B29の行方    花木 新

文芸春秋 ハードカバー

金英興産金森社長の孫が誘拐され、身代金要求の電話があった。
金の受け渡し場所をいろいろ変更した後、犯人は自転車に乗って金を運んできた社長を襲い、金を奪って逃走する。子供は無事に帰ってきた。
遊軍記者の橋本は、この事件が後10日近くで時効が成立する15年前の秩父の誘拐事件のコピーであることに気がつき、朴訥な宮脇刑事と捜査を開始する。
秩父の事件は、橋本家の長男正次郎の美貌の新妻妙子が滝沢を浮気をしている内に、愛児が拐されたもので、たまたま来合わせていた親戚の鈴木英次郎が自転車で同じように金を運び、奪い取られたものだった。
しかし愛児は殺されて埋められていた。
そして今関係者が次々に殺される。滝沢が、妙子が・・・・。
昔、三人の少年(橋本の妾腹の子、鈴木英二郎、宮脇、そしてサルこと猿渡光男)は、墜落したB29を追って山の中に分け入り、脱走兵と妙子の母親の情事を見た。その後鈴木英二郎は、橋本家の財産をねらって猿渡光男と共に第一の誘拐劇を起こした。
猿渡光男は身代金を独り占めされるなど英二郎から、手ひどい仕打ちを受けるが、浮浪者を殺し、彼になりすますことによって生きてきた。
また英二郎は、名前を金森秀夫と変え、大成功、金森興産会長に納まっていた。
今回の事件は猿渡が、金森に復讐し、あわせて金を盗ろうとして起こした事件だった。
金森としては15年前の事件の真相をばらされては元も子もなく芝居を打った。
最後に宮脇、橋本、猿渡と金森が洞窟内で対決するが、猿渡と金森が相打ちとなる。

うまい書き方とは思わないが、人間味のあふれる小説に思えた。最後に落ちこぼれ刑事の宮脇が事件関係者で子持ちの文子に結婚を申し込むところなどほほえましい。

・ファクシミリに通信が入るときには、発信者のファックス番号が最初に現れる。通報を受けた警察は・・・・・これから発信者の割り出しに当たった。(116p)
・婿さんは外から体当たりで戸を破ったが、もちろん閂の棒は折れて飛んでいた。・・・・殺した後、棒を折って戸のそばに捨て、代わりに麻紐を金具に通して外から出て引っ張れば固く閉まるように結び目を作り、紐の先は戸の隙間に押し込んでおいた・・・・(182p)
この作品ではこれと同じトリックをチェーンに応用し、あらかじめ引きちぎったチェーンを中においておくことによって密室を完成させている。