1134「「植物はすごい」を読む」(118日(金)曇り)

 

植物のすごさをテーマにまとめた本である。

「どんなに費用がかかってもいいから、水と二酸化炭素を原料にして、太陽の光を使ってでんぷんを生産できる工場を作ってください。」といわれても、私たち人間はマネできない。それを植物は日常の営みとして簡単に行ってしまう。そこに植物の環境がどんなであろうとも生き抜こうとする強さを見るという事か。

葉っぱにとまったハエなどの小動物を素早くとらえて食べてしまう、実に触れるとはじけて種を飛び散らせるホウセンカ、午后10時ころ甘い香りを放ちながらゆっくり咲くゲッカビジン、10万個以上の花を一斉に咲かせるサクラ、秋に斜面を真っ赤に染め上げる紅葉、そのすごさと目的を認識させるための書といえよう。

第五章「やさしくない太陽に抗して生きる」を簡単にまとめると・・・・。

植物の祖先は30数億年前、海に生まれたが、海水に妨げられて陸上のように太陽の強い光を受けられない。陸上に出れば「多くの光合成が出来るだろう。」と上陸した。

ところが太陽の光は強すぎた、有害な紫外線が多く含まれていたのだ。私たちの経験でも紫外線は皮膚がんを起こし、肌の老化をもたらす。顔や腕の肌と下腹部の肌を比べればその差は歴然としている。これは紫外線が「活性酸素」を作るからである。活性酸素の代表例は過酸化水素であり、「パラコート」という除草剤は植物に活性酸素を発生させ、枯らせてしまう。その害を消してくれる抗酸化物質は逆に健康に良い。抗酸化物質の代表はビタミンCとビタミンEである。植物はなんと自分の体を守るためにこれらを作りだしているのである。だから日の当たるところほど木々は青々としげる。

植物の花は紫外線が降り注ぐ中で成長し、子孫を作る。生まれてくる子供たちに紫外線は有害である。抗酸化物質にはビタミンC、ビタミンE以外にも美しい花の色を作りだすアントシアニンやカロチンがある。さらにカロチンに至っては抗酸化力のほか、ビタミンAが不足するとビタミンAに変換される特性を持っている。それゆえ熱帯のように太陽の力が強ければ強いほど花はますます濃い色になる。

果実に皮があるのも子孫を残すためである。無ければ果汁が零れ落ち乾燥してしまう、虫や鳥に食べられてしまう。皮に穴があけばそこから病原菌が入ってきてしまう、カビが生えてしまう。皮には同じように抗酸化作用のあるポリフェノールなどが含まれている。

続いて第六章では「逆境にいきる仕組み」

暑さと乾燥に負けない!そのために、夜のうちに水分を吸収し体の中にため込む術を身につけた。水やりはこれを考えて行う必要がある。暑さ対策は、水分を蒸発させて防げばいい、しかしそれを許されぬサボテンは葉を小さなトゲにする。気孔は二酸化炭素を吸収するためには開けなければならぬ、しかし水の蒸発を防ぐには閉じたい、二律背反を解決するために夜は気孔を開け、昼は閉じる植物も現れた。ベンケイソウで、CAM植物と呼ばれる。

寒さをしのぐ。冬の寒さを耐えて生きるには糖分を蓄える。凝固点効果によって体内の水分が凍るのを防いでいるのだ。常緑樹はこの機能を備えている。寒じめの野菜は甘さが増す。これは植物が体内の水が凍らぬよう糖分を作りだしているからだ。地面をはって生きる寒さを避けようとする植物も多い。これも寒さ対策である。

色々な巧みな仕組みで生き残る。「シメコロシの木」は大木に巻きついて、養分を奪って成長し、最後には大木を枯らしてしまう。同じように世界一大きな花というラフレシアはブドウ科の植物に寄生する根も葉もない奇妙な植物。それでいてたくさんの種を一気に作ってしまう。肉食系植物はハエトリソウなど多いがあれは窒素を含んだ物質を吸収することが目的。砂漠のようなやせた土地では大地から窒素を吸収できないのだ。

また種や花粉がなくても子供を作る植物の話も面白い。

トマトやイチゴは種がオーキシンなる物質を出して実を大きくさせてやる。いちごやトマトの花にこのオーキシンをかけると実が大きくなるが、種はできない。温州ミカンは種がないけれども接ぎ木によって増やすことができる等々。

その他に自分のからだは、自分で守る、味は防衛手段、病気になりたくない、食べつくされたくない・・・・それらの対策のため植物はどうしているか。・・・読んでのお楽しみ。著者田中修はNHKのラジオ番組「夏休み子ども科学相談」に回答者として出演しているとか、のせいか説明は非常にわかりやすい。お薦めする。中公新書。

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/