1177「定年後の生活」(6月24日(月)曇り)
会社時代の後輩、A君が「先日、同期のB君にあったが、彼も阿笠さんに会いたがっている。一度3人で会うのはどうか。」とメール。いろいろあって、今日わが家に二人が来ることに成った。後輩が我が家に来る、のは大変うれしいけれども、食事を用意する、家の中を整理し、見場を良くする等それなりの準備がいる。ガールフレンドのCさんにそんな話をすると「私が毎日行くときには、掃除なんかしていないのに、この差は何かしら。」と一言言われ「でも、そんな風に対応できるのは、まだあなたが若い証拠よ。」と妙な形で励まされた。
彼等は、約束の時間に到来し3人でパスタの食事などをし、楽しい時を過ごしたが、彼等が帰った後、改めて彼等はなぜ来たのだろう、と考えた。彼等は私より7歳から8歳年下。定年後4-5年務め、いよいよ会社生活からおさらばするときが来た。ならばどのように過ごしたらいいのだろう、と一番遊び好きに見える私の話を聞いてみようと考えたらしい。私はラジオ体操や習字の話をし、適当なことを話したが、本来はどう話すべきであったか、私の定年後の12年を振り返って改めて考えてみる。
第一に認識しなければいけないのは、サラリーマンにとって会社を辞めた後の10-20年は人生の一番のゴールデンタイムという事ではないか。まだ体力がある、財産も少々だがあり、収入も少なくとも年金がある、子達はおおむね片付いたか、成長して自分独自の世界を作っている、妻との関係はいろいろだが、うまくいっているケースが多かろう、しかし性的にははや没交渉、それぞれ独自の世界を持ち、そちらに余念がない・・・・・。つまりあなたはいまやすべてから解放されたうえ、体力とそれなりの資産があり、自由なのである。
しかし一方で認識しなければならないのは、ゴールデンタイムには、必ず終わりが来るという事。ある日突然ゴールデンタイムが終わりをつげ、お墓行きとなればいいが、こればかりはその時になって見なければわからぬところも多い。
自由というのはなかなか困ったものである。やりたいことをやれ、と言われても思い浮かばぬ・・・・・。しかし結論から言えば、それは各人各様、決まったレシピなどなく、自分自身で見つけねばならぬ。
私の税理士は80歳を越えたおじいさんである。実際の仕事は後を継いだ息子や部下に任せているけれども事務所には毎日出ている。訪問すると「働き続けることが若さを保つ秘訣です。」という。これも真実であろう。しかしある友人は「定年後も、家族のためを思って一生懸命働いた。あるとき気が付くと、私の貯金がない。妻に聞くと「私たちが思い切り使ったわ。」馬鹿馬鹿しくなり、僕も遊ぶことにした。」と語った。それ故、税理士のような仕事と比べ、義務感だけで働く仕事だったらどうだろう。日々を碁会所にでも行って毎日過ごすか、デイサービスでも受けるか、晴耕雨読で君子のような生活をするか、金に任せて世界一周でもするか、費用対効果と自分の懐具合で考えるべき問題だ。何しろ、時間は限られているのである。A君が「「プラント会社から海外で働かないか。」との勧誘が来ている。どうしたものか。」と言う。よほどの良い条件でもなければ、と私はコメント・・・・。
各人各様に自分のゴールデンタイムの過ごし方を見つけるが、一つ留意すべきは目的感の喪失である。もともと人生に目的などない、と言えばそれまでだが、会社時代は何かそんなものがあるように感じた。業績を上げること、出世すること、家族を養う事等々。しかしこの時期になると目的のないまま過ごすか、あるいは無理に?目的を作ることに成る。
三浦雄一郎はエベレストに登ることを目的にした。そこまでゆかずとも、私の周囲の人は、蝶を集め育てること、全国の庚申塚を訪ね歩くこと、民生委員として活躍すること、合唱団に入り日々声を鍛えること、左派で政治的活動を続けること等、いろいろな疑似目標?を作り、それに邁進している。
さらに多くの凡人はそこまでのめりこむ元気すらない。情熱がわかぬ。そのために酒三昧であったり、ゴルフ三昧であったりする。あるいは私のようにお稽古事をするが、先生と違ってプロ意識、ここでいう目的意識がないから、大したことにはならぬ。何のために、努力の結果がどうなる、と考えると馬鹿馬鹿しくなる。しかしいつも張り切って、好奇心を持ち、何かをしてやろうと欲を持ち続けたい。「人は生かされている。」という言葉が正しいのかもしれぬ。私もそうした凡人の一人。実のならぬ花を咲かせたいとあちこちに首をつっこむ。
最後に素晴らしいゴールデンタイムを過ごすために必要なものは、やはり健康とほどほどの金。そしてそれをベースに作られる自分を中心とした社会空間である。私の場合には、
友が大切と考えている。つき合う社会は広い方がいいと考えている。ある男が若さを保つには一日4人の若い女性と話さねばならぬ、と言っていたが、とてもかなわぬ。しかし人と話すことがなかった一日は送りたくないものと考えている。
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