1267「73歳の誕生日」(5月22日(火)晴れ後雨)
24日に73歳。ガールフレンドのAさんが誕生日を祝って、椿山荘でランチをごちそうしてくれた。
前日、女は私の手を見て「爪をちゃんと切っておきなさい。はい、爪切り。」陽気が良くなって小さな庭にも草がはびこる、それを時々抜くために爪が汚れてしまうのだ。
それはともかく、おいしい料理を食べ、あの美しい庭園を散策しながらこの73年を想う。
私は昭和16年生まれ。太平洋戦争が始まった年。
父は東芝のエンジニアで、新婚2年目、横浜に家を借りて住んでいた。
3歳の時に肺炎にかかり、今晩持つかどうかが問題と医者に言われたが耐え抜いた。
平和が続くはずであったが、すぐに太平洋戦争での敗北。
20年に空襲で家を焼かれ、親戚の家に一時的に避難したのち、信州の山奥に疎開した。
私の記憶が始まるのは、空襲で家を焼かれてからである。その前のことは全く記憶にない。何かの書に「鐘の鳴る丘世代」・・・そのころはやった唱歌。
しかしそれ故、私の人生は最低の状態からスタートした。この時代を思い出せば少少の苦労には耐えられる世代。
その後の環境の変化は、人生スタートまでの変化に比べれば、大したことはなかったのかもしれぬ。弟と共に父母に大事に育てられた。後からつくづく思う。人間は生まれた場所でこうも違うのか。
幸い成績もよく一流高校、大学、大学院まで経て一流企業に就職した。能力がなかったのか、我がままであったからか、出世にはあまり恵まれなかったが、それでも定年まで無事勤め上げた。
結婚して子達にも3人も恵まれた。彼等は今ではそれぞれに家庭をもち。孫も5人いる。一番上はもう今年は大学生!
唯一残念だったのは妻が54歳の若さで他界してしまったこと。初孫に木彫りの内裏を買ってやったのが最後であった。妻に先立たれた男は早死にする、と言われるが私は元気。
Aさんのおかげである。中学校が一緒で、一緒に生徒会の役員をやっていた、彼女もご亭主をなくして7年くらいたっていた、もちろんお互いにEtwasを感じていた、などが接近させた。そして妻の死から早くも20年近く・・・・。
母は74歳で亡くなった。50歳代で脳梗塞で倒れ、その後は病院の世話になることが多かった。彼女は「元気なうちに楽しんでおかなければ損よ。」と常々言っていた。
父は妻の死を挟み、母の死から8年後、88歳で亡くなった。癌であった。子として何とか親を越える年齢まで行きたいものだ、と思っている。其れも何とか元気な状態で。
しかし最近体力の衰えを感じる。走ることが困難になってきている。2か月くらい前に転んで少し足を痛く感じた。その後回復してきたがまだ走るとひざに痛みを感じる。眼はまだ裸眼で文庫本が読めるがだんだんしんどくなってきている。運転免許更新の際、静態視力0.4、動態視力0.1と判定され愕然とした。運転免許は更新したが、車は手放した。歯も歯槽膿漏などでだいぶ弱っている。内臓は軽い逆流性食道炎を指摘されている。できるだけ焦らずに食うようにしている。もちろん、あちらも。渡辺淳一ではない。
手もとに高校同期の山登りの会の案内が2通も来ている。大した山ではないが、もし山の中でなにかあったらと恐怖心が先立ち始め、答えを出していない。親父の年齢まで生きたとして、後15年、5000日余り、面白おかしくいきたい、と思っている。これまで経過した年月よりも、これから残ってるであろう年月を気にするようになったのはいつからであろうか。
Aさんと椿山荘をでてカラオケに行った。
昔は歌わぬと言っていたのに、最近彼女はカラオケに凝っている。彼女は耳の病気で大きな音に耐えられぬはず。しかし「ストレスを解消することが耳にも良いらしい。」と意に介さぬ。彼女宅を訪問すると、昔は大学で英語を教えていたから、その学習に余念がなかったが、最近は娘の「キーボード」をもちだし、練習しているではないか。
もっともさすがに私の詩吟入りカラオケは「耳に悪い」と不満であったが・・・・。今日は夕食も我が家で彼女とした。またカラオケ。カラオケ三昧の一日・・・・。もうすこし有意義なことに夢中になれば、との思いもあるが、なぜか気力がわかぬ。
人世とは・・・・・一体何なのだろう?
最近はやりの演歌の一節。「あれをごらんよ、真っ赤な夕日、落ちて行くのに、まだ燃えている・・・・」(南部蝉しぐれ)・・・・我我のことかもしれぬ、燃え続けよう。
(追記)24日。夕食にAさんが赤飯を作ってくれた。私は友人たちとの会合があったが、花鯛を二匹買って帰った。花鯛は真鯛ではないが鯛科で、味は鯛のように美味。やや小ぶりの物が多いそうだ。チダイともいう。塩焼にして食った。
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