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ノース・キヤロライナ 旅日記   その2

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その1

 車はしだいに下り始める。
「なんか道を間違えたらしいな−」
「さっき出口らしいのが有ったから聞いたんだよ」

「気がつかんかった。ここで降りよか。ゲイラックスはここから西へちょっと行ったところや。」
道を探すと「キャロル・カウンティー」の案内所が有った。そこで止めて地図を確認する。
やはり行き過ぎていた。
しかしピードモントが一望に出来たのだから文句はない。キャロル・カウンティーだって、ラウンドピークの重要地点だ。フォークウェイズのレコードString  Band Music At Grayson and Carroll County VAが思い浮かぶ。道を間違えてくれたおかげで、いろんな所を見ることが出来た。

 キャンプの準備が整った頃、30歳ぐらいの小柄な女性が来て健ちゃんに「5時からむこうのテントでポトラックで夕飯だから」という。
 テントの隣では相変わらずのジャムが続いている。近づきたいがなんとなく遠くから見ていた。健ちゃんもフイドラーが誰だかわからないという。二人いて、とてつもなくうまい。ギターは、今アリス・ジェラルドと一緒にやっている誰とかだと言う。白髪の女性だ。(注 ゲイル・ギャレスピー)
 健ちゃんが5時になったので飯に行こうという。そのテントまで行く間に、マック・ペンフォードがバンジョーを弾いているのをみる。その次にリッチ・ハートネスが誰かと話しているのを見かける。
「リッチがおるで」
「誰かと話してるから。あとにするよ。」
 川のそばでは、バンジョーの教本を出した人が友人達とジャムをしていた。その息子が、まだ中学生ぐらいのハンサムボーイだがしっかりしたフイドルを弾いていて、こいつは今後楽しみだなと思わせられる。

 そんな事とは関係なく車は進み、ゲートにさしかかる。帆布で出来た前掛けのポケットにチケット代わりの腕輪を何本も差し込んだじいさん達が寄ってくる。健ちゃんが払ったので、いくらかかったわからないまま車で会場に入っていく。大きなキャンピングカーが並んでいる。

 健ちゃんたちがいつもキャンプするという、会場の向こう側の小高い山にむかう。あちこちから「ハイ、ケン」の声がかかり始める。常連はキャンプする場所も決まっているらしい。しかしすでにいっぱいで、キャンプの場所がない。あきらめて、ゲートまで戻りゲートの外側にキャンプしているグループのそばに場所を決める。ここはカンカン照りの暑さで、日陰が少ない。千葉のフェスとおんなじ様な感じだ

「カニが頭に載ってるガソリンスタンドを曲がるんや」

 言ってる意味が分からない。
 52号線が広くなったところでガソリンスタンドに入る。よくみると帽子をかぶった人間の大きな看板が有り、帽子がカニのようにも見える。どうもこの事を言っていたらしい。健ちゃんが氷を買いに行っている間にWPAQラジオからフェスのコマーシャルが流れる。
 結構長いコマーシャルで、聞いている間中感激し、顔がひとりでに緩んでくる。「はいよ−、今すぐ行きますよ−。」という感じ。
 天気は快晴、というよりカンカン照り。しかしラジオでは「サンダー・ストームがどうのこうの」といっている。ABCで健ちゃんがいい酒を買う

 とにかく今、ラウンドピークの真っ只中、つまりハート・オブ・ラウンドピークに居るって事は確かなのだ。

 早速設営を始める。テントを張っている間も、すぐ隣からはすばらしいジャムの音が聞こえてきて、気もそぞろになってしまう。

 道を確認して、今度は52号線を探して、南に下ることにした。52号線は少し前の時代の幹線道路という感じで、道路端には人家も有り大型トラックが走っておらず、いい感じのドライブになった。BGMは、もちろんご当地のラジオ局WPAQ だ。ブルーグラスばかりかかっていたが、この環境でこれ以上の贅沢は言っていられない。だいたいWPAQのようなラジオ局が存在しているということ自体、この地域が俺の音楽の為に存在しているということなのだから。
最近の「ユニオングローブ・フェス」のことや、今度は家族を連れてくる、とかいろんな事を話しながらまたサリーカウンティにもどっていく。焼き物が有名なところでもあり、道端にはポッテリーと書いた店とがらくたアンティークの店が多い。道は登りから下りになりノースキャロライナ州にもどった。だんだん道が広くなってくる

'07-05-20 記

続く

 健ちゃんは俺に専用の小さいテントを貸してくれる。これは非常にありがたいことだったと後で気づく。  海太郎が近くにいた黒人の子と遊び始める。その子の母親は白人だ。健ちゃんが「ボブ・カーリンの嫁さんと彼らの養子だ」と紹介してくれる。子供の名前はベンジャミン。ボブは来られないとのことだった。

 カニのスタンドから入って裏通りにでる、右に曲がってすぐ、「ほら、ついたで−」「えっ」と思うまもなく「ヴェテランズ・パーク」の入り口を入っていく。右に、古い戦車が一台置いてある。退役軍人用の施設がフェスの会場だ。
 シアトルのポートタウンゼントといい、ここといい日本人が来ても良い場所なんだろうかと一瞬思う。