ユニオングローブと聞くと、大学を卒業する前の冬、レコードコレクターの永井さんに「SSシリーズ」を何枚も貸してくれと頼んで「SSだって?変なレコードが好きなやつだ。」とあきれられたのを思い出す。自分では聞きたくてしょうがなかったから頼んだのだが、今考えると相当変わったことだったのかもしれない。しかし、永井さんはそれを持っているんだから、もっと変な人だとも言える。(SSシリーズとはユニオングローブの主催者が自分で出していた実況盤のことで、その当時毎年一枚づつでていた。)
駐車場で、助手席に乗る為左側に行こうとすると「反対やで、こっちや」、といわれ左側通行の国にきたことを思い出す。駐車場からフリーウェイに出てすぐ現れるはずの、「Well
Come To North Carolina」の標識を撮ろうとビデオを取り出すがなんとテープがはいっておらず、また次回来る時までお預けになってしまった。この標識は前回来た時にいきなり出てきて感激したので、どうしても映したかったのに。
77号線に入り、レイク・ノーマンの橋を渡り、ステイツビルに近づいていく。前回景色のよさで感激した教会のある場所では木がずっと大きくなっていて前回ほどの感激を感じられなかった。オールドモックスヴィル・ロードを走る。もうすぐ健ちゃん家だ。
車はアプローチを入っていく。りんごの木が大きくなっていた。かんちゃんが、庭の小さな畑に水をやっていた。ウサギが二羽走り回っている。
7時ごろになっていたので、早速ビールと酒を始める。子供たちの写真を見せたり、5年間の出来事を話したり。日本の友人たちのビデオを見たりして、すぐ夜は更けてしまった。
ノース・キヤロライナ 旅日記
〜 Mt.Airy Old Time Fiddlers Convention 〜
オールドタイムミュージックのふるさとへ
国道77号線を一路北上する。空は快晴。気温も高く、真夏の様だ。10分ほどで「ユニオングローブ」の標識が見える。先週はユニオングローブのフェスがあり、健ちゃん達は毎日日帰りで行ったそうだ。すごい環境だ。ユニオングローブとマウントエアリーは続いて開かれるのでユニオングローブの後の月曜日は祭日でマウントエアリーは金曜日から始まるというのに水曜日あたりから行ってる奴とかが沢山いる。
「リッチ・ハートネスも来とるやろ。加瀬が来ると言うといたで。リッチはもう神懸かりや。いずれ人間国宝になるんちゃうか」
車はどんどん進み、やがて「右マウントエアリー・左ゲイラックス」「MountAiry Galax」と一枚の板に書いた出口標識が出てくる。この文字には身体と心が大きく反応する。
マウントエアリーの出口付近が工事中で一車線となり反対車線を走らされる。健ちゃんはマウントエアリーの出口と思われるところを出ようともせずに真っ直ぐ進んで行く。変だと思いながら「出なくていいのかい」と聞くと「まあね」と応えどんどん進んでいく。
「行き過ぎたんじゃないの」
「いやぐるっと回っておりていくんや」
「このまんまだとヴァージニアに入っちゃうぜ」
「そやな−」
2000年6月2日(金)
定刻どおり(現地時刻12:00)シカゴ・オヘア空港着。ターミナル移動用のモノレールに乗る。シヤーロット行乗り継ぎの「E2a」ターミナルにはローカルな感じの年寄り夫婦がたくさんいて、南部へ行く興奮が盛り上がる。
シャーロットについて飛行機から降りるとタラップのトンネルのむこうで、もう健ちゃんが待っていてくれた。シヤーロット空港のタラップは5年前と変わらなかったが、少し歩くと展示品とかが多くなりにぎやかになったような気がする。
「シヤーロットはどんどん大きな街になってきとるで。」
今を去ること7年前。2000年6月、わしはオールドタイムミュージックを求めてノースキャロライナへと旅立った。これ以前にもアメリカをたずねたことは何度もあったが、憧れの地マウントエアリーには近づいたことが無かった。
1994年に彼の地に住まいを移した古い友人の井上健と久闊を叙しながらの音楽三昧の楽しい日々であった。
州鳥の真っ赤なカージナルやブルージェイの声だろうか、にぎやかな小鳥の声で目覚める。
井上一家は既に起きて、猫の世話だの、仕事だのといつもの生活だ。年に一度のマウントエアリー・フェスの日だとはいっても、べつに興奮する様子もない。
12時すぎに家を出る。
2000年6月1日(木)
マウント・エアリーのフイドラーズ・コンベンション目指して、いざ出発。
「サリー・カウンテイ」「Surry County」の標識が出る。「おお、サリーカウンティが出てきた」車は山道にさしかかる。お次は「ファンシーギャップ」「Fancy
Gap」の標識。「ああ、ファンシーギャップ」。
車窓の右側の景色はピードモント平野を一望に出来ている。トミーアンドフレッドのCDのライナーノーツに書いてあったこの地域の説明(トミーとフレッドが育ったのは、ブルーリッジ山脈のふもとで、西に遥かかなたまで続くピードモント平野の始まるところだった)がそのまま目に飛び込んでくる。ここが俺のふるさとか、と体が震える。
飛行機はユナイテッド航空UA884便(14:15発)
I-77
ピードモント平野