新潮文庫 Antony and Cleopatra 福田 恒存 訳
第一幕 五場
アレクサンドリアでは武将たちが、かっての勇将アントニーがすっかりクレオパトラに夢中になり、ふぬけになってしまったと嘆いている。宮廷ではアントニーが情事に夢中でローマからの火急の使いにも会おうとしない。クレオパトラの侍女たちは馬鹿話に浮き身をやつしている。
ローマ帝国は、ジュリアス・シーザー亡き後、ローマ帝国はアントニー、オクテイヴィアス、レピダスの3執政官が支配していた。しかしポンペイアスの反乱が起こるなど不安定だった。オクテイヴィアスはアントニーの不行跡を激しく非難するが、レピダスがなだめ、アントニーを呼び戻す。アントニーは再び戦場に出るが、クレオパトラの恋心はやまない。
第二幕 七場
アントニーがローマに戻り、オクテイヴィアス、レピダスと面談、アントニーがエジプト滞在中に弟と妻がオクテイヴィアスに反乱を起こすなど、二人の仲はわだかまりが一杯。そこでアントニーが夫に死なれたオクテイヴィアスの姉オクテイヴィアを妻に迎えることになった。エジプトでその話を使者から聞いたクレオパトラは気も狂わんばかり。
三者が共同でポンペイアスの反乱に立ち向かうことになり、三者とポンペイアスの間で会談が行われる。結局、ポンペイアスはシシリーとサルデイニアを取り、兵を引くことになる。和解の宴席がポンペイアスのガリー船で行われる。ポンペイアスの味方メーナスはこの機に三人を殺してしまえ、と忠告するがポンペイアスはしない。
第三幕 十三場
アントニー軍はシリアで勝利し、オクテイヴィアを妻に迎えるなど両者の関係は最初は旨く言っているように見えた。しかしオクテイヴィアスがポンペイアスに戦いを挑んだあたりから雲行きが怪しくなり、アントニーはとオクテイヴィアを捨てて再びエジプトに走る。オクテイヴィアスは更にレピダスまでも処断し、対立は抜き差しならぬ段階にいたった。
ローマ軍が迫り、ついに両者は戦うことになった。しかし恋におぼれ、盲目となったアントニーは得意の陸戦をさけ、不得意な海戦を選んだところ、クレオパトラ軍が簡単に崩れ、アントニー軍も後をおう始末で大敗してしまった。クレオパトラがアントニーを慰め、アントニーはローマの使者を鞭打ち、最期の力を振り絞って戦おう、と決心する。
第四幕 十五場
アントニーは激しい陸戦の末、勝利し、オクテイヴィアス軍を追い返す。しかし翌日、再び海戦に誘い込まれ、敗退する。アントニーの忠実な部下だったエノバーバスは裏切ってオクテイヴィアス側に走ったもののアントニーの寛大な措置に会い、良心に恥じて死んでしまう。最期のときを知ったアントニーはクレオパトラを逆恨みし、咆えまくる。クレオパトラはこもり、自殺したとの虚報を流す。
自殺したと聞かされ、アントニーは後悔し、みずからに刃を刺す。気付いたクレオパトラがあわてて介抱するがそのまま息絶える。
第五幕 二場
オクテイヴィアスは寛大な措置を取ろうとするが、アントニーを愛していたクレオパトラは、ローマに引き立てられて行く惨めさを部下たちと共に嘆く。ローマに引かれる直前、道化にナイルの毒蛇を持参させ、自分と侍女たちの肌をかませ、息絶える。
史実に忠実に書かれ、沢山の内容を五幕の劇に押し込めているため、時として登場人物や背景がわかりにくく疲れる。アントニーがクレオパトラの自殺を信じ、すぐ後追いするところは、やや不自然だ。オクテイビアスの人物像が今一つはっきりせず、そちらの側から書くと別の書き方が出来よう。
・中原に鹿を逐うものは必ず望みをかけられる。が、それも獲物を手にするまでが花なのだ。そのくせかっての人気者もひとたび落ち目になると、誰一人見向きもせず、事実見る影もなくなるまでほっておいてやがてそいつが世間から姿を消してしまうと、初めて惜しい人物だったということになる。この大衆という奴、流れに逆らう葦さながら、あてどなく行きつ戻りつ、さし引く潮の変化に身を任せ、流転のうちにみずから腐って行くのだ。(32p)
・あの男は運命の女神ではなくて、その僕にすぎぬ。何でもその意に従う手先でしかないのだ。(165p)
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