1356「「安倍官邸の正体」を読む。」(428()晴れ)

 

久しぶりに面白い本を読んだ、と感じた。ここ数年の日本の将来に対する見通しに対して知見が得られる。チーム作り、それによる外部への対処方法について成る程と思わせる。新しい問題にぶつかったとき、過去の経験とそれを生かすことが大切である、ことを学ばせる等々。

著者は1950年生まれの時事通信社記者。1979年に政治部に配属されて以来政治取材を続けてきた。最大の仕事は国家権力の構造を解明すること、国や等の方針をどこで決めたか、理由は何かを取材し、読者、視聴者に届けるのが自分の責務と考えているという。

日本の政治の最高意思決定機関は、首相安倍晋三を中心にほぼ毎日開かれる「正副官房長官会議」である。外からは見えぬこの会議の出席者は官房長官菅義偉、副長官の加藤勝信、世耕弘茂、杉田和博、これに首席秘書官今井尚哉である。

首相を中心にした彼らの結束は固く、一方で和気藹藹としているとか。民主党政権崩壊の原因は権力の中枢にいた人たちが互いに信頼しあえず、連携もせずに勝手に動いていたのが原因ではないか(50p)、大違いと著者は述べる。

安倍首相は、小泉首相のもとでの官房長官の経験が長い。そのうえ第一次安倍内閣のおり好調なスタートを切ったものの、病気が原因であったが途中で投げ出してしまった苦い経験を持つ。

一次政権下では官房長官、副長官の「ライン中心」であったが、「スタッフ中心」に変えた。五人の首相補佐官を任命し「ブレーン集団」としたが、各省の情報が集まらずトラブルをおこしてしまった。ライン中心に戻し、ラインには官邸経験の経験がある人を重点的に配置した。菅氏を除いてみな官邸経験者で経験豊富、人脈が広い。

官邸経験者を多く集めたのは、官僚対策である。官僚には動いてもらわなければならないけれど、其の言いなりになってはいけない。それには人事で甘い顔をしてはいけない。否定するべきところは明確に拒否しなければならない。

次の引用は印象的「指導者に忠誠心を抱く官僚は寥々(数の非常に少ない様)たるもの。自分の信じる正義のために献身するものがほんの少しいるだけで大部分の官僚は自己の利益のために働く」(リチャード・ニクソン)

「官僚は企画立案を本旨とし、法案の作成、予算の確保、地方自治体に対する指導監督などを行う。そこで求められるのは過去との整合性の厳密さ、公平性等だ。一方で官僚は首をすくめていれば首相などいづれ居なくなると知っている。そういう彼等に首相および官邸の意向を伝え動かしてゆかなければならぬ。それゆえに各省庁を動かすすべを知っていなければならない。どのボタンを押せばどう動くか。これらは一次政権の蹉跌から編み出した「官僚支配の手法」と言える。

一次政権から学んで変えたところは他にも多い。「問題閣僚への処遇」一つのスキャンダルを認めて辞任させるとドミノ倒しの様に閣僚の辞任が相次いだ。今回はそこで認めなかったが、小渕氏の場合はひどすぎ、松島氏とともにダブル辞任で幕引きを行った。マスコミは安倍意見を支持する読売、サンケイを重視している。

安倍首相は一次政権下で「戦後レジームからの脱却」「美しい国」という言葉を度々使った。しかし二次政権下でこの言葉を封印している。そして代わりに経済成長重視のアベノミクス推進を最重要路線に据えた。彼がこの方針に変えたのは、11311日の東日本大震災であったという。適度なインフレを主張する浜田宏一、岩田規久夫等「リフレ」派の主張を取り入れた。日銀の白川総裁等が反対したが主張をつづけた。そして12年末の総選挙で圧勝、すぐに東京株式市場は暴騰し、為替は円安に動き始めた。現在はその延長にあると言える。ただし本当にやりたいところは憲法改正、とくに96条の改正条件を3分の2から2分の1に変えるべきだと主張する。然し13年夏の参院選ではこれが国民の支持を得られていないとわかり、一時的にひっこめた。状況に応じてどう動けばいいか、TPOを実によく理解している。

先のことは分からない。然しよほどのことが無い限り、2018年までは安倍政権が続くのではないか、と著者は見ているようだ。その理由に@党総裁選、衆参両院選で勝利、選挙で勝ったことが大きい。A派閥が弱体化、ポストに権力が集中B自民党議員のもう野党には戻りたくないという心に基づく自制心C野党がバラバラ

ただしその後は総裁の任期が2期までとの規定があるので難しいだろう。そのあいだに彼は教育改革も行いたいのだという。先行きに対する不安要因は、経済成長が続くか、大事故、大災害などあるが、著者は同時に安倍首相の気性の激しさを指摘している。他に苦労人菅氏の働き、靖国神社参拝など強硬保守への配慮など面白い話がいろいろあるが省略する。

 

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