朝、ラジオ体操のとき、ふと見上げると、この前まで枯れ木だったイチョウに新芽が出ている。元になる幹に1センチくらいの短い枝がつき、その先から4,5枚の小さいが立派なイチョウの形をした葉がでている。いつ花が咲いたのだろう、と疑問がわいた。私は、毎朝この公園に来ているのに気がつかなかった。
体操が終わるとHさんと公園の周りを、2,3回ジョギングして周り、そのあと、おしゃべりをしながら1周する。この話をすると
「イチョウは雄と雌があるのをしっているでしょう。この前までイチョウの木の下が黄色くなっていたものがあったわ。あれがおしべよ。うまく飛んで行って雌の木にくらいつき、雌花に食いついたものだけが生き残るのよ。」
「そういえばそんなことを昔習った。」「イチョウは銀杏がくさいでしょう。それで最近敬遠されるのよ。雄と雌を区別する方法をご存知?」
「いや、全然!」・・・・高等学校のときの生物の成績は悪かった。
「葉っぱがスカートのようになって割れていないのが雌、キュロットみたいに二つに割れているのが雄なの。銀杏にも差があって、三角の形をしているのが雌、だから街路樹を作るときは、こういう種を避けて作るんですって。」
なるほど。
インターネットで調べるが、たいしたことは書いてなかった。そこで、伝家の宝刀、杉並中央図書館に行く。パソコン画面で調べたいテーマのところにイチョウと入れてみた。すると胃腸、銀杏、一葉がでてきた。銀杏を選んでクリックすると植物学的に書いた本が一冊だけみつかった。ただし子供むけで、写真が半分以上の見やすい本である。
「イチョウは春,芽が開くと同時に花が咲きます。雄花はオシベだけで、花びらはありません。たくさんの雄花があつまって、たわらのような形の穂になっています。オシベが成熟すると、たてにさけて、なかから沢山の花粉が出ます。花粉は春風にのって、雌花のところまではこばれていきます。めしべの先には小さな穴があって花粉をうけいれるようになっています。」(イチョウの木=カラー版自然と科学55、宗方俊ゆき)
空中を旅した精子が、雌花の穴に入り込む・・・・なかなかエロチック!
「普通の植物は、花が咲いて花粉がめしべにつくとすぐに受精が起こって種子ができます。ところがイチョウのめしべでは、すぐに受精がおこりません。花粉はめしべの先にあいた穴のおくにある、花粉室にくっついて、めしべから養分をもらって約150日のあいだ生長するのです。精子が成熟すると、花粉管に穴があいて、中から精子が泳ぎだし、卵細胞と結合して受精がおこります。受精した卵細胞は、おさない植物体・胚になり、胚乳は胚が発芽するときの養分となります。」(同上)
大分お母さんに世話になって、一人前の雄になるらしい。
イチョウは種子植物の祖先に近い、古い植物で生きている化石とも呼ばれている。2億5000年くらい前、地球上に現れ、現在中国大陸から朝鮮半島、日本にかけての地域だけ分布しており、世界的には珍しい木だという。このイチョウの精子を発見したのは、平瀬作五郎という人で明治29年のことだったそうだ。
イチョウの実、つまり銀杏はせきや痰を切る薬とし利用されてきた。最近では葉に中にも血管を丈夫にしたり、コレステロールを減らす成分が含まれていることが発見され、年間1000トンにも近い乾燥イチョウ葉が輸出されているという。
公園のイチョウをもう一度ながめる。木の下の方の若葉は変わったこともないが、上のほうのものはたわら型の穂が、勃起したオチンチンのようにあそこにもここにも若葉に囲まれてそそりたっている。風が吹くと、花粉、つまりイチョウの精子がキラキラ光って墜ちてくる。そういえばこの公園で銀杏が取れるという話を聞かない。どうやらみんな雄らしい。
我が家にもどると、つつじ、赤いミズキ、花蘇芳、その上庭にはタンポポが精一杯に咲きだしている。今が一番きれいなときかもしれない。これに比べると、イチョウの性行為?は少し地味に見えるけれど、青春を謳歌していることに違いはない。
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