 19cm. - 1600円. - ISBN 4-939015-57-2
参考URL
多摩むすび
http://www.hinocatv.ne.jp/~je1hyg/kankeidantai/tamamusubi/tamamusubi.htm
都議会文教委員会の記録 平成15年11月18日
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/bunkyo/d3030090.htm
 (氏家 和正  多摩むすび会員)
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