1104「「為替の誤解」を読む」(913日(木)晴れ)

 

日本の将来が読めず、わずかながらの財産をどう保全するかで迷っている。答えを求めてこの本を買った。まっとうなスタイルで議論されていると感じる。著者は1963年生まれ、みずほ証券チーフエコのミスト。著書も多い。

著者は最初に多くの議論が「誰かを悪者に仕立て上げる」方向でなされている。そのほとんどは誹謗中傷、罵詈雑言。悪しき風潮で、冷静に見つめたい。円高その他の経済情勢にまつわる表層的な議論の間違いを指摘しつつ、日本にとって真に必要な経済政策を探りたい、とする。

すっかり円高が定着してしまった。是を冷静に眺めてみよう。資金の運用への意欲が高まる場面をリスクオン、できるだけ回避しようとする方向をリスクオフという。リーマンショック、ギリシャ危機などを通じて世界全体にリスクオフの動きが強くなった。とりあえず退避先として有効な通貨はドル、円、スイスフラン。円は決して積極的な理由で買われたわけではない。

これに対抗する為替介入はその効果に限界がある。筆者は、大規模な為替介入には否定的だ。スイスの行った無制限な為替介入は、小国の時間稼ぎにすぎないと考えるべきで、大国日本には無理な話だ。しかし是に乗った「困った時の日銀頼み」が「追加緩和」を導く。日銀は「プラスチックの棒」のようなもの、ある程度は耐えられるが力を加えすぎれば折れてしまう。この辺をしっかり国民に説明し、対策が取られなければならない。他の通貨はどうであろうか。

「ドル」アメリカの経済をけん引する者は、メインが個人消費、サブが輸出促進。リーマンショックなどで米国経済は余裕を失っている。リスクオフに伴うドル高が起こっており、前者が活発にならぬ中、後者を動かそうとしている。そのような状況で積極的ドル高は志向しにくい。

しかし「ドルは基軸通貨」であり続ける。他に替わるものがないからだ。流動性(市場取引の大きさ、容易さ)と信用度(市場の信認)の組み合わせで考えたときその地位はゆるがない。ユーロは、ドルに対抗する通貨に育てようとする余裕などない。日本円も、人民元に対し守勢に回っている。人民元は、基軸通貨になろうとする前提すら整っていない。

こんな中で徐々にではあるがオーストラリアドルだけが地位を向上させている。人口増、資源国としての強み、健全財政などが魅力である。

米国は、日本型デフレには陥らないだろう。住宅需要はすでに徐々に回復している。シェールガス革命、バイタリテイあふれるベンチャー企業家なども将来にとって明るい。米国国債格下げの動きもあるが地位は不動である。今はバブルの後遺症が残るが、2014年後半には米国は「業績相場」に移行するのではないか。マーケット全般はリスクオンに傾斜すると考えられる。

「ユーロ」ユーロは崩壊することはない、と考える。下値も限定的であると考える。

ギリシャはユーロを離脱しない。欧州についてその流儀は揺るがない。民主主義の重視であり、決定に紆余曲折のあることであり、時間がかかる。全体としてみれば欧州全体の経済バランスは他国ほど悪くない。原則主義のドイツが問題だが、ユーロを導入したことにより多くのメリットを得たことを考えれば協力する。通貨ユーロの下落は危機ではなく、輸出産業が有利になる。

「人民元」中国経済については悲観シナリオと楽観シナリオが交錯している。前者は@不動産バブル崩壊に直面しているAその資金を調達してきた地方政府設立の金融会社が経営危機に直面し、経済に影響を与えるB「ソブリンリスク」に見舞われた欧州の金融機関が人民元を含め新興国向けの融資残高を減らそうとするC輸出減少などから沿岸部の中小企業が影響を受けるD最低賃金の引き上げなどで中国の競争力が弱る、等が懸念されている。しかし金融システムは安泰で、「悲観論」の多くは杞憂と考えられる。財政政策の余力はまだあり、日本の失敗を生かしてゆくだろう。ただ中長期的には人口動態から安定成長期に向かうと考えられる。

5章では以上のような考えの中で、最近見られる極論を否定する

「紙幣をすれば円安になる」市中で現金需要が増加しない限り、資金は出て行かない。

「円安になれば日本経済は復活する」1ドル200円は今の状況では起こらないとは言えない。しかしそうなると輸出が多少伸びても、輸入品の価格上昇が激しく、個人消費も落ちこみ、政府は円買いに走らねばならず、最悪の状況になる。資産課税は極めて危険な議論だ。逆に1ドル50円になる、との議論もあるが、そうなる前に反転すると予想する。

