1312「「資本主義の終焉と歴史の危機」を読む」(1120日(木)晴れ)

 

書店でこの書を取り「資本主義が終焉を迎える?アベノミクス総選挙、この行く先はどうなるのだろう、パラパラとめくり「中間層が没落してゆく」というコメントを見て買う気になった。著者水野氏は三菱UFJモルガンスタンレー証券チーフエコノミスト、内閣官房内閣審議官等を経て、現在は大学で教鞭をとっているらしい。

資本主義が終焉の意味は「初めに」に明らかにされている。以下抜き書きしながらまとめる。

「資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンテイアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。「アフリカのグローバリゼーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言っていいでしょう。もう地理的なフロンテイアは残っていません。」

「また金融・資本市場を見ても・・・・・「電子・金融空間」の中でも、時間を切り刻み一億分の一秒単位で投資しなければ利潤を上げられないことを示しているのです。

日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利はおおむねゼロ、十年間国債利回りも超低金利となり、いよいよその資本の自己増殖が不可能になってきている。

つまり「地理的・物的空間(実物投資空間)」からも「電子空間」からも利潤を揚げられなくなっているのです。・・・資本主義が終わりに近づきつつあることが分かります」

フロンテイアが消滅し、終焉を迎えた資本主義の延命策として導入されたのがアメリカの「電子・金融空間」、ITと金融自由化が結合して作られる空間の事である。資本は瞬時にして国境を越え、キャピタル・ゲインを稼ぎ出すことができるようになったが、それでさえも行き詰った果てがリーマンショックである、というのである。

「先進国の資本家たちは「電子金融空間」という新たな空間を作り、利潤極大化という資本の自己増殖を継続しています。しかし「電子・金融空間」で犠牲になっているのが庶民です。・・・・・・グローバリゼーションが加速したことで雇用者と資本家は切り離され資本家だけに利益が集中しています。グローバリゼーションの帰結とは、中間層を没落する成長にほかなりません。」(40p

著者によればアメリカのシェール革命も同様の位置づけの様で「覇権国としての寿命は少しは伸びるかもしれません。・・・しかしそれはたかだか100年程度の延命策にすぎません」(49P)

またフロンテイアであった新興国は今までの西欧のように成長を続けられぬ、と説く

「新興国の成長モデルが輸出主導にあるという点に求めることができます。(輸出の対象たる)先進国の消費ブームは二度と戻ってきません」(59P)

「近代化とは電気やガソリンを使った快適な生活だ、という事ができます。中国が近代化に成功して今のOECDの所得水準に達したら・・・・インドや、インドネシア、アラブ世界で同じことが起こったとしたら・・・・七十億人のエネルギー消費を賄えるだけの化石燃料は地球にないのですから全世界の近代化は不可能です。」(88P

そしてこれを越えることはなかなか難しい、とし、答えを著者は見いだせぬ様子である

「グローバリゼーションが進み、資本が国境を越えて自由に移動できるようになった1955年以降は、そのように幾らマネーを増やしても物価上昇にはつながらない。マネーの増加によって資産価格が上昇、膨張することになります。・・・・資産バブルの果てはそのバブルが崩壊すれば、巨大な信用収縮が起こり、そのしわ寄せが雇用に集中するのはすでにみたとおりです。」(118P

「ひるがえって現在の日本も、インフレ目標政策(第一の矢)、公共投資(第二の矢)、そして法人税の減税や規制緩和(第三の矢)など総動員して、なんとか近代システム(成長)を維持・強化しようと躍起ですが、その過程で中間層の没落が始まっているのです。」(126P)

以下は私の感じ。著者のいう定義での資本主義が終焉を迎えているところかもしれない、しかし資本主義は形を変えてやはり進展してゆくのではあるまいか、と感じる。

一番疑問に思う事は、民主化の進展により、雇用者と資本家が重なり合ってきているのではないかという点である。雇用者であっても「電子・金融空間」を利用し、年金を運用し、利潤をあげる世の中になってきている、むしろアメリカの一部の経営者のように超高額の報酬を得ることがおかしい世の中になってきているのではないか。マネーの増加が資産価格の上昇にのみ寄与、という考えにも疑問を呈する。雇用者に回さざるを得ないだろうし、それが国家の為替政策の戦略として寄与している点にも注意しなければいけない気がする。エネルギー問題の議論も、それ故に自然エネルギーや原子力が議論され、省エネルギーが勧められているのではないか。人間の知恵を軽く見てはいけないと思うのである。タイトルにもう一つついている歴史の危機は言い過ぎ、歴史の必然のように福島原発事故を言うのはおかしいと感じる。

しかし時代の見方を知る上で参考になり、一読に値する本かもしれない。いかがですか。

 

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