1058「大家もこれで大変!」(4月11日(水)晴れ)
ガス会社の男の話である。
「オウヤさん、ご相談なんですがね。新しい風呂釜を入れて、浴槽に水を貼って試運転しようとしたのですが、浴槽が傾いているのです。調べるとユニットバスの底が抜けかかっているのです。危険だから当面使わないようにお願いしておきました。」
最初は客からの「お風呂を燃やすと大きな音がする。怖い。」との苦情でガス会社に見させた。しかし分解してみると「すでにバーナーを覆っているケースに穴が開き、時々小爆発を起こす、危険だ。」という。やむなく新しいものを入れさせたところ、今度はこういうことを言いだす。ユニットバスを壁から変えれば、相当の費用が掛かる。どうしたものかと、目下思案中。
別の話。夕方不動産会社から電話。
「先日のお話ですが、今まで家賃保証会社に4件申し込み、みな断られました。本人に「家賃滞納などの話はないのか。」と尋ねると「そういうことはない。」というのですがどうしましょう。」57歳、独身の男と言っていた。
「どうしましょうと、と言われたって、家賃滞納でトラブルを起こす客はごめんだ。」
保証会社というのは家賃が払えなくなったときに、保証人の代わりに払ってくれる。昔は親だの親戚だの、ひどい例では会社の上司だのが保証人になった。しかし最近はこちらが主流になっている。オウヤもトラブルになっても保証会社が保証してくれるから安心して貸せる。実を言うと今回風呂を変えた家も、家賃滞納で出て行ってもらったが、不足分は保証会社が払ってくれた。しかし保証会社だって、そんな客ばかりではたまらぬ。たぶん互いにブラックリストの様なものを交換し合っているのであろう。
私のアパートは築・・・・40年近くになるのだと思う。
父が定年になった時に「これからのオレの生活を安定させるためにアパートを建てたい。ただし客が来るだろうか。」と言い出した。そこで私が歩き回った結果、S社が「私たちに建設させてください。建設資金はお貸しします。十年間は銀行の女子寮として使いたい。間取りには私たちの意見を入れてください。家賃はもちろん保証します。」
是だけ条件がそろっていれば、ということで始めた。キッチンと6畳押入れ付二間のユニット、そこに4人の女子行員がすんだ。8ユニット。しかしやがて10年が過ぎ去り、私たちで経営をしなければならなくなった。父は年齢とともに弱くなり、実質的経営を私に任せるようになった。やがて他界、弟と話し合って「お互いサラリーマン、少しは楽をしよう。」と有限会社にし、二人で経営することにした。と言っても弟は遠方に住んでいるから、実質的にはやはり私の経営。
40年近く前のアパート。今になると随分時代遅れのところが多い。
風呂はバランス釜である。あの排気塔が外に出た風呂は一世を風靡したが今でははやらなくなった。
洗濯機は外置きである。やはり冬など寒いのであろうか、今では人気がない。キッチンにお湯がないと困ると小型湯沸かし器が取り付けられた。
エアコンはつけていなかった。そのころはそんなものを考えなかった。しかし客の要望等に対応しているうちに今では6畳二室のうち一つはエアコン付になった。両方ともつけたい,というものがいて電気屋に相談したところ、容量が足りぬ、と引込線を変えたこともあった。
部屋は二つとも畳であったが、生活様式が変わってしまったのか、一間は洋間にしてしまった。この次は押入れも、中段を取り払ってクローゼットのようにしなければならぬかもしれぬ。
弟とは我々の世代で建て替えるべきかどうか考えている。しかしアパートを建て替えれば多額の建設資金がいるし、建設期間中は収入を得られぬ。また私に3人、彼に二人の子がいる。ほとんどそれぞれ独立し家を持っている。「我我が亡くなると、彼らの意見がまとまるとは限るまい。すると結局ここは売ってしまうことになるのか。」
私たちの父親が終戦直後に、必死の努力で手に入れた土地。それが結局息子の私や弟にも大きな恩恵を施したが、3代目ともなれば何が起こっても不思議ではない。それが建て替えを迷わせているのである。
私は40年間近くこのアパートと付き合っている。それを通じて随分と世間のことを学んだ。家の中をゴミの山にして出て行った男、二階の音がうるさい、俺は関西系だから人殺しくらい簡単だ、とすごんだ男、俳優座に勤めていて亡くなった独身男の場合は、「妻ですが。」という女性が訪ねてきてびっくりした、世の中はいろいろである。私たちが他界するまでたぶん後20年くらい、どんなことが起こるやら?ユニットバスの床、どうやって直したらいい?
後記 ユニットバスの床は、大工が床下にもぐって点検、敷石を敷いた上に金属性のつっかえ棒を立て、床を下から支えて対応した。やはりプロはすごい、と感心。
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