「経済成長すれば消費増税は必要ない」借りた金は返すのが当然。マーケットは経済成長を待ってくれない。社会保障を大幅に削る必要がある。

「埋蔵金をもっと活用したら。」そこそこ活用されており活用余地は少ない。

「日本は金融立国を目指すべきだ。」邪道である。ものづくりは捨てたものではない。

「もっと金融規制を強化すべき」固定相場への逆戻りはありえない。

以上のような議論をもとに筆者は「日本売りに備えよ。」と警告している。

 

 

(参考)「「世界のお金は日本を目指す」を読む」(921日(金)曇り)

 

岩本沙弓著。「日本経済が破綻しないこれだけの理由」「なぜ円が買われるのか?通貨の裏側に隠された本当のこと。」と帯にある。

著者は日本の場合国の借金である国債を購入している92%が日本国民である、と指摘する。

金融機関66.6%、一般政府及び中央銀行19%、家計3%など。アルゼンチンやロシアなどデフォルト(債務不履行)は借金の比率が50=70%が対外純債務国である。純債権国と債務国は区別して考えなければいけない。

海外ヘッジファンドなどはたとえば「日本国債バブル「18か月以内に崩壊する。」」のような記事を書かせて取引現場を有利にしようとしているにすぎない。

@     日本は経常黒字国である

A     日本は巨額の対外純資産を持っている

B     日本は巨額の外貨準備高を持っている

C     発行する国債を自国民だけで95%を消化している

D     日本国債は円建て債券である。

さてDはいざとなれば輪転機を回せばいいことを意味している。

為替介入は借金が増えるだけである。「今消費税を増税しなければ日本はつぶれる。」あげく消費税を上げれば、景気が良くなるというのは理解に苦しむ。

通貨高のメリットを忘れている。輸入価格を抑えられる。海外の人が日本に来て働きたいというのは日本の通貨が高いと思っているからである。逆に円安になればエネルギー価格の高騰など困った事態を招来する。逆の韓国はウオン安で苦戦している。サムスンが世界で儲かればもうかるほど日本の部品メーカーはもうかっている。ウオン安では困るからスワップ協定で韓国経済を日本が助けようとしているのだ。

アメリカの場合、オバマ後、株価は上がってゆくだろう。しかしそれで景気が良くなるとは考えにくい。投資する余裕のある富裕層のみが収益チャンスを得る。然しヘッジファンドはぼるかールールの導入などで衰退の可能性が高いアメリカの最大の戦略は日中胃の借金棒引きに向かいだろ。つまり円・元高誘導である。バブルが立ち上がってゆくことがあるかもしれないが、バブルはクラッシュしドル安(借金の棒引き)に向かいであろう。このバブル崩壊後からさらにアメリカが立ち直ろうとするなら部分「金本位制」くらいしかないであろう。やがてこれが固定化されるがそれには2030年くらいまでかかるであろう。

ユーロ安によってつまり今回の欧州経済危機、もっともメリットを受けているのはドイツである。輸出比率が非常に高いからだ。ギリシャは切り離すべきであるが切り離せないだろう。実行していたら、これほどまでの通貨安にならなかったろう。また地政学的にはギリシャとこれから入るかもしれぬトルコは、ヨーロッパにとってロシアに対するバッファーとしても重要である。

1ドル76円は名目為替レート。これに対して最近実質実効為替レートが注目を浴びている。

有るサイトの説明を引用すると

実効為替レートとは、ある通貨が他の通貨と比べてどのくらいの水準にあるのかを見るための指標です。普通の為替レートは、ドル/円とかユーロ/円のように二国間で表現しますが、実効為替レートは複数の通貨との相対的な関係を考えて計算します。実効為替レートを見ることで、その通貨が他の通貨よりも高いのか安いのかを総合的に判断することが出来ます。

実質実効為替レートとは、この実効為替レートをもとに、物価の違いを調整して計算した指標です。最近の日本のようにデフレが進んでいる国では、お金の価値は相対的に上がって行きますが、逆にインフレの場合には価値が目減りします。この影響を加味したものが実質実効為替レートです。」

こちらでは円は高値どころか、かなりの通貨安の水準にある。何度もドル買い/円売り操作を行っても元に戻されるのはこの辺に理由がある。

中国の場合、ドルペッグ制度と通貨バスケット制度をうまく使い分けて物価上昇を抑えることに成功し、ソフトランデイングを模索している。円・人民元の直接取引をアメリカは黙認している。中国投資で目いっぱい稼いだアメリカは、ここ数年撤収の動きに出ている。日本企業に替わってもらおうとしているのである。スケープゴートにされる可能性がある。中国は、今後中東の独裁国家と同じように分裂してゆくのではないか。これがもう一方のアメリカの戦略でもある。

日本としては「日本人であること誇らしく思える教育と政治取り戻す」ことが大切だ。そのためには国家に対してある期間強制的に奉仕することを義務付けるようなことも必要かもしれない。日本がだめなら海外に移住すればいい、という考え方は間違っている。

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/