マーケットの魚屋「魚耕」の前に行って、私はじっと皿にのっている三杯のイカを眺める。いつものイカに比べて肉が厚くて硬そうに見える。
ガールフレンドのAさんの要望で今日は烏賊のスペイン風を作る予定。塩コショウに赤唐辛子などいれ、塩から風に混ぜ合わせてしばらくおく。それを、オリーブ油を思い切り熱したフライパンにぶちこみ、いためるだけである。
しかし普通、私が使ういかはヤリイカとかスルメイカとか書いてあって、スマートな形をしている。こいつはアオリイカとあり、やけにずんぐりむっくりしている。
隣の「東信」にゆくと、ヤリイカのようなものがあったが、やけに小さい。
しかたなくまた魚耕に戻って買い求めたが、我が家でさばこうと思って取り出してみると十本の足のうち二本だけがベローンと伸びている。エンペラはヤリイカのように三角で頭部についているわけではなく、体全体に張り付いている感じ。しかしこのエンペラをひらひら動かせて泳ぐからアオリイカというのだろう、と得心。
軟骨はヤリイカに比べて大きく、プラスチックのものさしみたいな感じだ。足をはずす。皮は割りにむきやすい。ぶつぎりにしているうちに墨袋を壊してしまったらしい。この墨の量がやけに多い。まな板からシャツの袖口から黒くなってしまう。全体をボールに入れ混ぜるのだがもう真っ黒、何だか泥んこ遊びをしているみたいだ。
それでも大目のオリーブオイルであげると、なかなか美味になった。肉が厚く、硬さはそれほどでもなく、何より墨のにおいが食欲をそそる。Aさんにも好評であった。
イカについてインターネットで調べるとまたあるわ、あるわ・・・・。
イカ墨をスズメダイの群れに放つと、最初は驚いて逃げていた魚たちが、しばらくすると近づいて墨をたべはじめる。実はイカ墨には黒色のもとであるメラニン色素とうまみ成分のもとになるアミノ酸がふくまれているのだそうだ。外敵から襲われたとき、むこうが墨を食べているうちに逃げ失せるため、とか。
あの長い足は蝕腕といい、えさをとる時に伸ばして使う。
寿命は80cmくらいになるソデイカまで含めて、大体1年らしい。だからその間にものすごく食う。蝕腕の中心にあるカラストンビで噛み砕いてなんでも食ってしまう。
日本人はイカが大好き。魚介類の消費量はエビやマグロを抑えて堂々の一位。
世界の海にはおよそ32科440種のイカがいるが、日本近海には80種が生息している。食卓をにぎわすのはスルメイカ、ケンサキイカ、アオリイカ、コウイカなど十数種。
アオリイカというのは4-6月ころに産卵し、7月頃から漁港などの表層に小さな姿を見せ始める。8月の終わり頃には100-300gくらいのコロッケサイズになる。9-10月には300-500gサイズが群れを成して行動する。3月頃に1kg以上に育った大型が再び浅場に戻ってきてつれ始める。今日食ったのはそんなものだったかなあ。
ほかにヤリイカの薀蓄もホタルイカの薀蓄もいろいろ載っているが省略。
ただ翌日改めて魚屋で表示してある名前を見ると、「スルメイカ」「ムラサキイカ」「シロイカ」「ヤリイカ」「生イカ」「干しイカ」・・・・これ、みんな同列?
最後にイカは漢字で「烏賊」と書くがその由来が載っていた。中国の「南越志」に「イカが水面に浮いていると、飛んでいるカラスが、イカが死んでいると思いついばみにくる。その瞬間イカはカラスを足でからめとり、水中に引きづりこんで食べた。」と記されているのだそうだ。本当かしら?
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