ぼくと、ぼくらの夏 樋口 有介
文春文庫
おふくろが出ていって、ぼくは、万年平刑事の親父と二人暮らし。深大寺高校の2年生。
そんなおり、同級生の岩沢訓子が、簡単すぎる遺書を残して川に飛び込んで自殺をした。
本当に自殺かな、と思った僕は、やくざの親分の娘・酒井麻子と調査を始める。
担任で美人の村岡先生は、クラスの子のことが分からないとぼくに嘆く。
そんなおり重要な鍵を握っていると思われる新井恵子が、自動車にひき逃げされた。
ぼくは麻子とだんだんいい関係になり、村岡先生は親父といい雰囲気になってきた。
そしてぼくらは、建設会社社長の三枝理事長を中心とする女子高校生売春、風見先生が訓子と関係があったらしい事をつかむ。
最後は罠をはり、真相が明るみに。
万引きの現場を押さえられた女子高校生を使って売春をさせていた三枝、次々と彼女たちと関係した風見、手引きをした村岡先生グループの実態が明らかになる。
話しは通俗的な感じがする。
トリックも大した話はない。
しかし軽快な会話と読んだ後の爽快感、ぼくを中心とした登場人物の考え方等に非常に魅力がある。
・女の子の電話って言うのはたいていそうらしいが、麻子さん達もまず近況報告をやり合い、次に天気だとか体調だとかの話しをして、それからやっと本題に入り、ウソーッだとかエーッだとかの合いの手を頻繁にまぜながら、長々と5分ばかりしゃべりあっていた。(66p)
・犯人を探しているうちには、どうしたって殺された人間が隠そうとしていたことも分かって来ちゃう。家族の人は、たとえばさ、その殺されたのが自分の子供で、殺されたんじゃなくて自殺か何かだと信じていたとして、それが殺されたんだと分かって、殺される理由が自分の子供の方にもあったなんていうことになったら、親として大変じゃないかな。犯人なんか分からなくてもよかったと思うかも知れないだろう?(134p)
・村岡先生の方は、たとえば僕や麻子さんの家族構成や、生年月日から小学校の成績まで、およそ必要と思われないことのほとんどを知っている。
逆に僕は村岡先生がどこの出身で、どこの学校を出て、兄弟が何人いるのかも知ってはいない。(195p)