1359「「家族という病」を読む」(5月10日(日)晴れ)
著者は私より5歳くらい上、早稲田大学教育学部卒の才媛。NHKに入社、トップアナウンサーとして活躍した後、フリーとなる。今は文筆活動に専念。日本ペンクラブ副会長とか。
ベストセラーとか。確かにタイトルは人の心を惹く。指摘もいい。「家族とは何なのか」確かに人は家族のことを知らない。しかし特に子供にはそこからの逃げ道はない。成長してゆくうちに個人が芽生え家族からの逃げ道を模索し、それぞれの世界を見つける。
「家族の事しか話さない人はつまらない。」私もよくこういう人たちに出くわし、著者のいう「しょせん自慢か愚痴」を聞かされてうんざりすることが多い。良い指摘だ。
家族の問題はまず優先であるけれども、しかしそれが個人のすべてを縛るようになっては自分としても周囲としてもつまらないの極み。その結果が
「「子供のために離婚しない」は正義か」、「女は子供を産むべきか」、「家族に捨てられて安寧を生むこともある」、「孤独死は不幸ではない。」などと著者の個人的体験にもとずく著者一流の議論に続くのであろう。しかしこれが一般論である、と受け取られるとすればどうか。さらに個人の家族離れ志向は続くようで「家族の墓に入らない人が増えている。」そして「家族ほどしんどい者はない。」と続く。一概には決められないと感じる。
読み進むうちにこの人の言い方に著者の何か温かみを感じない。書評は、私は大抵著者に敬意を払い、あまり悪くは書きたくないが、私はこの本は人に勧めたくない。
最初から、なかなか良い指摘が続く。頭がよく、文章を書くのがうまいなあ、と感じる。
「「なぜ事件は家族の間で起こるのか。」「結婚できない男女が増えたわけ。」「子離れできない親は見苦しい。」「仲の悪い家族の中でも子はまっとうに育つ。」「大人にとってのいい子はろくな人間にならない」等々。
しかし一面的見方と感ずるケースも多い。「遺産を残してもいいことは一つもない。」「お金が絡むと家族関係はむき出しになる。」・・・そういうケースもあるだろうが、多くの人間がある程度遺産を残そうと頑張っていることも事実。著者の場合はどうなのだろうか。死後はご自分の財産をどこかの慈善団体に寄付するようにでも、決めたのだろうか。遺産問題を乗り越えて結びつきが強まることもある。わたしと弟の場合は、むしろ遺産相続を機に互いに理解できるようになったと思う。今では最後に頼りになるのは子と弟くらいに考えている。
「夫婦でも理解しあえることはない。」当然である。夫婦と言う者は一部が重なった二つの円のようなものだ。お互いがそれぞれの世界を持ち、しかし共通部分がありそこを育てて行く・・・・そういう物ではないのか。
「つれあいとは他人のままでいたいと感じた。」彼女は病弱だというのだろうか、夫の了解も得て子も作らぬことに決めている様子だ。しかし著者は心の底では夫婦と子たちの温かい家庭を夢見ているのではないか、と感じた。それがかなわぬから半ば嫉妬で、電車の中でうるさいとかあるいは飛行機で窓際の席を譲れと強要するのは暴力、などと書いているのではないか。
最後の「旅立った家族に手紙を書くという事」で、作者の本姓が現れたように思う。読んでいるうちに腹が立った。もう墓に入ったお父さんやお母さんはもし返信が書けるとしたら、どういう手紙を書くのだろうと思った。
彼女が生まれたころ226事件が起こった。栃木に住んで居たが、父がなぜ止めに東京に行かなかったのだ、と書いている。そして行っていたら皇道派に取り囲まれて帰れなかったかもしれず、参加者の一人として処刑されたかもしれません、しかし私はそうであった方が誇りに思えた・・・・なんという書きぐさだろう。生きていてくれたおかげで、自分は大切に育てられ、良い大学を出て立派な社会人になれたのではないか。
さらに著者は「(あなたが)敗戦後も死を選ばないのが不思議でした。「辱めを受けて生きるより、誇りを持って死ね。」という教育をうけていたからです。」・・・・ここでもさっさと死んでほしかったと読めるような書きぶりである。
極めつけは父がもう危ないという時に病院の医師から手紙が届く「あなたはテレビの中で優しげに微笑んでいる。たくさんの人々があなたの笑顔にだまされているが、なんと冷たい女なのだ。結核病棟に老いの身を横たえている父親を一度も見舞に来たことが無いではないか。」これに対し著者は「父娘の確執など第三者にわかるわけがない・・・。」と行くことを拒否する。私には医者の考えの方が正しいと思う。枕元に著者の写真とインタビュー記事が張ってあったそうだ。それをいまさら「あなたの優しさが伝わる」だと・・・・調子のいいことばかり書くものだ。
最後の「私への手紙」は「家族とよべるのは連れ合いだけになりました。」・・・それが人生。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail address agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ http://www4.plala.or.jp/agatha/