1323「宝石のよもやま話」(1230日(火)曇り)

 

28日に詩吟の忘年会があった。宗匠は御徒町で宝石商をしているので、日ごろ疑問に思っていることを聞いてみた。

「昔ガールフレンドに御徒町で真珠のネックレスを買った。8ミリ玉で確か60万円くらいのものが30万円でいい、というので買ってしまった。ところがTVの広告などで見ていると8ミリ玉以上のものがその10分の1くらいの値段で出ている。どういう事だろう。」

「本当の天然ものであればその位してもおかしくない。しかし養殖物も人造のものもある。」

「友人が炭酸カルシウムの溶液に核になる物質を入れ振動させてやれば真珠なんていくらでもできる。歳によってはやる大きさがあり、はやらなくなったものは一箱いくらで売られる、と言っていたが本当だろうか。」

「その通りである。天然ものと区別がついたが、今では不整形も黄ばみもみな演出できる。それ故専門家でも区別は難しい。天然ものであるかどうかは業者の良心くらいしか信じられぬ。」

家に戻って調べると、貝、ガラス、プラスチック等の核に真珠箔(魚の鱗や浮き袋から抽出したグアニンにアセトン、酢酸アミル、セルロイド、ニトロセルロース、卵白などを混合した塗料)を塗り重ねたもののようだ。真珠という名で呼ぶとまずいのかアイパール、花珠、貝パールだの分かりにくい名前を付けて売られている。

「昔台湾に行って、スタールビーの指輪を買った。スタールビーはルビーの結晶軸方向に不純物の結晶が析出し、それが星のように光って見えるのだと聞いた。ところが台湾のそれは値切ってゆくとどんどん負けて、2000円台くらいになってしまった。これは人工的に幾らでもできるのではないか、と感じたが本当か。」

「本当だ。酸化アルミニウムの結晶体をコランダムと言うがそれに操作を加えていけばできる。色も最近は着色技術が進んでいて思いのままだ。ただ脱色するのが欠点だが・・・・。」

純粋のコランダムは六方晶系で、おおきな酸素原子の配列の隙間にきれいにアルミニウム原子が配列されている。アルミニウム原子がクロム原子に置き換わるとコランダムはピンク色になり、2%くらい入れ替わると全くのルビー色になる。クロム原子でなく3価の鉄原子に置き換わると青色に発色する。これをサファイアと言うがルビー色でないものすべてをサファイアと呼ぶときもある。

チタン結晶の一つ、ルチルの針状結晶インクルージョンを底面にもつ石を結晶方向にカットする。石に入ってきた光がルチルに反射して焦点を結ぶようになり、光の筋が発生する。これをスター効果と言い、スタールビ―、スターサファイアなどがこれにあたる。スタールビーは一時濁った色のルビーにスターを発色させたものがはやったが、最近では透明のものが出てきている。台湾で得たものはどうやらこれらしい。

宝石商氏との話はそのうちダイヤモンドに移った。ダイヤモンドは上記の二つほど容易ではないが、高温高圧合成(1,200 - 2,400℃、55,000 - 100,000気圧)、化学、熱、プラズマなどを用いた気相成長法などでできる。すでに、フロリダ州に本社を置くジェムシス社は自社が開発した1.0 - 1.5カラットの無色や黄色の合成ダイヤモンド宝石を販売しているとか。天然ダイヤ業界にとって脅威になりつつあり、そのうちダイヤの価格は暴落するかも・・・・。

キュービックジルコニアはジルコニアにイットリウム、カルシウム、マグネシウム、ハフニウムなどを4 - 15%程度添加した安定化ジルコニア。屈折率がダイヤモンドに近く、硬度もコランダムほどあるいわゆる人工石。一般の方ではダイヤモンドとの差が非常にわかりにくいのでダイヤモンドの模造品としても利用されている。こちらは非常に安価なうえ、添加物によって赤、橙、青、緑、ピンク、琥珀色のものなどが得られる。こちらも素人はダイヤモンドと区別がつかないであろうから、本物らしくプレゼントすれば女性は大喜び?

私は大学時代鉱物や陶器の研究室に属し、ベルヌーイ炉を用いてムライトという、コランダムとガラスのあいのこのような鉱物を作ることに専念していた。ベルヌーイ法は原則として、微細な粉末原料を酸水素炎を用いて溶融させ、液滴をブールへと滴下して結晶化させるという操作を含む方法で、今日でもなお広く用いられている。

そのころ、ようやくエメラルドの合成が行われた、と話題になったが、考えられないくらいに技術は進歩してしまった。今では人工的にできない宝石なんてほとんどないように見える。人口サンゴまであるというから、中国人の好きな紅サンゴも案外近い日に合成できるのかもしれない。

最後にエンゲージリングがダイヤモンドという風習は1930-40年代アメリカで関係者が一大キャンペーンを行った結果、定着したものだそうだ。それまでは色のついている石の方が好まれたとか。そう相手を信じ込ませれば、キュービックジルコニアでも人工ルビーでも構わないのかもしれない。要はあなたの腕次第?

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/