1089「電力自由化に思う」(731()晴れ)

 

どうにかこの夏は電力会社の必死の努力で大停電を起こさずに済むことになりそうだ。感謝したい。朝の視点論点、メモあいたものを紛失したので詳細は覚えていないが、私の考えていることをズバリと言ってくれていた。

福島原発事故を機会に電力会社がもうけすぎている、給料が高い、電力料金は安くするべきだ、それには発電と送電を分離し、自由な競争を導入すべきだ、などとの論が支配的である。安価な原子力発電もなくしてゆこうという方向だ。そして一方で経済的な側面からはこれと全く矛盾する太陽光など自然エネルギーを電力会社に売価を大幅に上回る価格で買い取らせることが決まった。自由競争を導入するために発電と送電の分離も検討されようとしている。

気になるのは誰が供給責任を負うのか、という論点である。自由競争が進めば既存の電力会社は市場を失うであろう。どんどん失ってゆけばつぶれるかもしれない。経営を考えれば、既存電力会社は、余剰設備をどんどん廃棄してゆくだろう。その結果、ピークに急に電力需要が高くなっても対応できぬ、ということにならないか。新しく参入する小さな電力供給者も、できるだけ設備は小さくしてフル稼働させるに越したことはない。供給余力は考えないだろう。送電会社も電力需要の高まりについて「電力を送ることが仕事でない場合には仕方ありません。」と逃げるに違いない。

自然エネルギーによる電力供給を急げばいい、という人もいる。しかしあれは季節任せ、時間任せなのである。そして案外議論されていないのが、それらを蓄えるための蓄電池の技術。蓄電池の技術開発には実は致命的な問題点がある。それは小さな設備である程度以上大きな電力を蓄える設備は物理的、化学的にできないということがほぼわかっている。結果、大きな電力を蓄えようと思えば、多少改良はされるだろうが鉛蓄電池に毛の生えた程度のものを並べる羽目になる。さもなければ揚水電力などひどく効率の悪い自然現象でも利用するか・・・・。

大体勝手に作ったエネルギーが高く売れて、変動する需要に対する補完は誰がやるというのか。既存の電力会社まかせであろう。しかしそちらの売価は下げろと言う。彼らにしてみれば、尻拭いばかり、馬鹿馬鹿しくてやっていられない。そのようなことをやめて自分も高い電力を供給する方に回りたい、と考えないだろうか。太陽光発電を行って自身の会社に売価以上の価格で売りつける?

石油、石炭、天然ガスなどによる電力供給を増やせばいい、と考える人もいる。しかしそれなら二酸化炭素問題は全く無視していいのか。そしてガスタービンなど設備は案外に故障する。電力会社、独立電力会社の持つ設備に大きな故障が発生した場合、どうしろと言うのだろう。

今まで、当局が多少高めの電力料金であっても認めていたのは、いざという時に備えて余剰設備を持つことを認めていたからにほかならぬ。いつか国会の質問に「日本の石油の輸送に、海賊事故などを防衛するため自衛隊など派遣して無駄使いではないか。どれだけ止めることができたのか。」それに対し「事故を止めた実績はない、何もなかったことが効果だ。」と主張すると、それなら無駄な投資、やめるべきだと応じていた。火事は起こらないから消防隊はいらぬというような議論できわめて危険だ。

自由競争による電力料金が下がるという議論も怪しい。自由競争では、売電単価は自由に決められる、ことになる。すると価格は需要と供給によって決まることになる。しかし現代の生活を見ればわかる通り、電気は欠かせぬ。節電対策などが効果を生むだろうが限定的だろう。一方でここ10年以上は、多分原子力発電を一部しか使用できぬ、すると夏のピークには何時でも節電が要請され、停電が恐れられている状態になる。つまり需要が供給を上回る状態が続くであろう。当然価格は高い方向に動く。

さらに現在の電力会社は相当に大きい。そのバーゲニングパワーをもって産油国と交渉に当たり、LNG等原料の輸入価格を抑えているはずだ。是が独立系の業者がばらばらに押しかけて行ったらどうなるか。冒頭に述べた解説ではアメリカでは自由競争にした州とそうでない州の電力価格の比較を示していた。前者の方が全然高い!!

電力自由化、自然エネルギー利用電力の電力会社の買い取り義務、発電・送電分離などが安い電力供給につながるという考えは事情を知らぬ役人等が机上で考えたことにすぎぬのではないか。

原子力は将来無くすにしても、まだまだ必要だ、と考えている。しかし国民の総意として、それはいかんというのなら廃止することもあるのだろう。自然エネルギーが大切ということもわかる。しかしそれなら電力会社は皆で協力して維持発展させ、供給責任を負ってもらうべきだ。日本のエネルギー供給を行うという誇りを持ってもらわねばならぬ。電力料金は必要に応じてどんどんあげてやるべきだ。今回は東京電力の料金値上げ申請を2%も削ってようやく認可させた。おかしな話である。いづれは電力料金は何割も、ことによったら倍くらいまで値上げになると覚悟せねばなるまいというのに。

株価もこうした世論と政策に押されて、電力会社の将来像が描けぬと、東京電力が100円台になるのはしかたがないとしても、関西電力も2000円台であったものが500円台になっている。こんな電力会社が望ましい姿なのか。

 

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