1008「「オイラーの贈り物」を読む」(10月19日(水)晴れ)

久しぶりに学生時代に帰った気持ちでこの本を読んだ。
書店でこの本を見つけたとき私は「三途の川も近い私が、こんな厚いややこしいものを読めるだろうか。」と不安であった。無駄な投資になるかも知れぬが、挑戦だけはしてみよう。著者は吉田武、京都大学教授、復刻版のようだ。
副題に、人類の至宝e**(i*π)=-1を学ぶ、とある。18世紀の数学者レオンハルト・オイラーが見つけた式。有名な物理学者が「我々の至宝」かつ「すべての数学の中で最も素晴らしい公式と述べている。わくわくする。

結論から言うと、e**(i*θ)=cosθ+isinθである。このθにπを入れればこのようになる。
ではこの式がどのように導かれるか。
「その導関数が元の指数と同じになるような指数の底を択びそれをeと書く。」これが世に言う自然対数の底である。
この定義から(d/dx)(e**x)= (e**x)と成るわけだが、このe**xをテーラー展開すると
1+x+(1/2!)*x**2+(1/3!)*x**3+(1/4!)*x**4・・・・となる。
またcosθ、sinθを展開すれば
cosθ=1-(1/2!)* θ**2+(1/4!)* θ**4・・・・
sinθ=θ-(1/3!)* θ**3+(1/5!)* θ**5・・・・
となり、これからcosθ+isinθを計算すれば
1+(i*θ)+(1/2!)* (i*θ) **2+(1/3!)* (i*θ) **3+(1/4!)* (i*θ) **4・・・・
となる。これはe**xのテーラー展開においてxを(i*θ)に置き換えたものに他ならない。それゆえe**(i*θ)=cosθ+isinθが成り立つ、という。
ややこしいが、級数展開というのは、預金の利息計算で
1+x+x**2+x**3・・・・=(1-x**n)/(1-x)に成ることを思い出し、その逆を行なうことである。テーラー展開はその一種で微分係数を使う。
基本的にはこのような話なのだが、これをいきなり、e**(i*π)=-1を出しては難しいから、微分、積分、テイラー展開、指数関数、対数関数を一通り学んだ上で、この式を解説するというのがこの本のスタイルである。本文はさらにこの式の応用、さらに数学上興味の有るいくつかのテーマも取り上げられている。

前書きになるほどと思った。引用すると
「わが国の高等教育システムの最大の問題点は、分野全体を見渡す「分の厚い総合的著作」が極めて少なく、それを活用した「概論講義」も準備されていないために、学習者が自分の置かれている位置や、学問全体の目的を容易に見出せない点にある。・・・・・「次の深いレベルでも応用可能な、一般的な手法に配慮したものでなければならない。従って図版に頼って数式を減らしたり、揮毫の操作に重点を置く余り具体的な数値計算をおろそかにした著作は「数学の概論所としては適切ではない。」
そしてこの書はオイラーの公式を理解することを目標に基礎的な数学全般の学習が一人で出来るように工夫した、まったく新しい入門書である。」
具体的には@自己完結している。 他の書を参照する必要がないようにした。その数が無理数であることの証明、具体的な大きさなど、初頭の範囲で記述できるものはすべて与えた。
A代数、解析などの「分類」にこだわらない。
B定義を重視する。  用いる用語の一つ一つの意味が、確実にしかも唯一に定義されないと、他者との「会話」は成り立たない。
C数値による計算を積極的に取り入れた
D式番号を省略した。上から下に一気に読め、上下に読み直したり後戻りが必要ないよう、式の重複等をいとわなかった。
実を言うと私もこれを感じ、数学は比較的得意分野であったが、大学に入り編微分あたりで挫折した組。そのときに感じ、苦労したのはまさにこの辺だったように記憶する。

帯には「記述は極めて丁寧かつ平明であるため、意欲あふれる中高生の副読本としても好適である。」としている。また携帯性を重視して文庫化も試みた、としている。
なかなかこのレベルの本を文庫を読むように気軽に読めるとも思わないし、相当意欲があふれていても中高生の副読本としても好適かどうかは判断つきかねる。しかしその努力は感じられ、私も何とか考え方程度は理解できて非常にうれしかった。
再び書店に行くと、最近は外に高等数学を語りながら、易しい語り口のものがいくつか出ているようだ。皆さんもボケ防止に挑戦してみてはいかがですか。

註 ご意見をお待ちしています。
e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/