114「柿の話」(11月15日 晴れ)

柿の季節である。柿の木のある風景は実に日本的だと思う。

イギリスやフランスの庭にこんなものが植わっているのを見たことがない。そう思って調べると「柿の原産地は東南アジアの温帯で、中国、朝鮮半島や日本が特産地です。学名にはkakiと日本の呼び名がついています。」などとあった。

また「パーシモンはアメリカ東部原生のごくちいさいアメリカガキをさすので、いわゆる日本の柿とは種がちがいます。ゴルフのクラブのパーシモンはアメリカガキの硬い材からつくられています。」

ぐずぐずになった柿が好きである。熟柿という奴である。

口の中に入れて、お菓子みたいな甘みを楽しみ、舌先に種をのせてその周りの肉をぺろっとはがして食うとなんともいえぬ味がする。

昔は我が家の庭にも柿の木があった。

秋も深まるとうまそうになるのだが、明日にでも取ろうと思っていると、鳥にやられて悔しい思いをしたことがある。あいつらは本当に食べどきというものを良く知っている。もっと悔しかったのは、朝になったら柿の木が坊主になっていたことがある。夜のうちに泥坊がはいりこみ、ごっそり持っていってしまったのだ。

柿にはいろんな種類がある。大きく分ければ甘柿と渋柿、前者には富有柿、次郎柿、筆柿、禅寺丸、後者には甲州百目、西条柿。我が家のは何だったか、覚えていない。

お前も柿か、というような柿もある。以下は陶芸で一緒のNさんに教えられて現物を見たり、インターネットで調べた結果。

我が家の近くに柿木図書館がある。柿木はこの辺の昔の町名から取ったものだが、その町はきっと柿の木が沢山生えていたのだろう。その玄関前にマメガキというのが植えてある。11月中旬現在、黒っぽいほおずきくらいの大きさのみを一杯つけている。

看板にこの木は、昔、青い実を柿渋を取るために利用した、ということでこの辺には多かったらしい。霜のふるころ黒紫色になると食べ頃という。少し早めだが、二つほど取ってきて実を引っ張ってみた。中にはちっちゃな種がぎっしり詰まっているが、皮と種の間にある果肉の部分はあの熟柿の味わいで悪くない。柿木図書館ではこの柿を図書館のシンボルにした、と書いてあった。

にたような柿にリュウキュウマメガキというのがあるという。また盆栽などに使われる中国中部原産のロウヤガキというのがある。実は柿らしい色はしているが、小さい。

ところで柿はそのまま食べてもおいしいが、干柿にしてもおいしい。干柿はすでに「延喜式」の祭礼用の菓子として使われているというから古い。貯蔵が可能だったから、飢饉のおりなどに非常食として用いられた。乾燥によって果肉の糖液が表面にしみだした白い粉の成分は果糖とブドウ糖。砂糖のない昔、中国ではこの白い粉が砂糖代わりに集められて「柿霜」と呼ばれ珍重された。日本でも千利休の茶菓子に用いられた。

最後に柿は熟柿とともに秋の季語。

柿食えば 鐘がなるなり 法隆寺  子規

明治28年10月、子規が奈良法隆寺を訪れ、境内の茶店で休んでいたところ、奈良名産の御所柿が盆に盛られてでてきた、このときの情景を歌った、という。

柿食えば 君が恋しい 今川町   湖南

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