1127「暮に2泊の温泉旅行」(1226日(水)―28()晴れ)

 

あわただしい暮を、ちょっと抜け出して温泉旅行をする。一昨年から、始めたA君との恒例の行事。これに今年は同じく高校同期のB君が加わり、一泊だったものを2泊にしようということになった。ロマンスカーに乗って小田原駅の食事処「魚国」で昼食をとり、後はのんびりと伊豆高原。天気は寒いが、うららかに晴れて旅行日和。

高台の上に或るホテルはまるで城である。バブル絶頂期に金に糸目をつけぬ感じで作ったらしい豪華なロビーに座れば、町の向こうに海が広がって見える。エクシーヴ伊豆高原とでも正式には言うのだろうか。B君が会員券を所有しており、A君と私は、おこぼれに預かっている。湯を楽しんだ後、イルミネーション輝く庭を眺めながら、西洋式の豪華な夕食。一緒に食べるのが少しは見場のいい女性ででもあったのなら、とは三人口には出さぬが一応に考えること・・・・。

B君が大学の研究室で一緒だったというCさんがここに住んでいた。電着塗装の会社を成功させた後、引退したのだという。彼を交えて、翌日「和むら」という地元では有名な食事処でトンカツの昼食。伊豆高原は東急が主として開発した別荘地らしいが、敷地面積が広く、木立に中に家が点在するという感じで非常にゆったりしている。有名人の別荘や、一流企業の保養所なども多いようだ。実は私自身も30年以上前別荘ブームだったころ、この辺に目をつけ見に来たことがある。もっとも私が対象としたのは猫額大しかないケチなものだったが・・・・。Cさんの生活は、成功者のそれで申し分ないが、ときどき今日は何をするのか、と困るときもあるという。東京の生活をたたんでこういうところに住むとしたらどうなるか、と会話が弾んだ。

翌日は、稲取「いなとり荘」。私が好きな海岸沿いに建つホテル。

風呂場からの景色だけならエクシーヴ伊豆高原に勝るとも劣らぬ。何しろ目の前に太平洋が果てしなく広がっている。そのなかに大島、利島など伊豆七島の島々。遠くに漁船。夜ともなれば暗い中にポツリポツリと小さな点景を作りだす。お湯は単純アルカリ泉。このまえ女中にどんな成分であるか、と聞いたとところ、大きな声で「エヌエーシーエルでございます。」と答えた。それって要するに塩水?太平洋は部屋からも一望。3日目に日の出を眺めたが実にきれいだった。そして眼下の岩だらけの浜に波が押し寄せる。間断ない波の音が部屋でも風呂でもよく聞こえる。A君はこれを聞いていると飽きない、と言う。

稲取は金目鯛がうまい。金目鯛の街として売り出そうと、町の電柱などにも小さな金目鯛の飾りがつけられている。金目鯛はタイの種類ではない。深海魚である。

B君と港を散歩すると、漁師のおばさんが亭主の釣ってきたかごを浜に揚げたところであった。数匹の金目鯛、サバ、目鯛。金目鯛は、目が本当にきれいな金色をしている。大島沖が絶好の漁場だそうで、漁船は朝早く出かけ、昼過ぎに帰ってくるという。釣り方は釣針の沢山ついた糸を流すもので、餌は烏賊の切り身。「針をたくさんつけても皆釣れるわけじゃない。」とおばさん。

もちろん夕食にはその金目鯛の煮つけがでた。こちらの煮方は漁師煮といい、かなり味付けの濃い煮方。少し残しておいて、最後に飯に残した魚肉と汁をかけて食うのが、皆のやりかただと言う。私たちもそれに倣った。

稲取は東伊豆町に属する小さな漁村である。6月の第1週の火曜日・水曜日に行われる奇祭「どんつく祭り」で有名とか。観光協会のサイトによれば

「どんつく祭は弥生時代中期から伝わる祭り。ご神体は何と男性のシンボル。夫婦和合、子孫繁栄などの願いを込めて、これを「ドンとツク!」から「どんつく祭」なのです。夜は奇妙な仮装をして踊りを競い、ラストは「どん太鼓」が響き、花火大会がダイナミックに夜空を彩ります。」翌日にB君とどんつく通りを通り、灯台に登る。そばにどんつく神社、収められているご神体を見物。茶色く光り、ご立派なものでございますこと。B君と「我我のご神体はどうも元気がない。」と同病相哀れみ・・・・。

鳥羽一郎の「愛恋岬」という歌の歌碑が立っている。ここを舞台に歌ったご当地ソングだが、あまりヒットしなかったようだ。歌詞に「あじのたたきに紫蘇の葉のせてそっと差し出す白い指」・・・・ここなら鯵でなく金目鯛!

金目鯛、どんつく祭りのほかにここはつるし雛が有名。江戸後期からの伝統らしい。無病息災、良縁を願ってつるし雛祭りは120日から331日。文化公園につるし雛が展示され、体験コーナーなども出るらしい。帰り道、伊豆急黒船号の列車の中で隣に座ったおばあさんが一心に作っていた。観光用には中国製もあるが、こうしたものが心がこもっている。おばさんの話では中国製は縫う代わりに接着剤で布を貼り合わせるとか。

3日間ののんびり旅行はあっという間に終わってしまった。帰りに、これもいつものように小田原でお正月用のかまぼこなどを買って帰還。

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/