集英社文庫
大生部(おおうべ)は、アフリカにおける呪術医の研究で見事な業績を残し、テレビで人気のタレント教授だ。しかし本当は、8年前長女の志織がアフリカ調査中に気球から落ちて死んで以来、落ち込んでおり、アル中になっていた。その上、妻の逸美は、寂しさのうちに奇跡が売り物の新興宗教にのめっていた。
しかし彼の著書「呪術パワー・念で殺す」がベストセラーになり、テレビ局では特番を企画する。大生部夫妻、長男納、スプーン曲げの青年清川、研究助手の道満、テレビスタッフ6名が、特番取材でアフリカに向かう。一行はケニアとウガンダの国境近くのスワヒリ語で「13」の意味を持つ、不吉な村クミナタウに向かう。そして村人から恐れられている大呪術師パキリとの面会に成功する。
ところがパキリの呼びかけで現れた霊媒の少女(キジーツ)は、なんと死んだはずの娘の志織だった。そこで大生部グループは、協力して志織を奪還、パキリの執拗な追跡に、通訳のムアンギと5人のテレビスタッフを失いながら、ようようにしてクミナタウ脱出に成功し帰国する。
しかし呪術師パキリは、象牙と犀の牙を売った金で、弟子のキロンゾと共に志織を追って日本にやってくる。番関係者のまわりでは、次々に奇怪な怪死事件が起きる。司会者嬢、清川、ミラクル・・・・・。
ころんでもただでは起きないテレビ局。元・プロデユーサーの馬飼は、大生部一家と呪術師パキリが対決する生番組を企画する。しかし録画に巧妙にしくまれた画像のサブリミナル効果により、テレビ局のすスタッフの一部が、大生部一家を殺そうとする暴徒に変わってしまった。テレビ局の迷路から必死に脱出しようとする一家。志織を奪い返そうとするパキリ。しかし最後に大生部の呪術がパキリを圧倒する・・・・。
推理小説と言うよりも、オカルトものに近い娯楽巨編。読者はアフリカの楽しさと恐ろしさを存分に楽しめる仕掛けになっている。
・封筒はA・B・C・D・Eの順に集められます。・・・一番上はサクラであるEの封筒になっている。この一番上のEの封筒を、全員の注意がどこかへ向いている間に、一番下へ移し替えます。・・・・術者はまず「Eさんの封筒をあててみます。」と言って、実は一番上のDの封をとる。Eの書いた内容は事前に分かっていますから・・・・これを当てます。当たったのを確認するふりをして封を破り、次に来るDの内容を読みます。(I・・74P)
・「男らしい」という言葉が「馬鹿」の同義語であることに気づいたのは、ずっと後のことである(I・・90P)
・何日も寝不足の状態で容疑者を延々と同じ部屋で誘導尋問する。あれが洗脳の基本パターンです.(I・・206P)
・村の呪術の欠点は無知にあります。そしてあなた方の医学の欠点は不信にある。・・・・・・・なら、なぜ誰も病人を治さないのです、キリスト教会は。薬の力でなく神の力で・・(II・・214P)
・格子戸の中にシマウマを一頭入れる・・・・座った角度によって白馬だ黒馬だと騒ぐ。そこに真実があるかね。(II・・259P)
・歴史は武力と同様、奇跡、パフォーマンスによっても動かされてきているんですよ。・・・キリストのおこした奇跡をトリックだなんて恐れ多いことはいいません。ただ、トリックや催眠暗示でも同じ事が出来ますよ、というだけです。(III・・21P)
・アミタール・・・・・記憶喪失の症例には、劇的にきくのよ。(III・・・38P)
・脳の襞に封印されていた記憶、感情的負荷を帯びた記憶を思い出させることは心理学の基本だ。
フロイトはこれを「煙突掃除」と呼んだ。(III・・・40P)
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