1020NHK大河ドラマ「江」」(123日(土)雲り)

 

先日NHK大河ドラマ「江」がようやく終わった。実際の歴史とは違う、家庭ドラマなどささやかれる中、私はそれなりに楽しんで見続けた。

しかし実際には江の人生は、不幸であったのか、家康をはじめ諸将を動かし程の力がったのか、政権発足時の女性としては春日局が目立つが江はどうであったのか、豊臣政権との関係はどうであったか、江の二人の子竹千代と国松の行く末はどうであったか、等疑問に思った。古書店で「お江」(平凡社新書 武光誠)を見つけた。そのあたりを知る格好の入門書であり、面白く読んだ。

この書で最初に驚いたのは23-24pの記述「家長である夫が威張り始めたのは、明治維新以降のことである。江戸時代までの日本では、男性と女性の間に「優劣」、「上下」をつける思想はない。」・・・・・「当時の武家の家庭で、妻が大きな力を持っていたからである。戦国大名の妻の大部分は自家の戦略、政略、政治の在り方に堂々と口出しした。一つの大名家の方針は、その家の当主としての夫とその妻によって決められたのだ。」

お江は1573年浅井長政の三女として生まれた。佐治一成、豊臣秀勝との結婚生活ののち、1595年に徳川秀忠と再再婚。二男五女をもうける。

ここで、家康は言うに及ばず、信長も秀吉も女性には案外優しかったという点は重要である。彼らは女性に政略結婚的なものを強いるところもあるが、逆に言えばその女性に使える能力があると判断したからだ、使えないと見た場合は、女性の幸福を考えてよい家に嫁がせるという当たり前の考え方をとっているとする。

前者で信長の妹とされるお市が典型的であった。その三人娘のうち、秀吉は長女の淀の方を愛して側室とし、次女はそれほどでないとし将来を考え京極家に嫁入りさせた。闊達な三女江は使えると判断し結局は秀忠に嫁がせたのだ。

秀吉が他界し、姉と妹はそれぞれ徳川家,豊臣家に分かれて対峙、彼らが力を合わせれば「徳川家と豊臣秀頼との間の最悪の事態は避けられたはずである。しかし二人はともに、最悪の事態である戦争が起こってもかまわないとする考えに至った。」とする。

時代の流れに対し徳川軍と豊臣軍に大きな差があった。前者は有能な臣下、全国に張り巡らされたスパイ網を通じて適格に情報を得ていた。後者は追従のうまい大野晴長等の佞臣に囲まれていた。彼らや呼び入れた浪人衆の中で淀君は引き返しのできぬ事態に追い込まれた。徳川政権との和解に動いた片桐旦元は排斥された。

また冬の陣、夏の陣については、背景にキリスト教徒の扱いの問題があった。彼らは豊臣時代に禁止令を受けたが、徹底したものではなく復活の機会を狙っていた。一方徳川秀忠は、異母弟の忠輝と二代将軍を争う立場にあった。忠輝は闊達でキリスト教徒たちからもある程度の信頼を得ていた。その反動で秀忠はキリスト教徒嫌いになった。一方冬の陣、夏の陣では、大阪方に関ヶ原で徳川軍に痛めつけられた浪人衆のほか宇喜多秀家の旧臣であったキリスト教徒の明石全登が大軍を率いて加わっている。

歴史上、大阪城落城とともに、淀殿、豊臣秀頼は亡くなったことになっている。しかし死体は見つかっていない。また女や浪人たちに紛れて二人が逃げ出すチャンスも十分にあった。著者は、彼らが薩摩に逃れ島津家の庇護のもとで過ごした可能性を指摘している。

江の立場について。五女、和子は女御として後水尾天皇のもとに入内(天皇に嫁入りすること)する。また先夫秀勝との子完子は関白九条忠栄に嫁いでいる。江は大御所の正妻で、かつ彼らの母として当時の女性としては最高の地位にまで上り詰めた。

徳川秀忠は、政治的には有能であり、江との夫婦中も良かった。江は姉様女房としてうまく秀忠を支えたのであろう。この二人によって家康・秀忠父子の望んでいた戦乱の世を終わらせるとともに、安定した政権を築くことができた。一方でキリシタンは排除・弾圧され、徳川家光の時代の鎖国(1639)に道筋をつけることとなった。

最後に竹千代と国松の行く末については年表を追ってみた。

1616年、徳川家康死去、秀忠の時代となる。1620年、元服し、名を竹千代は家光、国松は忠長と改める。1623年、秀忠隠居、将軍職を嫡男家光に譲る。家光の将軍宣下に際し、忠長中納言に任官。1626年、お江、江戸城西の丸で死去。法名崇源院。1631年、忠長、不行跡(家臣1名または数人を手討ちにしたとされる)を理由に甲府蟄居を命ぜられる。1632年、徳川秀忠死去。1634年、忠長、命により自害。享年28歳。

要するに兄弟は反目しあって成長し、父母がなくなればさらに先鋭化したということか。人の作り出す世の中、なかなか難しいと感じさせる。

 

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