1155「結婚式に呼ばれる」(3月31日(土)曇り)
イギリスのチェスターで一緒であったA君の、御長男の結婚式に呼ばれた。
ひどくうれしかった。この年になると、呼ばれる?のは、なぜか葬式ばかり、暗くなってしまう、そこに行くと結婚式、若い人の前途を祝福するわけで嬉しくなる。ただし若い人から見れば、自分たち中心の結婚式をやりたいだろうから、老人が呼ばれるのは希。
1989年3月からほぼ2年間、会社からシェルのS研究所に派遣された。亡くなったカミサンが、もうその頃はこうげん病がかなり進んでおり、単身赴任となった。A君は日本のシェルとイギリスのS研究所の橋渡しの様な位置づけであった。向こうでいろいろ研究しこちらと情報を交換していた。合気道を教えていたから、英国の友達も多く慕われていた。
私の住居は留学制度が出来てから、会社が購入してくれていた。広い家に一人住まいであった。チェスターと言ってもだいぶ町からはずれていた。朝起きると、家の前の牧場の大きな木に、鳥が群がり啼いていた。向こうに勤務することになり、あわてて運転の練習をし、研究所までは車で通った。
狭い社会であるから日本人だけで集まるときが多かった。A氏一家、私より先に派遣されていたB氏一家、それに前から付き合いのあった医者のC氏一家であった。お子さんたちが二人づつ全部で6人、一番大きかったのが、今日晴れの日を迎えたA君の御長男で、確か8歳か9歳、学校に上がったばかりか。身長も大きく、子供たちが集まると中心になっていた。
赤坂の日枝神社での神式結婚式。
新郎が神前に現れ、新婦をお父さんがリードしてヴァージンロードを進む。新郎30歳、紋付羽織で堂々としている。新婦31歳、なかなかの美人、赤い模様の和服に身を包み白い角隠し。神主が神さまに二人の結婚を報告し、新郎が結婚の決意を述べる。三々九度を飲み、雅楽が舞われ、最後は両家のかための杯。神式ではあるが、ところどころに現代流を取り入れている。
披露宴は「つきじ治作」で行われた。私は知らなかったが、随分立派な料亭、聞けば昭和6年創業で、もとは岩崎弥太郎の別邸であったとか。水炊きが有名らしい。広大な庭園は樹木で覆われ、池にはそれは見事な赤い錦鯉が悠然と泳いでいる。
4時半から披露宴。会場入口には、新郎新婦がパリのエッフェル塔の前で撮った幸せそうな記念スナップが、拡大展示されている。席次表の後ろに二人のプロフィールが書いてある。二人の思い出の場所・・・・七里ヶ浜、アマルフィ、スイス・・・・だいぶ交際を重ねているらしい。
招待客は100人を越える。親族も多いが、新郎の大学の恩師と仲間、趣味の合気道や旅行の仲間、勤め先の上司や仲間、幼馴染、チェスターの仲間、新婦側はT市市役所に勤めていたらしくその関係者、友人、新婦の御父上が大学で教えているとかでその関係者、セイロンや韓国の女性までがその国の正装で来ていた。
酒樽の鏡開きで披露宴開始。これは新郎新婦とご両親が一緒になって行った。新郎の会社の上司が祝辞を述べるが、新郎は主として中国で大きなテレビパネルのようなものの売り込みをしているらしい。「彼はすでに何十億単位の売り上げになる商談を三度成功させている。」「不思議に彼が関与する商談は成功する。」など持ち上げている。新婦の新郎の好きなところは「まっすぐなところ」というコメントと重ね合わせれば、彼は、どのような相手にも好感をもたれるのであろう。
周囲のおばさんが囁く。「新婦の趣味にフラと書いてあるけれど、フラダンス?フラメンコ?フラフープ?」お色直しで出てきた新婦が、仲間と共にフラダンスを披露した。新郎も最後にピアノを披露したが、新婦の方がだいぶ年季が入っている?仲人はなく、司会の女性の音頭に従って、式は楽しく面白く進んでゆく。傑作は合気道の紹介。待ち合わせている新婦を暴漢もどきが襲い、それを遅れて登場した新郎が助けるというもの。新郎に投げ飛ばされる暴漢役が、先輩に同僚というからなかなか楽しい。
「我我の頃の結婚とはだいぶ違いますなあ。」と隣席の同年配の新郎の親戚という男。関西から駆けつけてきたらしい。彼等流は最期まで続いた。鏡開きで始まったが、ウエデイングケーキの入刀や新郎新婦が席の蝋燭に火をともすキャンドルサービスもやりたかったらしく行われた。ご両親への感謝のメッセージも読まれた。最後の挨拶は、普通新郎の親が行うものだが、新郎はそれが終わった後、私から一言とさらに付け加えた。
我々の古い常識から見れば少し変わった結婚式だが、二人で懸命に出席者を歓待し、自分たちをアピールし、未来を築いてゆこうという強い意志を感じ、とてもよい結婚式、披露宴であった。私は自分の50年近く前の亡妻との結婚式を思い浮かべた。
彼等は四月になってからイギリスに旅行する、そのときにはチェスターにもゆくのだ、と言っていた。若い二人にエールを送りたい。
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