1106「文字はどう書いたらいい?」(920日(木)曇り)

 

先生は、日展に応募する作品を、日夜書き続けているらしい。

「あまり書きすぎて、どれがいいやらわからなくなってしまう。みなさん、選んでみてください。」と書道教室でその作品を広げて見せた。

何が書いてあるやらさっぱりわからぬ。大きく堂々と2行に、しかし紙を墨で汚しているだけと言ったら怒られるが、大きな文字が四方八方に飛び散っている感じ。この前青山杉雨の展覧会に行ったがその作品を彷彿させる。字のような、絵のような・・・・・。

先生は「篆書です。春秋時代の宋の文字です。」とおっしゃる。

この言葉を理解するためにウイキペデイアを使用。

篆書というのは広義には秦代より前に使用されていた書体全てを指すが、一般的には周末の金文を起源として、戦国時代に発達し、さらに始皇帝によって整理され公式書体とされた小篆書とそれに関係する書体を指す。

ウイキペデイアによれば、中国には宋という名の国が大きい物だけで5つもあった。

@     春秋時代の宋(紀元前1100-紀元前286

A     六朝の一つ(420-479)、南朝宋ともいう。

B     隋末に建てられた宋(623-624

C     五代十国の混乱の後、趙匡胤が建てた王朝(960-1279)。通常日本で宋王朝といえばこちらを指す。後に金に攻められて都を移し、それを境に北宋、南宋に分ける。

D     元末に擁立された王朝。(1355-1366

キリスト様が生まれる何百年も前に書かれた文字・・・・わかるわけがないと得心。

読めない、というと先生は楷書で書き、解説してくれた。しかし何が書いてあるのか、生徒は聞きもしなかったし、先生も解説しなかった。

先生の作品をすごいなあ、と思う一方で、ではなぜ我我のような初心者に見せ、選んでもらうのだろうと思った。

「右がいい、字全体の大きさがまとまっている。」

「いや、左がいい。文字の大小にリズムがあっていい。」

「いや、右だ。左は字が大きすぎて、紙を汚している感じだ。白い空間部分が少ない。」

素人評論家は、言うことだけは一丁前である。

ワイワイがやがや選び、授業が終わり、生徒が退室しようとすると先生は

「僕は完成させてゆきますから。」と落款をおす準備を始めた。

しかし書の目的、書のうまい下手は何なんだろう。

モダン書道は、自己表現できればどうでもいい、という様な風情。たとえば川と言う字を書くのに、三本の縦線を薄墨でなよなよと、いかにも水が流れている様に書いて見せたりする。青山杉雨は、書道の文字は、あくまで昔の流儀を伝えなければいけないという。中国古代の文字は象形文字に近い。昔の流儀は伝えるが、やっぱり絵の様な、文字のようなものになってしまうことに変わりはない。

文字を、単純に見て満足するもの、という視点に立てば、どのように書いてもよいのかもしれぬ。しかし他人に評価されるために、何かしら感心させるところが必要、そのために古来の流儀を学ぶ、のかもしれない。先生は日展のお偉方に見てもらって評価されるために、彼等の好む古代文字を思い切りそれらしいスタイルで書くのかもしれぬ。

我々はどう書けばいいのか。日展の先生が感心するように書くべきかというと、そうではない気がする。自分自身、友人等が見て「うまいなあ。」と言わせるような文字・・・それなら、彼らに第一に読めなければいけない。現代流の文字で十分と言う気もする。

それでも文化センターは趣味の世界。

昔流に書くのも、趣味かもしれぬ。生徒の一人は先生の書くような篆書を書いてきた。先生は「篆書は筆法などどうでもいいのです。書き順などどうでもいいのです。均一な太い線で書くことが肝要です。」と朱でなおす。・・・・・ううん、これは芸術か?私の心の中でまたナマイキな意見が首をもたげる・・・・。

(追記@) 924日 先生「御師匠さんのところに作品を持っていったら、別の作品がいいと言われたのでそれで応募することにしました。どういう基準なのか、私もよくわかりません。」・・・・先生が分からなければ、生徒はなおわからないなあ。先生更につけ加えて「大きな声じゃ言えないが関西のある書家は「篆書は文字ではなく絵だ、と言っているそうです。」そうか・・・やっぱり絵か。

(追記A)ウイキペデイア(「筆順」)には

「筆順指導の手びき」(1958年(昭和33年)文部省編)は教育漢字881の筆順をできるだけ統一する目的をもって作成された。・・・・」

「私たちが「正しい筆順」と考えているのは、前掲の『筆順指導の手びき』という基準書に示された筆順ですが、同書では、あくまで指導上の配慮から基準として提示するにすぎないとの立場をとっています。しかし、この点についての理解が欠けて、基準としての筆順はいつしか「正しい筆順」として教育現場に浸透していきました。結果、記憶の正誤判断を強いるだけの筆順テストがまかり通るようになりました。」

 

註 ご意見をお待ちしています。

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