1096「戦争について今上天皇のお立場」(8月15日(水)晴れ)
終戦記念日。今年は民主政権では初めて二閣僚が靖国神社に参拝したが、野田首相は参拝せず、千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花。石原都知事は参拝。ところで参拝にしろ、献花にしろ、もう一度戦争をして復讐、などと考えているわけではなく、平和を願っている。
しかし周囲の状況は必ずしもそうでない。むしろ今年はどうもきな臭い終戦記念日。
韓国ではレイムダックになりかかったイミョンバク政権が竹島占領、従軍慰安婦問題などやたらにナショナリズムをあおり、日本を驚かせる。中国は例の尖閣列島問題で盛り上がっているらしい。もっとも当局の規制が厳しく、民衆は国に対する不満をこちらにのみ向けさせざるを得ない、というような特殊事情もあるらしいが・・・・。
ところで少し話頭を変えるが、友人からもらったメールに次のようにあった。
終戦記念日に武道館で行われる「戦没者追悼式」で天皇が壇上で慰霊に頭を下げた後、どうして参列している遺族に向かって頭を下げないのか、前から疑問に思っている。戦死した英霊は気の毒だが、父や夫を失った遺族は、その後何十年も苦しい辛い思いをして生きてきた。彼らにどうして「申し訳なかった」と言えないのか。そんなことをしたら天皇の戦争責任を正式に認めることになってしまうからだろうか。
私が、「昭和天皇の罪は子の今上天皇が引き継ぐべきとのお考えですか?」と聞くと
「天皇は公職です。首相、大臣であれ、会社の社長であれ、後継者は前任者の行った公的部分は、正の遺産も負の遺産も引き継ぐのが普通だと思いますが。」との答えであった。
肉親が戦没したなどの立場にあるかもしれぬ遺族としての気持ちはわかる。しかし私はあの悲惨さをみずからは体験せず親の庇護のもとにのうのうと育ってきた私にはこのような考え方にどうも納得できない。
企業の場合には後継者は前任者に替わって企業の犯した罪に対して謝罪することはあるだろう。賠償することもあるだろう。しかし同じような場合で殺人者の子たちはどうだろう。オヤジの罪をいつまでも謝り続けるものなのだろうか。戦没者は関係のない息子に誤ってもらってそれで満足するのだろうか。
第二にあの戦争の責任を天皇陛下が追うべきものなのか。この問題は解決されていないし、極東軍事裁判でも不問に付されてしまった。実を言うとあの戦争はそれなら軍や政府が責任を負い、国民には責任のない物であった、という考えにも同調しかねている。国民の多くは其れまでそのやり方を信じ、シンガポールが陥落しあっ時には提灯行列を行って喜んだのである。
天皇陛下についてはそれほど責任論をいうのなら、戦後日本が独立した後だってかまわない、なぜ天皇制廃止の議論が主流にならないのだろう。実を言うと私は心の一部に天皇制廃止論に傾いたときがあった。
第一今の天皇制を維持している皇室典範はおよそ現在の憲法と矛盾している。男子一系などどうしてこんな考えが存在するのかとさえ思う。第二に天皇一家の人権というものをどう考えるのだ、というところだ。予算をやって食わせてやっている、との考え方もあるかもしれぬがそれなら天皇陛下の側から言えば拒否できないのか、となる。象徴といいながら、小学校に天皇陛下の像が飾ってあるわけでもない。
しかしながら、私は最近「結局日本人は、全体としては天皇制をよいものと思い、かつ尊敬しているのだ。」と思うようになった。オリンピックで天皇賛美ともいえる君が代が流れれば涙を流し、さらにこの前の東北大震災の折は時の首相が赴いても罵声を浴びられるのがオチであったが、皇后陛下などがいかれ、お悔やみの言葉を述べられれば、皆涙を流して感謝したではないか。
私の場合は、関係者に軍隊の物はいなかったから、戦没者慰霊に出席するようなことはない。
しかしもし私がその立場になったら心の中では戦没者に対し「ありがとう。あなたがたの犠牲で今日の日本がある。これからの日本がある。」と叫びたい。そして彼らの冥福を祈りたい。
何故そんなことを言うかというと、私はあの戦争で負けてひどい状態になったから、現在の日本がある、と思っているからだ。勝っていたら・・・・・日本は奢って、奢ってとんでもないことになっていた、と考える。日本人が反省させられ、結局はよい方向に向かっていったのだ。
終戦の日にTVでフィリピン特攻隊の話をしていた。生き残の兵士が
「全くの犬死であった。だってあの戦争に負けてしまったのだろう。勝つことが目的で起こした戦争で負けてしまったのだから犬死以外何の功があったというのだ。」
この議論は狭い部分では正しいのだろうが、大きく見ればそんなことはない、そのおかげで日本人は己の限界を知り、平和の大切さを知ったではないか、犬死などではない、今の日本を作る礎になってくれた、と叫びたい。
私はそんなわけで今上天皇には「これからの日本」について祈ってもらいたい。そして戦没者遺族とともにどうしたらいいのか、考えてほしいと願うのである。
・・・・ところでこの話を別の友人にしたところ「天皇は日本の臍のようなものである。あの制度があるから日本がまとまるのだ。」というような答えが返ってきた。ふとインターネットが飛び交い、自由な発言が許され、言い方を変えれば勝手な考えが許される現代、中国は共産党、韓国は反日、日本は天皇でもなければ国家としてまとまらぬ、無くなれば単なる利益集団として国民は勝手な方向に走るのかもしれぬ、などと考えた。
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