1076「神の与え給うた三つの問題」(6月17日(日)晴れ)
父の日だそうである。子供の頃を思い出す。世の中の笑い話。
「母の日はあって、父の日はないの。」「動物愛護デーがあるでしょ。」
それはともかく、私も娘二人に焼酎や高級ワインを送られ、幸せと言うべきか。もっとも最近は酒の量が少なくなり、飲みきれるだろうか、と心配するのだが・・・・。
私の周囲はそれほど大きな変化はないが、世の中は大きく変わろうとしている。
一つは大飯原発の再開である。
3・11以降、国を二分した形になった原子力発電の可否、これで大きく原子力発電容認に傾き、福島、浜岡をのぞいて残りの原子力発電所は順次稼働されてゆくような気がする。
この問題は基本的には経済性と安全性のどちらを優先するべきか、という問題だ。絶対安全であるべきだ、という議論はまっとうに見えるが、人類はある程度そんなものに目をつぶって文明を発展させてきた。自動車、飛行機、衛星・・・・・。原子力も同様に考えるべきではないのか。
もっとも今回の決定は、とりあえず今年の夏だけとか、基本的には順次原子力はなくしてゆくという可能性を残す。現在政府はLNG発電など火力発電の推進、太陽光発電など環境にやさしい電力の普及を目指している。こちらが進めば、電力料金は2倍以上にしなければならないように見える。ここがまだ議論不十分だし、さらにこれが企業や家計にどの程度影響するのか、それに国民が耐えていけるのかも議論不足のように感じる。前者で言えば野菜や肉の値段、後者で言えば原材料費、そういったものが10%、20%上がったところでそれはニュースにならぬ。しかも電力だけは電力業界という3・11に負い目を追う者がいるがゆえに声高に論じられる。その辺が先ず整理したうえで議論されなければいけないと感じる。
第二は消費税増税のほぼ決定である。
三頭会談がようやくまとまり、2段階で8%から10%に上げるという。ただあげた消費税を何に使うのか。そこが一番重要な議論のような気がする。最初は、国債に頼る国家財政の解決への一歩のはずであったが、いつの間にか社会保障費の増大への対応に食われそうな勢いである。そして前の問題は先送りだから、いづれもっと消費税は上げなければならぬ、ということになりそうだ。税率は国家財政の回復まで念頭に入れれば20%を越えねばならぬかもしれぬ。さすがに産業界も我々の生活もたまったものではあるまい。日本が、成長が止まった以上、どこまで生活を切り下げていいのか、その議論がまだまだ真剣にされていないように思う。
なお、こんな不況期に税金を上げるなどとんでもない、という議論がある。過去の例をみれば借金を返さない、さらに借金を増やすなどの政策で景気を回復させ危機を乗り切った例がある。しかし首肯性はあるものの、一歩間違えば自殺になるわけで、為政者としてとても選択できる案ではないように思える。
第三は、今、TVから入ってきたばかりのニュース。ギリシャの総選挙で緊縮財政を堅持し、EUに残ることを考える中道右派がトップになりそうな勢いとか。もっとも支持は30%くらいでどこかと組まなければ政権を維持できぬ、どこまで安定させられるかがカギになるのであろう。
左派が勝利し、緊縮政策の放棄を決めれば、いくらEU離脱は好ましくない、と言っても避けられぬかもしれぬ。なぜなら金の貸し手たるドイツやフランスの国民が黙っているわけがない。「なぜあんな怠け者の国のために我々が苦労しなければならないのか。」するとギリシャは資金援助が得られず、デフォルトに向かういきおい、その結果は自分の国の中だけで経済を回すということになる。原始時代に戻ればいい、との議論もなくはないのだろうが、やはり文明と贅沢は素敵、アヘンのようなもので一度味わえばもとには戻らぬ、ということだ。
もっともギリシャに中道右派政権ができて、ひとまずユーロの危機が回避されたとしても解決には程遠い。あのバフェット氏が次のように言ったと聞く。「いつまでたっても問題なんか解決しない。EUはきれいさっぱり縁を切って再出発すべきだ。」どうなるか。
三つの問題に共通するところ:
第一は皆、心の底で認識しながらこれまで真剣には考えてこなかった問題であること。人々は追い詰められ、究極の選択を迫られ、重い腰を上げた。第二はしぶしぶ打ち出した対策ではあるけれども決して完全とは言えない解決策であり、いづれ又ぶり返すと予想されること。
文明の進歩した社会というものは我我に次々と難しい問題を投げつける。是ではストレスとやらがたまるのは当然ということかもしれぬ。我我老人は、大きな変化をじっと見つめ、己のことのみ考えるのに一杯?娘のくれたありがたい焼酎でも飲んで寝ましょうか。
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