1136「「奥の細道」を楽しむ」(1月25日(金)曇り)
古文書研究会という物に参加している。この会の始まりについては905「古文書研究会」に或るとおりである。あれからもう2年半・・・・・。次に何を読もうか、という話になった時、古本屋で芭蕉自筆「奥の細道」という本を見つけた。自筆とあり、芭蕉の書く文字に惹かれた。
まずは予備知識、ウイキペデイアによれば
「芭蕉が、ほとんどの旅程で弟子の河合曽良を伴い、元禄2年3月27日(1689年)に江戸深川の採荼庵を出発し(行く春や鳥啼魚の目は泪)、全行程約600里(2400キロメートル)、日数約150日間で東北・北陸を巡って元禄4年(1691年)に江戸に帰った。「おくのほそ道」では、このうち武蔵から、下野、岩代、陸前、陸中、陸奥、出羽、越後、越中、加賀、越前を通過して9月6日美濃大垣を出発するまでが書かれている(蛤のふたみにわかれ行秋ぞ)。曾良の随行日記も、没後数百年を経て曾良本と共に発見されている。」
「推敲の跡多い原本には中尾本と曾良本がある。(中略)その後に芭蕉の弟子素龍が清書した柿衞本・西村本がある。西村本の題簽(外題)「おくのほそ道」は芭蕉自筆とされており、これが芭蕉公認の最終形態とされる。芭蕉はこの旅から帰った5年後、1694年に死去したため、「おくのほそ道」は芭蕉死後の1702年に西村本を基に京都の井筒屋から出版刊行され広まった。(中略)
1938年に曾良本発見、1960年に柿衞本の存在が発表され、1996年に芭蕉の真筆である野坡本(やばほん)の発見とされた中尾本の存在が発表されている。(後略)」
古本屋で見つけた本は野坡本で、平成元年が芭蕉三百回忌、そのお祭り騒ぎも終わった1997年に発行されている。各ページの上段に野坡本の写真が配置され、下段に印刷文字になっている。古文書として読むなら、回答つきのテキストみたいなものである。
古文書研究会でこれをゆっくりゆっくり読みだした。ゆっくりになったのは、いつもメンバーの一人A氏が芭蕉の歩いたあたりの五万分の一の地図を用意し、いろいろ解説してくれたからである。最初は、これではいつ終わるのか、とも考えたが、そのうちに慣れてきた。彼は、各地の庚申塚を尋ねる一方、この会と同じように実際に歩き地図で追った末「東海道五十三次」なる厚手の書物を上梓している。
私の場合は「奥の細道」を読むと言ってもしょせん老人の暇つぶしである。A氏の蘊蓄を聞く一方、私は自分なりに自分の世界を作り楽しむように考えた。
「昔の人の書いた文章を読みたい」が会の最初の趣旨であったが、変体仮名は昔はかなの使い方に標準がなかったから、個人個人思いつくままに漢字を当てはめて使う時があった。芭蕉は「す」は「寿」、「は」は「盤」「者」、「と」は「登」、「の」は「能」、「に」は「尓」、「て」は「亭」、「れ」は「禮」、「を」は「越」、「む」は「舞」などであろうか。漢字の崩し字は字ごとにしらべていくが、これも慣れてくる。ほかの物を次には読んでみたいと考えている。
そのうち「奥の細道」が起点となって、いろいろ楽しみだした。それらは通信にも紹介したが、江戸時代のちょっと余裕のある者は句会などして楽しんだ、そもそも俳句とはどう作ればいいのか、考えたことも、私にとっては興味深かった。(961下町、芭蕉所縁の地を訪ねる、997江戸時代の田舎の句会、1026悪党芭蕉を読む、1051五月雨の降り残してや光堂、1116「俳句いきなり入門」を読む)
まだ続いており、次の会で終わるかどうかはわからぬが、私としては先日喫茶店で最後の数ページを読み終えた。読み終えての感想を一つ二つ・・・・
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芭蕉はなぜどこに行っても歓待され、家にまで泊めてもらえたのか。芭蕉の時代は交通の便も宿も少ない時代、江戸から歩いてやってきたものとあれば、ほんのわずかな縁があっただけでも歓迎したくなるのが人情ではなかったか。
A
当時は句会という物が流行していた。そこで俳句を唄いあって、うまいものを食い、飲んで、楽しんだのではないか。俳句は即興性を重んじる、という。つまり今流でいえば洒落の応酬のようなものではなかったか。
B
旅行記録を書く前提で旅をするとするなら今でも行く前にずいぶん調べるだろう。芭蕉もそのスタイルで旅に出たのではないか。それが蘊蓄となってあちこちにちりばめられている。
C
出かけるときは張り切っていたが、北陸路に入って病気にもなり、いやになってきたのではないか。記述がずっと短くなり、俳句もさえなくなってきているように思う。
D
最後は作家となってとにかくヒットさせようとした。
最後に「奥の細道」がどうして有名になったかが興味のあるところ。戦前から学校の教材として広く取り上げられていたらしいが詳しいことはわからなかった。
註 ご意見をお待ちしています。
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