1300「大学の研究室の会合」(1012()晴れ)

 

私は、大学時代Y先生のもとですごした。そのころには珍しくセメント、ガラス、陶器あるいはアルミナなどの鉱物を研究する無機化学の研究室であった。

先生にはいろいろお世話になったが、昭和51年、58歳の若さで亡くなられた。その研究室の集まりが、今日渋谷のホテルで開かれた。私は諸先輩も多いことから久しぶりに背広姿で出かける。懐には名詞まで用意する。登録メンバーが45人、そのうち出席が19人。こじんまりした会であった。

足腰の弱ったお年寄りにエレベータで親しげに声をかけられた。S先生であった。たぶん私より一回り以上歳上と思う。その先生の研究の紹介が日経新聞記事や学術誌に書かれた論文をベースに行われた。

平城京は710年に始まり、784年に長岡京へ遷都して幕を閉じるのだが、先生はそれが水銀公害によるものだ、とする。奈良の大仏を金メッキするために大量の金が使われた。水銀に金を投入して合金を作り、それを大仏表面に塗布したのち、内部から炭火で加熱して水銀を飛ばしたのである。この蒸気が平城京に流れこみ公害を引き起こし、これがひどくなって遷都せざるを得なくなったという。

Y先生が亡くなられて以降の方はいないから、みなもうお年寄り。健康に不安を抱える人も多いようだ。社会的には現役を引退しているか、現役でいれば教授であるとかどこかの長になっている人が多い。

民主党政権の時に蓮舫議員がスーパーコンピュータ開発について「日本が一番でなければいけないのですか。」と質問し、科学開発関係の予算が削られた。しかし自民党政権になって、「再び日本一」の掛け声のもと官民共同プロジェクトが動き出そうとしている。その中の一つに飛行機の出す二酸化炭素を減らそう、そのために機体を今以上に軽くしようとするプロジェクトがあり、日米共同で動き出そうとしている。なんとセラミックスでエンジンを作るという。一人がその座長を務めていると明かしてくれた。興味深く聞いた。

恒例でそれぞれ現況報告をするのだけれど、余生を送るという感じの人が多い。

a先生は、いまは社交ダンスが趣味である、と言われていた。この前はどこやらでデモンストレーション演技を披露したとか。

b氏は、私より1歳年上であるが、博士で日立をやめた今、技術コンサルタントのような仕事をしている、但し給料は現役の時の10分の1以下だなど言っていた。しかしこういうのは健康にも良いのだろう。いまだに1日以上入院したことが無いとか。

私より2年後で研究室を卒業したという男も、とっくに引退しているらしく「歌に興味を持ち、レッスンプロに長いことならった。自分のすきな曲を歌ったものをCDにした。」曲名も紹介してくれたが「今日でお別れ」くらいしかわからなかった。

同期のc君は、1年間に10回も海外旅行をする、と言っていた。其れだけの元気があれば結構。また別の機会にお茶でも飲みたい・・・・・。

私も高級なことをしているわけもなく、ラジオ体操やよく歩いて健康を維持していること、通信の話などした。そして「「生物的管体における空気の挙動」について研究しています。」皆ポカンとしたから「なに、カラオケの練習をしているだけですよ。」

b氏、c君、一期下のdさん、7年先輩のe氏などが近くの席で雑談にふけった。しかし仮にも工学で修士や博士になった人たち、話頭は技術中心。

LED開発に与えられた今年のノーベル賞は実用性があり、我々の生活に革命を引き起こすものであり素晴らしい。今までの賞でこんなに実用的なものがあっただろうか。」

この部分は周囲の者は大体同意見であった。「しかしあの17歳の少女に与えられたノーベル平和賞はいただけない。」こちらは判断しかねる。「政治的な意味合いが強いものなんでしょう。」すると「しかし平和に貢献というのなら安倍首相にもどうですか?」など議論をかき回すものも出た。

小保方さん話も出た。「誰も擁護してやらないのかなあ。冷たい。」「他にもコピペした学生はいるのにそちらは注意だけでお咎めなしだ。」「コピペは我我の時代はコンピュータが無かったからできなかった。早稲田のあの言い方で、博士号を返せ、などと言ったら、我我の中にも危ない者がいるのじゃないか。」「科学技術なんて間違った発表ばかり、しかしそれを積み重ねるうちに真実が出てくるのだ。」などの意見が多かった。

「石英と水晶は結晶学的にはどう違うのか。」この前ブラジルの真っ白な砂浜に行って疑問に感じたことでる。同じである、というのが答えの様であった。

大学卒業してから約50年、その間には多くのことがあった。直接お世話になったf先生は突然大腸がん、同じ会社に入り出世頭であった男も突然訃報が入った。今まで元気で生きてきたことを喜びこれからの一日一日を大切にしたい。あのころは至らないところだらけであったが、私も純粋で馬力はあったなと懐かしく感じながら帰路に就く。

 

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