1060「「浄土真宗はなぜ日本で一番多いのか。」を読む」(4月18日(水)曇り)
今年の夏に、父の13回忌と亡妻の17回忌をいっしょにやろうと思っている。
こういうものが親類一同が集まる一つの機会と考えるからである。しかしそれで長男であった私の役目が終わる、とも感じる。
考えてみれば私は罰当たりな人間だ。仏教などというものに縁がなかった。戦後に育ったから、もう檀家制度などなく、寺には縁がなかった。修学旅行で金閣寺など行ったが、あれは信仰などではない。水族館と同じというと顰蹙を買いかもしれぬが、少なくともキリスト教の教会、イスラム教のモスクと大した変りのない気分で眺める。禅寺など見ると坊主は一日何をしているのだろうと邪推する。
母が亡くなった時「我が家の宗教はなんであったか。」皆よくわからず浄土宗の坊さんを呼んで供養してもらった。次にカミサンがなくなった時「浄土真宗ではなかったか。」というものがいて本願寺派のお寺に来てもらった。しかし父親が亡くなった時はその寺が希望日に取れなかったため、同じ浄土真宗ならいいだろうと大谷派の寺にした。
島田裕己の上述の著書を読んだ。通信の856で同じ著者の「葬式はいらない」を紹介した。そろそろ死後のことを考えねばならぬ年齢なのかもしれぬ。しかし自分自身「葬式はいらない」の影響もあって、罰当たりに「戒名はつけるな。」と遺書らしきものに書いた。
友人の話。「島田裕己は西高校の出身だよ。オウム真理教に対して終始好意的なことを言い、大顰蹙を買い、ずっと干されていた。」その裏付けはウイキペデイアによって容易に得られた。しかしその道のプロである。その最新作。日本仏教の歴史と現状を解説していてわかりやすい。
一章に基礎知識としてここを抑えておいてほしいとあるので、そこだけを中心にまとめてみる。自分の知識の復習にもなる。
6世紀の半ば中国から日本に仏教が伝わり、7世紀には飛鳥仏教が成立した。このころはまだ宗派はなかった。法相宗など南都六宗は「学派」に近かった。しかし8世紀になって、正式に僧侶となり国家許可の得られる年分度者制度が成立し、さらに天台宗と真言宗が独立を果たしたことによって、それぞれの宗派の基礎が形作られてゆく。また出家得度には貴族であることが条件とされたため、武家や下級貴族は栄西等の導入した禅宗にも関心を寄せるようになった。鎌倉時代に新仏教の先鞭をつけたのは法然。専修念仏を唱えた。この法然の教えに反発し、法華経以外の信仰を非難したのが日蓮で「念仏無間、真言亡国、禅天魔、律国賊」などと説いた。
しかし宗派が明確な形をとるのは江戸時代に入ってから。「寺院法度」を公布したり、寺社奉行を設けて、中世に大きな力を持った仏教寺院を支配下に置くようになってからだ。寺請制度では、それぞれの家は特定の菩提寺の檀家になることを強要され、寺院は檀家の結婚や死亡を管理する行政組織の末端として役割を果たし、さらに本末制度が導入されて教団組織が明確化された。昭和15年に宗教団体法が施行され28宗にまとめられた。戦後これが廃止され、宗教法人法が成立、届け出さえすれば宗教法人格が取得できる認証制となった。その結果、現在では多様な宗派が分立する状態にある。一方で傾向として個々の寺院で住職の職が事実上の世襲になっている。
日本の仏教は、中国仏教を導入しつつ形成されてゆき、現在では主要なものとして4つの流れがある。先ずは法華信仰。法華経を最高位に位置づけ、誰もが仏になれると説く。最澄の天台宗に始まり、日蓮がその流れを受け継いだ。次いで密教。インドにおける大乗仏教の発展の中で、土着のヒンズー教と集合したところに生まれた。空海と最澄が唐にわたってから広がり、日本の仏教界全体に影響を与える。三番目が浄土教信仰で、来世信仰、平安時代末期から流行し、死後に極楽浄土に生まれ変わることを願うものである。法然が浄土集を開き、親鸞が浄土真宗を開いた。最後に禅は限定的な形で受容された。多くの宗教に見られる瞑想の一種で、インドの僧達磨にさかのぼる。受容が限定的になったのは座禅と言う実践を必要とするからと思われる。精神的な安定や生活規範として機能するものである。この四つの流れの上に日本の仏教は発展してきたが、「神仏習合」の側面も忘れられぬ。ただしこれについては別書に譲っている。
最後に日本の仏教は、当初は葬儀とは全く関係をもたなかった。日本仏教が死の領域とかかわってゆくのは浄土教信仰が流行してからで、曹洞宗で編み出された葬儀の方法を通して個人の供養の領域に進出したことが大きい。また本題の浄土真宗が普及した理由を著者は@庶民の宗教であること。真宗地帯を中心に発展した。A「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽往生できるというシンプルさ。・・・・
そんなことが書いてあった。
しかしこれでは仏教は今後も続いてゆくのであろうか。高校同期の集まりで「アンケートでは56%の人が戒名はいらない、と言っているそうだ。」たぶんそういう家では仏壇も神棚もないような気がする。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail
address agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ http://www4.plala.or.jp/agatha/