1108「「チャイナジャッジ」を読む」(108日(月)晴れのち曇り)

 

著者は遠藤誉、てっきり男性と思って読み終えたが、ウイキペデイアを見てびっくり。

1941年、長春出身の女性物理学者、社会学者、作家。2児の母、2孫の祖母。日中戦争終結後も日本独立回復まで中国で教育を受けるという特異経験をもつ。そのため本来物理学者でありながら、日中社会の社会学的考察に基づいた社会評論や自伝小説など幅広い活躍をみせる。

1952年、日本に引き揚げ。「卡子」は、脱出行の体験を基に書かれた。 1975年、東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得。以降、千葉大学教授、筑波大学教授などを歴任。 1988年、「不条理のかなたに」で読売ヒューマンドキュメンタリー大賞優秀賞受賞

「卡子」は中国からの自分の脱出行を書いたものらしいが、この著書は、山崎豊子「大地の子」に盗用されたとして、提訴した。主人公の男女を入れ替え、換骨奪胎しているので盗用にはならない、という理由で敗訴している。そして著者はすでに薄煕来の失脚に関する著書を著している。「チャイナナイン 中国を動かす9人の男たち」(朝日新聞出版)

私が大連に旅行したのは6月初めである。この時ガイドの一人は「今、重慶に移られた薄煕来さんのおかげで、大連の街は近代的できれいになった。」と言っていた。私が薄煕来の名前を知ったのはこれが初めてである。私がよく知らなかっただけの話である。ガイドはおそらく都合の悪いことを隠してうまくしゃべったのであろう。

この書は薄煕来の生い立ちから失脚までを、半ばドキュメンタリー風に、半ば小説風に書いている。

まずはイントロダクション。201226日重慶市の副市長王立軍が成都にあるアメリカ領事館に逃げ込んだ。逃亡理由は暗殺されそうになったから・・・・・。

薄煕来はその責任を取らせるという形で、315日重慶市書記を解任された。彼は2012年秋の第18会党大会で中枢に入るのではないかと一部で噂されていた男。しかも新華社電によれば410日には政治局員と中央委員の職位も奪われてしまう。

更に同時に新華社電は「薄煕来の妻・谷開来を殺人の疑いで拘束し、すでに司法に回した。」とも伝えた。しかも殺害した相手は「イギリス人、ニールヘイウッド」当局は金銭上の理由とするが、著者はスパイ活動の可能性などを示唆している。

全体話が飛び分かりにくいところもあるが、アウトラインをまとめる。

薄煕来1966年から76年までの間の毛沢東を絶対的に個人崇拝する文化大革命の折に、「聯動」というグループの中で暴れまくった。当時は劉少奇や鄧小平までが糾弾された。改革開放が推進されたが、その先頭になったのが胡耀邦であった。

文革の反省として個人崇拝が否定され、10人足らずのトップの合議で物事が決められるようになった。彼らの間には紅い専用の電話回線が常に連絡を取っているようだ。そしてこのころは鄧小平とともに父の薄一波が国務院副総理としており、非常に大きな権力を持っていた。

改革開放邁進過程で、沿岸一帯大連を含む15の港町を19855月に「経済技術開発区」に指定し、数々の優遇措置を取った。薄一波の意向で、薄煕来は金県の副書記と言うポストを足掛かりに、周囲に嫌われながらも勢力を伸ばしていった。92年に大連市長になった。暴力団に接近することさえして力を伸ばし、不産開発等で財を成した。

共産党一党支配の中国では、現体制を守ろうとするグループと進歩させようとするグループの対立が激しい。改革開放を志向する胡耀邦等の追放が、鄧小平の決断で追放が決まった。その胡耀邦の死に対する抗議に端を発して1989年の天安門事件が起こった。この時薄一波は、江沢民、いわゆる守旧派に属し、かっては自分を救ってくれた胡耀邦を糾弾したのだ。

この間に薄煕来は遼寧省省長にまで登る。不正を取り締まる打黒運動に名を借り、瀋陽の財閥をつぶしていった。仰融事件などがその典型である。一方妻の座に収まった谷開来はイギリスで教育を受けさせている息子薄瓜瓜の教育で忙しい。それを通じてニールヘイウッドを知った。

薄煕来は、やがて江沢民のおかげで商務部長、国務院副総理などの重職を兼ねるようになるが、スタンドプレーが多かったり、遼寧省時代の不正が暴かれるなどして評判が悪かった。薄一波は、2007年に99歳で他界した。2007年、薄煕来はトップに登ることを希望していたが、チャイナ・ナインに入ったのは遼寧省で書記をしていた李克強、上海市書記の習近平等であり、彼は重慶書記に任命された。ここで彼は自己の勢力を挽回するために「革命の頃の精神に戻るべきだ。」などとし、唱紅運動を起こし、軍にも働きかけ、自ら第二の毛沢東になるべく運動を展開した。

中央との対立が深まる中、ニールヘイウッドの殺害事件、王立軍の米国大使館逃げ込み事件が起こり、中央政府、つまりチャイナ・ナインは、ついに彼を追放することを決めたようだ。

薄煕来自身の運命について、関心はないが、最近の尖閣問題などを考えるとき、中国の考え方、決定の仕方等を理解するうえで参考になる一冊と言える。

(後記) 薄瓜瓜なのか薄爪爪なのか自信がありません。文献でも異なっているようです。どなたかわかる人はいませんか。

 

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