1336「ピケテイの素人コメント」(2月19日(木)雨のち曇り)
フランスの経済学者ピケテイの「21世紀の資本」という本が話題になっている。700ページを越える学術書にもかかわらず、アマゾンの総合売上ランキング1位に躍り出たという。しかし私はもうすぐ74歳、そんな厚い本を読むのはしんどい。書店で探すと週刊東洋経済が「ピケテイ完全理解」と銘打ち「世界的ベストセラーが20分でわかる」と副題・・・・これ、これと買ってきた。以下はその抜き読みによるピケテイ論。理解不足のところはご容赦を。
「資本主義は富や所得の格差が自然と大きくなる構造的矛盾を抱えている。二つの世界大戦と累進課税の導入によって、いったんは縮小した格差だが、80年代以降に再び拡大し始め、ほおっておけば今世紀中には18-19世紀の欧州のように、相続財産が人生を左右する世襲型の格差社会に戻るという。」「とくにこの傾向がアメリカで著しい。」
彼の主張の根本は「株や不動産などへの投資による「資本収益率は(r)は経済成長率(g)を常に上回るという歴史的事実があり「r>g」が根本的な力となって、一度縮まった格差は再び19世紀以前の水準まで戻る可能性がある。」
このことは株、不動産など多くの富を所有する富裕層の方が、投資余力のない平均労働者がせっせと働いて得られる所得の増分より大きなリターンを得られることを意味する。
これが所得格差に結びつく理由を彼は三段論法で
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低成長と高貯蓄率で資本/所得比=貯蓄率/経済成長率が増加する。
A
資本収益率はさほど下がらず、資本所得が拡大
B
資本所有は極めて遍在するため、格差が拡大する
つまり何かのきっかけで資本を得た者は、効率よくそれを増やし、富裕層の仲間入りをしてゆくが、それができぬものはいつまでも貧乏生活に甘んじなければいけない、という事か。
その対策として国際的な累進課税を提案している。もちろん、一国が資本の累進課税を開始すれば、富裕層の資産は海外に逃避するだろうし、すべての国が一斉に課税することは非現実的だ。タックスヘイブンなど抜け穴も残るに違いない。著者も空想的発想とする。しかし一方で国際協調の課税に動かないと、保護主義や資本統制の台頭を招くと警告し、経済の効率性と公正さを両立させるためにも資本課税が必要だとする。
彼の考えに対する反論が「鳴り止まぬピケテイ批判」として掲載されている。
「世界的な資本課税は資本主義ではない」、「最も成功している市民への法的、政治的、制度的な敬意と支援が無ければ、社会がうまく機能するはずがない」、「資本について何も語っていない。どんな力がr>gという矛盾を生み出し、それを持続させるのかが問題だ。」、「格差を考えるうえで最も重要な制度的要因を無視している」、「資本収益率や貯蓄率などにおける大胆な単純化が前提になっている。それらを取り除くとピケテイの主張は推論の域を出ていない。」
それぞれの反論は掘り下げて行くと、ピケテイ氏が正しいかどうか判断が難しく感じられる。しかしそれより私が気になっているのはピケテイ氏の主張は、どうもアメリカの状況を念頭に置いているようにみられる。日本ではどうなのだろうか。
東洋経済が自前で作ったらしい「図解でわかるこれが日本の格差だ」という記事は2010年までのデータを使っており、アベノミクスと関連づけて格差が拡大しているなどととても論じられる代物ではない。アベノミクスの始まりは2012年末である!日本での格差拡大は不明とすべきだ。
アベノミクスについてピケテイ氏は
「金融政策に頼りがちなアベノミクスは間違いだ。我々は税務政策に比べ、金融対策に対してあまり期待を抱いていない。・・・・紙幣を印刷してもなんらかの利子率をさげたりすると、特定のセクターがバブル化したり、必ずしも富ませるべき人を富ませることになる。」・・・・しかしどうもこの論議はピケテイ氏がアベノミクスを深く理解していないように見える。
直観的に言えばCEOの収入はアメリカが日本の10倍近く人っていることなど、日本はだいぶ状況が変わっているように見える。また日本は案外所得税法、相続税法など税制によって富裕層が世代を超えて続くことが難しくなっているように感じる。
アベノミクスによって上位何%かわからぬがその層の所得シェアが増大し、一方で下位は全く恩恵を受けていないであろう。しかし後者が過半数であれば内閣支持率は下がり、消費も回復しないはずだ。それがそうでない傾向がここにきてみられるのは意外に恩恵を受けている者とさらに彼らの影響を受けている中間層が多いのではないか、と私は考えている。ただ我我庶民も少額ながら資本を所有しているとすれば、上手に活用して増やしてゆくことがコツコツ働いてためると同時に、極めて大切だ、と改めて認識させることは確かだ。
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