1130「正月に東京都国立近代美術館」(13日(木)晴れ)

 

正月三が日の最後、ガールフレンドのAさんに誘われてみてきた。東京国立近代美術館は、1952年に開館した。サンフランシスコ講和条約によって日本が主権を回復した年。今年はその60周年にあたり、これらの作品を一堂に公開するということで話題になっている。14日まで開催。

国指定の重要文化財は、美術工芸品では一万件以上あるが、その多くは古い時代のもので、明治以降の絵画・彫刻に限ると51件しかない。そのうちの13点が東京国立近代美術館に所蔵されている。それらはインターネットで調べれば東京国立近代美術館サイトに掲載されている。

前にみた作品もあるが、みな素晴らしい。土田麦遷の「湯女」は松などの美しい風景の中に赤い浴衣を着たぽっちゃりとした女、ルノワールの作品を思わせる。構図はマネの「オダリスク」を思わせる。同じ太めの女を描いても西洋と日本ではこうも違うのか驚いた。

おなじ作者の「舞妓林泉」も平面的な構成秩序の中に描かれ、気品があり美しい。

最近(2011年)に重要文化財に指定された上村松園「母子」(1934年)は素晴らしいけれど、彼女の作品といえば、東京芸大の切手にもなった「序の舞」が思い出され、つい比較してしまう。

萬鉄五郎の「裸体美人」(1912年)は文化遺産オンラインというサイトには「萬はのちにこの作品について、「ゴッホやマチスの感化のあるもの」と述べているように、画面からは炎のように揺れ動く下草の描き方にゴッホを、そして剛直な筆致で単純化された裸婦の表現にマチスを見いだすことは容易であろう。」としている。

重要文化財に指定されているわけではないけれども、小倉遊亀の「浴女その1」(1938年)は素晴らしいと思った。女性の裸体を描くのに温泉という場を借りるという古典的な方法に拠っている。湯気によるタイル目の霞み、浴槽の光の屈折など、それまでの日本画には無い面白さがある。体の線も日本画特有のすっきりした描線を使っている。てっきり男性の作品と思ったAさんが「どうやって描いたか」と不思議がっていた。小倉遊亀は1895年生まれの女性で2000年没、105歳の長寿を全うしている。安田靫彦のお弟子さんであった。

その安田靫彦の「黄瀬川陣」、こちらは2011年に重要文化財に指定された。鎌倉で旗揚げした頼朝のもとに奥州から駆けつけた義経が挨拶をしているところだが、文化遺産オンラインには「必要最小限の背景を伴う構図に、澄明な彩色を用いて、高い画品を備えた作品に仕上げている。これは靫彦の技法をも含めた古画学習の成果及び古典、古美術の鑑賞を通じて形成された絵画観に負うところが大きい」

古賀春江の「海」(1929年)も面白い。日本経済新聞のサイトによれば「青い空に鳥が羽ばたき、海には色とりどりの魚が泳いでいる。そんな自然の豊かさに対抗するように、機械のような工場や潜水艦、飛行船などの人工物が重々しく画面に割り込む。赤い帽子をかぶった女性はどこか陽気な印象だが、つま先立ちで天を指さし、近代文明の負の側面を告発しているようにも見える。さて、あなたはどう見ますか。」・・・・しかしこうなると絵は上手下手よりアイデイアかもしれない、とも感ずる。

Aさんは藤田嗣治の「五人の裸婦」(1923)に惹かれた、という。怪しく匂うような五人の白い裸婦が白っぽい背景のもとに描かれている。私はむしろ戦争画に惹かれた。「サイパン島同胞臣節を全うす」、「アッツ島玉砕」、軍部は国民の士気高揚のために使った、といわれているが、暗い細かい描写が戦争の悲惨さをより際立たせていて、こちらにその気迫が伝わってくるようだ。藤田は戦後戦争記録画を描き、戦争に協力したと非難され、パリに逃れることになるのだが筋違いも甚だしいと感じる。

草間弥生の「冥界への道標」という作品は横長の大きな作品。無数の男根らしきものが、画面全体に黒々、にょきにょきと生えている。ところどころに古い靴。彼女は幼少の頃から統合失調症で40数年間精神神経科病院に入院生活していたというから、そのような視点で描かれたか。私は面白い作品と感じたが、Aさんは「見るのもおぞましい。」という風情であった。

なお東京国立近代美術館の分館として、坂を上り、北白川宮能久親王銅像を越えて行くと、工芸館がある。こちらは1977年開館。旧近衛師団司令部庁舎として建設されたものを転用したものである。こちらは「寿ぎの「うつわ」」として漆工作品から展示されている。漆は、ウルシの木から採取される樹液、乾くと固まるという性質を利用して、芯材に木や麻布を用いたり、また塗面に金銀粉等を蒔きつけて華やかに装飾など様々な工夫が凝らされている。まさに職人芸の極致を見る思いで、日本の美を再発見する。

なおこのエッセイは自分の思いに加えインターネットをいろいろ利用して引用して書いた。独断、偏見があると思うがその辺はご容赦を・・・・。

 

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