1335S教授の最終講義」(217日(月)雨)

 

S教授が、10年以上勤めた女子大を去ることになり、其の最終講義が行われ、会社で同期のa君に誘われて弟と一緒に聴いてきた。はっきり分からぬが100人以上、しかも女子大にも拘わらず、多くの男性が押しかけていた。女子大生も多く協力しており、花やぎ、盛会であった。

私が、彼を初めて知ったのは大学でロシア語に挑戦した時のことであった。聞いてみると彼は私より3学年若く、高等学校が一緒であり、しかも弟と同期であることが分かった。

私は、昭和42年にガス会社に入社したが、なんと彼が新入社員として一緒であった。

3年も違うのに一緒になってしまったのは、私が大学院に2年行ったこと、優秀でない私はちゃんと?1年浪人したことが影響したのである。

入社して間もなく、彼も私も結婚した。その彼の結婚式の司会を務めた。今となってはもうすっかり忘れたが、今日何十年ぶりに奥様におあいして「あの時は式を盛り上げてくださって・・・。」と言われた。随分ひどい司会であったが、うまい言い方をしてくれたのであろう。

彼は計測畑に進んだが、数年のうちにガス管のコンピュータによるネットワーク解析を行って頭角を現した。少少高い圧力でガスを送っても導管を流れるうちに圧力損失を起こし、末端では低い圧力になってしまう。そこでガス会社は将来にわたって、その地域でどのくらいのガス需要が起こるかを想定し、それに見合う口径のガス管を新設する。ガスがどのくらい圧力を損失するか計算するかは計算式がある。しかし現実にはガス管はループになっているから地点には二カ所、三カ所からガスが流れる。実際にはどのくらいの口径のガス管をひいたらいいのか。圧力の平衡計算になり結構ややこしい。ましてやそれをネットを作っているガス管網全体の話とあっては・・・・・。これを彼は計算機を使って短時間で解析する方法を示したのである。今思えば懐かしいTOSBAC3400という計算機を使ったとか。

しかもこの技術は、やがてガス会社全体のガス管網に応用され、30000枚の導管図面全体が計算機で管理されるようになった。当時行われたガスを5000kcalから11000kcalの天然ガスに切り替える作業においても大いに利用された。

更にこの技術をベースに、道路の情報、ガス会社故に知っている各家庭の所有器具、家庭内配管の情報、それらを逐次管理するシステムなどが加わった。少し専門的に言えば「導管図面、画像情報を階層化データベースに登録し、ネットワーク解析、3次元モデル等の各種アプリケーションを開発、日本で初めてGIS(地理情報システム)を具体的に実施」ということになろうか。

さらに建設省の道路管理システム(東京並びに十政令指定都市の道路上のガス、水道、下水、電話、電気の地理・画像情報をコンピューター管理するシステム)にも研究成果が具体的に適用実施され、文字通り日本のGIS発展の土台を構築したのである。

女子大に移ってからも情報システム論など各種の講義を担当し、社会情報学部長になる傍ら、GISロボットの試作、開発などに取り組んだようだ。そして3月で70歳、ようやく定年を迎えた。これらの功績のおかげで彼は私には分からぬいくつもの賞を受賞した。

彼は少し変わったところがあった。会社でも自分のやりたいことがあると、あいている会議室等に忍び込み、仕事を始める。そして時に私に電話をかけてよこし「今時間空いてる?お茶でも飲みに来ないか。」・・・・そんなことでよく雑談をした。そんな彼から「実はアルゼンチンタンゴにこっている。」と打ち明けられたのは、私が55歳くらいの頃であったろうか。今日聴いたところ、奥様が好きで彼を引き入れたところ、彼の方が夢中になってしまったとか。そして「俺は会社を辞める。」と聞かされたのは、私の定年も近くなってからである。この女子大の募集に応募し、何百人の候補者の中から見事選ばれた、とのことであった。

女子大が弟の家に近かったこともあり、いつの間にか、暮に3人で集まり会食をするようになった。お互いに進んだ道は違ってしまったけれども、よもやま話で一時をつぶす。彼のアルゼンチンタンゴに刺激され、弟はサルサを最近始めたそうだ。

彼は最後に特に若い人向けであろうがこんなことを言った。

@    人生において人との出会いが非常に重要である。気心の知れた人との出会いは特に大切にしなければならない。

A    仕事を達成するためにはあきらめない精神が必要だ。Never give up!

B    人生は常にチャレンジしてゆくことが大切である。

退職し、自由の身となった彼は、あのアルゼンチンタンゴに加え、イタリアオペラ、俳画、アルゼンチンスペイン語などに挑戦しているという。アルゼンチンスペイン語は東京オリンピックでガイドをやるのだ、と宣言していた。素晴らしい彼の人生に乾杯!

 

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