112「五島美術館と茶の湯名碗」(11月19日 曇り時々晴れ)

五島美術館で茶の湯で使う名碗を展示しているというので行ってみた。

名古屋にある徳川美術館との共同企画で、両美術館をはじめ東京国立博物館など多くの美術館から名椀を借り出して展示している。

茶の湯が盛んであったひとつの時代、武野紹鴎、千利休、古田織部等が活躍した、室町時代後期から桃山時代を中心に、五つのテーマを設けている。

代表的なものはほとんど取り上げられているが、備前、萩、唐津などの和物茶碗や本阿弥光悦、小堀遠州のとりあげたものはない。今後企画するとのことである。

このように古来有名な茶碗を一堂に会したものを見るのは、初めてのため、非常に感動した。茶碗そのものもそうだが、陶器を長くやっているため、焼成方法にも興味がわいた。

1 東山御物の世界 
すべて南宋時代、中国で作られたものである。青磁茶碗は還元焼成の技術の確かさをうかがわせる。油滴天目、木の葉天目、玳玻天目などはこのような焼成技術が中国にあったものだ、と知って驚いた。いづれの作品も味わいが深いが、いわゆる曜変天目だけはなかったようだ。
2 紹鴎の時代
侘びの茶道への模索が始まった時代。灰被天目というのは高温で焼成し、釉面が変色するくらいのものを言うのだろうか。白天目もほどよく貫入があるなど品がある。黄瀬戸を使った美濃の茶碗もいい。
3 利休の時代
井戸茶碗は少し高めの高台と轆轤目が特徴らしく、おおらかなさを感じさせる・三島手は茶系の土に彫りやかんなめをいれ、白い土を埋め込み、釉をかけるが、素朴で味わいの深いものが多い。長次郎等の楽茶碗は黒いものも赤いものも低温焼成独特の暖かさを感じさせる。瀬戸沓形など茶碗の口をゆがめて味を出すやり方は中国作品には見られない傾向。
4 織部の時代
朝鮮から来た割高台が面白いが、同時にこの辺から日本独特の茶碗が作られるようになった、と感じる。美濃の瀬戸黒茶碗はどっしりと迫力がある。志野や信楽の茶碗もすばらしい。織部はみな黒織部でみなのびのびと派手やかな模様を描き出している。
5 侘び数寄の展開
江戸時代に作られたものが主流だが、枯れて当たり前すぎるように感じた。

五島美術館は私は初めてである。車で行けば環八をまっすぐだが、駐車場が心配で、渋谷から東急に乗り上の毛でおりた。近くにゆくと五島一族の立派な家が立ち並び、ガードマンが警戒している。

美術館は駅から5分かそこら、東急の元会長五島慶太氏(1882-1959)のコレクションなどを中心に1960年にオープンしたものである。「源氏物語絵巻」と「紫式部日記」を秘蔵していることで有名だが、コレクションの中心は東洋美術のなかでも比較的落ち着いた存在の書や水墨画、茶碗などである。普段ならそちらが見られる。

見終わって庭に下りる。6千坪の広大な敷地には武蔵野の面影をとどめる雑木林が残り、今は紅葉が美しい。起伏にとんだ地形で二つのお茶室。見晴台、大日如来像、大小さまざまな石仏、石灯篭等が散在する。ぶらぶら散歩するのに最適のコース。
入場料千円はちょっと高いが、もう一度ゆきたくなる展示であり、美術館であった。

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