1088「法事でいいたいこと・・・・みんな、なかよく」(7月22日(日)晴れ)
皆さん、今日は暑い中を私の父の13回忌、亡妻の17回忌ということで集まっていただき、ありがとう。さてこの13年、17年は、あっと言う間にすぎたように感じます。しかし私が主催するこのような会は多分これが最後になるような気がします。やるとすれば亡妻の30回忌だろうけれども、私は今71才、それをやるときには84才、もう自分のことで手いっぱいと思います。養老院かもしれぬし、君たちに迷惑をかける状態になっているかもしれない。
もちろん私はまだまだ元気です。1年一回人間ドックに入るなどは受けているが、大きな問題になるところは、指摘されていない。しかし「老い」は確実に近づいてくることを感じます。スポーツクラブに前は日参したが、最近は億劫に感じるなど、体力的衰えが大きい。記憶力が悪くなり、時にはぼけたのではないか、と思うようなことが起こります。これが進行し、衰えが激しくなると、人間は生が愛しくなり、決断力も鈍ってくるとか。それ故にまだ元気なうちに私の考えを皆に伝えておきたいと思います。
知人から聞いた話。ある財産持ちのおばあさんがなくなった。彼女は生前「私がなくなった後のことは、みな仏壇の下の桐箱のなかに書いてある。その通りにやってほしい。」と言っていた。亡くなると葬式もそこそこに、息子や娘は、桐箱を、それぞれ期待を持って開いた。中には半紙に一言「みんななかよく」と書いてあったという。
この気持ちは私も同じです。親兄弟、その中でも兄弟姉妹は他人ともいう。仲良くは建前で、小さいころから親の愛情を争い、あるいは他より自分が勝ろうと努力します。
しかし、この世の中、絶対的にうまく頼りになる他人などまずいない。親しいつもりの友であっても、いつかは疎遠になったり、あるいは喧嘩をしてしまう。そんな中で兄弟は、最期に頼りになるものです。それ故に仲よくしてほしい、と思うのです。
これから何が起こるかわかりません。先のことは分からぬが、私の生涯はまあ、幸せであったと思います。それは「自分の能力」と誇りたいところだが、過半は親兄弟や他人様に助けられ、かわいがられたからです。4歳の時に横浜空襲で焼け出されました。一家は一時親戚のうちに寄宿し、信州の山奥に1年半ばかり疎開し、昭和22年に父が買った現在の場所に移ってきました。父母は子達を守ろうと苦労したでしょうが、私自身は全くそれを知らずに過ごしました。その後は日本経済の発展とともに、私と弟は、たぶん父母の自慢の息子として成長しました。世間知らずであったが、亡妻、友人、会社の上司などに助けられ、無事平穏な定年を迎えることができました。子達、孫たちにも今日集まったように恵まれました。弟にも恵まれました。
そんな平凡な人生の中で学ぶことがあるとすれば愛すること、愛されること、仲よくすることの大切さです。どうやったら仲良くできるか。結局は本人の努力であると思います。相手と連絡を取ること、付き合いを欠かさないこともそうであるし、何かの争いでは相手の立場を考えてやる態度が大切でしょう。相手の立場に立って自分が行動する、ということでしようか。
家庭内でも仲よくしてほしい。若い時の愛というのは、私は激しいけれども移ろいやすいものと思います。若い時には、相手が変わっても構わないこともあります。しかしいったん一緒になり長い月日が経つと次第にお互いに相手が欠かせない存在になっていることに気付きます。そうしたときに生じるコケみたいなものが本当の愛ではないか、と感じています。コケを生じさせるには努力が必要です。忍耐が必要です。相手を褒めてやることは、一番手っ取り早いやり方です。相手をくさしたり、亭主の愚痴を子達にぶつけたりすることは一番いけない。
ついでに子は実に親のことを見ているものです。たとえば結婚。親が素晴らしい結婚生活を送っているのを見れば、子達は結婚が素晴らしいと考えます、逆もまた真なりです。
戦後の民主主義の中で家というものが消えて行こうとしています。しかし私の世代はまだ家と言うものを意識しています。民主主義、民法が建前ではあるが、心の片隅でよいから長男は家や墓のことを考えるようにしてほしい。また女性たちは協力してほしい。
最後に自分のことを書いておきます。延命治療は施さないでください。スパゲッテイ人間になって生きていたいとは思いません。遺言のようなものは別に作るつもりですが、私は仏教徒ではない。それ故戒名をつけないでほしい。死んだら消えるだけ、仏の弟子になる気はありません。それなら今まで聞いたこともない何とか居士と呼ばれるより、生前の名前で呼んでほしい。葬式は仏式でも無宗教でも構いません。墓はどこでもいいけれども、父母亡妻と同じところがいいであろう。墓をつくるとは、私はそこを基点にたとえば法事などで集まり、故人をしのび、懇親を深めることが目的ではないか、と思う。そのような目的が一番効率よく達成されるように「もう私にとっては意味のない骨というもの」を処理、利用してほしい。
註 ご意見をお待ちしています。
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