1292「徒然草再読」(8月24日(日)晴れ)
古文書研究会で一人が「徒然草を読んだ。なかなか面白い。」とその一部を開陳していた。
昔大体読んだが「それならおれも再読してやろう。」と妙に対抗心を燃やした。
私の徒然草は徒然草詳解。明治書院、昭和29年書簡発刊。著者は明治5年生まれの内海弘蔵、同じく25年生まれの橘宗利。どちらももうお亡くなりになっているに違いない。高等学校の時に古本屋で求めたものである。5日かけて読んだが、読み終わる頃には本がばらばらになりかけるほど・・・・。各段ごとに本文と下に現代文、その後に用語の解説、文法解釈さらにコメントまでついている。今更受験ではないから、本文を読み、ときどき日本文を参照。
吉田兼好は1283-1352位とあるから鎌倉時代末期の人。神祇官をだす神職の家、卜部家の出身で後二条天皇などに仕え、従五位下まで昇進したが、30歳―40歳で出家した。その後は諸国を旅したり、吉田の神竜院や神護寺に寄宿、晩年は伊賀国見山の山麓に庵を組んで過ごした。死後彼と親交のあった今川了俊が兼好に仕えていた童、命松丸の協力を得て在世中の歌、作りもの等を集めてまとめたものという。
「つれづれなるままに、ひぐらし硯に向いて、心に移るよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」・・・その通りの書。
室町時代中期以降、高く評価され、現代においても文体や内容が文学的に評価されているだけでなく、当時の社会風潮などを知るための貴重な史料ともなっている。
その時代にしては恐ろしいほどの知識人であった。仏教に造詣深く、儒教、老僧の額にも通じ有職故実に明るく、弓馬の術に優れ、和歌は平安和歌の四天王と呼ばれるほどであった。それだけになぜ出家したのか、というところが気にかかるが女性関係であったとの説もあるらしい。また出家して生活の手段はどのように得ていたのであろうか。
事実談あり、伝説的異聞あり、有職故実の問題、修養の問題、趣味の問題、世間人情の考察、自然の風景の観賞、世渡りの話など多岐にわたっている。というよりその時々に応じて書き散らしたものを後でまとめた、という感じがする。もっとも随筆の書き方は此れが基本という感じもするが・・・・・。本を読むとこれはというところに折り目を付ける。そこから拾いだすと
35段 手の悪き人の、はばからず、文書き散らすはよし。見苦しと人に書かするはうるさし。
135段 君の質問することくらいなんでも答えられる、賭けようという男に、子供の頃「馬のきつりやうきつにのか、なかくぼれいりくれんどう」と聞いたが、これは何の意味だ、と聞く話。応えられるわけが無く賭けに負けた。
152段年寄りが内裏に参内すると、内大臣が「あなたふたふたしのけしきや。」とほめるが、資朝卿は単に年を取っただけさ、と言う。後日彼は内大臣に「とんでもなく老いさらばえ、毛のはげた犬を見せて「この気色たふとく見え候」という。
高等学校時代は受験の事ばかりで一顧もしなかった内海弘蔵の序を改めて読み返す。彼は「自分はこの書の作者をわが国には珍しい一大趣味論者と思うのである。…徒然草を・・・・一大趣味論と思うのである。」としている。基本的には
@ この世は実に無情なものである
A ところで我々は誰もこの世で仕上げねばならぬ人生の大事を持っている。
B 下らぬ世のしがらみから逃れてこれに一直線に努力すべきである。
として、自分自身の生き方として
@ 長生きはしたくない、40に足りないくらいで死にたい
A 子どもという者はない方がいい
B 妻というものはもつまじきものである。
等としている。ただしかし兼好はそうは書きながら、内心では華やかな世の中にあこがれ、恋の一つも語りたかったのではあるまいか、と推測する。彼が言う人生の大事とは出家することうを言うのであろうが、僧であるけれども仏教はそんなに信じていなかったと思う。一番最後の243段によく表れている。現代文をそのままコピペすると
「私が8歳になった年、父に尋ねて言うには「仏様はどんなものでしょう。」といった。父が言うには「仏様は人間がなったのさ。」と。そこで又尋ねた。「人間はどうして仏様になったのでしょうか知ら。」と。すると父が又「仏様の教えによってなったのだ。」と答えた。又尋ねた。「その教えました仏様を何が教えましたか。」又答えるには「その仏様もやはり前からおられた仏様の教えによっておなりなされたのだ。」と。又私は問うた。「その教え始めた第一の仏様は、どんな仏様だったのですか。」といった時、父は「空からでも降ったか、地からでも湧いたかな」といって笑った。「問い詰められて答えきれなくなりましたよ。」と人々に話して面白がったことであった。」
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