1042「「略奪国家」を読む」(215日(水)曇り)

 

著者は1964年アメリカ生まれだが、現在はシンガポールに住んでいる。

アメリカ国務省世界最大級コンサルテイング会社の日本社長、2000億円を運用するヘッジファンド会社の社長を務め、日本の多くのTV番組に出演、著書も多い。

内容は必ずしもすべて妥当とは思わぬが、問題を単純化して見せ、問題の本質を言い当てているようなところが多いと感じた。

著者の真意をエッセンスにしたようなCDがついている。それに言うようにまず「金持ちは悪者と言う教育がされるが、社会を変えようとしてきた人々だ。彼がいなければ自動車もコンピュータもできなかった。尊敬されるべきだ。それを悪者にして彼からむしりとる事ばかり考えるのは泥棒と同じだ。そのような社会は発展しない。」と断じる。

生活の必要なものはすべて企業が作った。GDP1年間に創造される物質やサービスを集計したもの。このGDPが成長すれば国民の生活が豊かになる。それをするには元手となる資本金が必要だ。資本金が経済に大きなテコ効果を発揮する。

資本主義と言うのは、社会に余剰金が出たとき、その余剰金を会社の資本に投入し、さらに経済を豊かにしてゆく主義である。これに対して社会主義と言うのは社会に余剰金がでたとき、それを社会保障に回す思想である。日本は後者である。

前者では資本・・・・企業活動・・・・物質やサービスの生産・・・・豊かな国民生活のサイクルを繰り返す。

企業が創意工夫や研究開発により生産性を高め、高性能のものを作るようになればデフレ(価格水準の下落)が起こる。そこで中央銀行(日本の場合は日銀)が」公定歩合を引き下げ、マネーサプライを増やせば経済が加速する。ここで問題はこれがインフレ(価格水準の上昇)をもたらす。

お金とは「あなたが今提供している価値と同等のものをあなたにしてあげる」と言う約束である。利息は資金運用益の分配金である。それ故金利とマネーサプライの管理でインフレ率を0%に維持することは、経済における最も基本的な約束事だ。

是が一番うまくいった例は19世紀のアメリカで自由資本主義が成功した。

ここで注目すべきは、政府は金を持っていないということである。政府の基本機能は人を暴力と詐欺から守ることに或る。それ以外のことをやると必ず略奪が起こる。

政府は片手で国民の財産を奪い、もう片手で国民に与えている。政府の支出は、国民の消費できる国内総生産を減額させるものである。政府からお金をもらう行為は、隣の人からお金を奪う行為だ。このような考え方に立って著者は経済を分析、解説して見せる。

まず国を無借金にせよ、国債は最初の一歩からおかしいという視点である。

アメリカのニューデイール政策は緊縮財政を改め、マネーサプライを増やすことで結果的には成功した。しかし代わりに大きな政府を作り上げることになった。そして政府の活動による景気浮揚策は長く続くわけではない!

国債はヘロイン中毒のようなものだ。日本は世界一のヘロイン中毒国家である。ギリシャの倍近く深刻な状態である。必ずデフォルト(国債の支払い停止)への道を歩んでいる。国債は日本の銀行が引き受けているから問題ない、と言う人がいるが、逆に言えばその様な状態になった時に逃げ場がない。日本の銀行はみなつぶれてしまう。

政府が金を手に入れる方法は三つ、一つは税金、二つ目は国債の様な借入、三つ目はインフレを起こすこと。現在の日本は、国債の償還は税金では一切行われず、新しい国債の発行で行われており、自転車操業、しかもその規模は拡大を続けている。

一方銀行は何をしているか。生産に回すのではなくみんなの貯金で国債を買っているのである。後数年で回すべき貯金がなくなってしまう!!

経済はいじればいじるほどおかしくなってしまう。たとえば最低賃金保障。これは実は弱者をいじめる法律である。最低賃金を保障すればそれ以下しか生み出せない若者は職を失ってしまう。

さらに補助金漬けの農業もおかしい。累進課税は不公平、消費税でとる方が公平だ、等とも説く。この辺、詳細は本文に譲る。

さらに銀行は国債を買うことをやめよ、生産活動を助ける本業に徹せよ、日本の赤字1000兆円は本来企業の活動に向かうべき金を政府が社会保障などで無駄使いしているからだ、日本が資本主義に徹していれば世界の企業は日本企業の傘下に入っていたはずだ、と著者は説く。

・・・・・過激な言い方である。著者のいう日本がアメリカの51番目の州になる日は来ない、と信じたいが、そうならぬためにもいろいろ考えさせる書である。一読を勧める。

 

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