1207「人間はどういう動物か」(10月19日(土)晴れ)
ちくま学芸文庫、日高敏隆著。他界された有名な動物の権威の先生という事である。全体面白かったが、私には特に第一章「人間とはどういう動物か」が面白く、目からうろこの感じであった。そこのみまとめてみる。
人間と動物:「人間には人間でなければ」という「人間らしさ」があるでしょう。しかし「人間らしさ」とは何なのか。動物学的にとらえると、あらゆる動物はその種によっておのおの生き方が違う。それにしたがって体の構造も皆違ってくる。
直立二足歩行:人間以外の哺乳類は、基本的には皆四足で歩いている。ところが人間は立ってしまった。頭はどうしても上を向いてしまう。手はどうしたらよいかというとどうしようもない。内臓は、まっすぐ立ってしまうとぶらさがりようがなく、すとんと落ちてしまう。これでは生きていけないので何とかしなくてはならない。まずは頭骨の作り変え。脳が脊椎につながりこのままでは何時も首を前に曲げていることになる。そこで頭骨の穴を頭骨の後ろでなく、下側にあけるようにした。内臓を支えるために、骨盤を作り、背骨を少し湾曲させた。背中を曲げるために背骨の骨は台形にした。さらに口がとがって前に出ているとバランスが悪いから丸くする。そのため顎を丸くし、歯の形も変えた。しかも一度ここまできてしまうともう元には戻れない。
毛のないけもの:人間の体毛の数はゴリラやチンパンジーよりも多いが、濃い毛は生えていない。クジラやイルカは生えていない、水生動物だったのではないか、あるいは類人猿から人間になるときに、ノミやシラミにたかられてかゆくて困ったから毛を落としたのではないか、これらの説は否定された。イギリスの学者の説。人類は最初森林に住んでいたが、なぜかわからぬが森から離れて草原にでてしまった。食べる物もタケノコや草の芽から動物を狩って食べることに成った。体が過熱して仕方がない。そこで簡単な方法として毛を少なくしほとんど丸裸になった。ただし不思議なことあり。なぜ髪の毛がいくらでも伸びるのか。性器の周辺に毛があるのか。そこに「性器」がある信号で、それゆえ人間男性はヘアヌードの興味をもつのか?
おっぱいの形:ほかの動物のそれが細長い形をしているのに、人間のそれは丸く美しいものとされる。しかし赤ん坊にとって乳首は短くすいつきにくい。女性にしてみると、自分が若くていい女であることを相手に示したい。類人猿のメスが自分が優れたメスであることを示す信号はお尻である。「サルのお尻はまっ赤っ赤」しかし直立してしまうと後ろ向きの信号は思ったほど効果を発揮しない。いまあるものを使って前を向いたお尻はつくれないか。おっぱいがああなったのは、その結果である。
オスの戦略・メスの戦略:男の方は、女が美しく着飾るのは自分のためと思っているが大間違い。女はそうして男を呼んでその中からいい男を選ぶという事が本当の目的、戦略なのである。選ぶのはつねにメスであって、オスはメスに選ばれるためにいろいろ苦労することに成る。
少子化の論理:自分の子孫をできるだけたくさん残すことを、個体の適応度の増大と言う。そのためにはどれほど利己的にふるまってもよい、ということが生物界の実態であるが、一つ見落とされているのが「コスト・ベネフィット」計算。第三世界では子供は一家の経済力を増す労働力である。しかし先進諸国では子供には高等教育を保証せねばならず、さもなければ嫁の来てもなくなどコストがかかる。親個人にとってみれば、生活の質の低下につながりかねない。
遺伝子とミームの相克:ミームとは「遺伝子」ではなくその人の「名」「存在」「意義」「生き方」「生きがい」のようなもので人間はこちらも後代に残したがっている。結婚して子供(つまり自分の遺伝子)を残すより、面白い仕事をして私のミームを残したい。女の差別的状況はここから発するが、女が自分の生き方を選択して子供を産まないことにすることを責めるのは間違っているだろう。結果として起こる少子化はあくまで個人の問題である。
飽食の理由:草食動物は、食物は探せばどこでも食える。ただし栄養価は低いからいつも食っている。人間は本来こちらに属する「スナックイーター」肉食動物は食物としては不安定だが、手に入ったら十分食え、その後はしばらく何も食わないでいい。人間は今では好みとしてはすっかり肉食獣、しかし体はスナックイーターのまま、その結果が飽食を生む。
概念の形成と死の発見:概念はイヌやチンパンジーでも持っているが言語が無いから概念が整理できない。言語を使って概念を整理すると思想が出てくることに成る。思想を通して人類はいろんなものを発見したが、一番困ったものは「死の発見」である。自分にも死が襲ってくることを認識し、宗教が生まれた。・・・・・以下省略。
その他に第3章「そもそも科学とは何か」も興味深かった。「科学でなにが得られるか」「世の中に真理はない」「幽霊は想像力の欠如の産物」「賢く利己的であること」など。
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