1360「私の好きな?セクハラ」(515日(金)晴れ)

 

あちらの方が怪しい年齢になっても、男は女が気になる。雀百までの踊りを忘れぬ伝よろしく、女が女を忘れられぬのと同じで、男だって男を忘れられぬ。

高校同期のa君は、70歳を超えた我々が、若さを保つためには一日4人の若い女性と話し合うべきだ、という。そこで彼は喫茶店でもレストランでも実に気軽に女店員に話しかける。また森繁久彌は、晩年、毎朝事務所に来ると女性スタッフの尻をさらりと触るのだという。それもまた一つの若さ維持策か。

然し如才なさが無く、妙に恥ずかしがり屋の私はそれらができぬ。仕方なく目に頼ることにした。お縄は嫌だから携帯で写真に撮るようなことはしないけれど・・・・・。

朝ラジオ体操に行く。私は指導員の後ろに行き、あの女性が正面に見えるところに立つ。あの女性は私と同じ年齢、おばさんではあるけれども、どこか洒落ていて色気がある。化粧も何もしていないように見えて、襟元のすっきりした洋服を身に着け、スラックスにはピンクのストライプが入っていたりする。彼女が腕を振り、前にかがみ、足を揚げるのにつれて、私も同じ行為をして楽しむ。なぜ彼女だけを心地よく感じるか・・・・自分でもわからぬ。

ところで今日は午后4時半から歯医者さん。浜松町にあるb歯科。

bさんは禿頭だがやさしく患者の扱いが上手、そのうえ腕も好さそうで気に入っている。予防医療というのであろうか、別に悪くなくても3か月に一度くらいの割合で診てくれる。行くと若い女性の技工が歯垢を取ってくれる。私の場合はかなり歯垢が付きやすい性質らしい。技工は23人いるのだけれど、私を担当しているらしい技工はcさん。三十位なのであろうか、結婚しているのかどうかさえ知らぬ。色白とは言えぬが背が高く、眼が大きく、悪くはない顔立。スタイルもよろしい。気に入っている。

彼女はなかなかうるさいところがある。この前は「これで磨いているんですか。まだこんなに残っています。磨かないとまた虫歯になりますよ。」今日は昼ごろ家を出たが、もちろん歯は丁寧に磨いてきた。治療台にのるから、顔を洗い、髭を整え、靴下を変え、ズボンもきれいなもの。

彼女は、少し冷たい手を私の頬に押し付け「お口を開いて下さい。」と事務的に始める。まだ彼女の手の感触を楽しんでいる気分。少しいいにおいがする。

「最初に歯槽膿漏のチェックをします。」

ピンセットのようなものを歯茎にあて、硬さか何かで良い状態1から最悪の5くらいであるかを判定する。私は前歯はいつも1から3くらいで良いのだが、奥の方は歯の磨き方が悪いのか4とか5になってしまう。彼女は、ピンセットをつぎつぎ突き立てて行く。痛い、痛い、けれど我慢。ピンセットなんかでなく、あのきれいな唇を突き立ててくれれば好いが、そうは問屋がおろさぬ。治療の時いつもじっと目を開けてみよう、彼女の胸のあたりを鑑賞しようと思う。しかし実際は痛いから、目を閉じてしまう。時折開けてみても白い大きなマスクを着け眼鏡をかけ、お顔が全部見えぬのが残念。

「左下の7番、被せてある金属の下に食べたものが入って虫歯になっています。後で先生に診て詰め物をしてもらいます。」

22日から10日間くらい旅行に行くのですけれど・・・・。」

「大丈夫です。旅行からお帰りになってから治療すれば十分でしょう。」

次は歯垢である。先端が曲がった錐のようなやつで、歯についた汚れをこそげ落としてゆく。「あ、痛い、痛い」しかし飛び上がるほどではない。もし本当にそうなら空いている手で彼女の腿あたりにでも触れて飛び上がって見せるのだけれど・・・・・。

歯の上左から右、下左から右、また上に戻ったりする。「先生、そこはもう済みました。」と言いたくなる。彼女は涼しい顔でおしゃべりを始める。

「旅行はどこに行かれるんですか。バルト三国?秘境じゃないですか。いいなあ。私なんかスタンダードなところにも行けません。」・・・・バルト三国が秘境になってしまった!

答えたいがなかなか答えられぬ。「うぐっ、うぐっ!」歯医者の女性をナンパするにはどうやったらいいか。終ると歯間ブラシをいれて掃除したり、電動ブラシのようなもので磨いたり、水をかけたり。もしかしたら彼女は私の歯がおもちゃみたいに気に入っているのかもしれぬ。40分くらいたってから、後ろを向き

「先生、終わりました。左下7番が虫歯で腐っているので被せ物を取っておきました。」

ようやく禿先生登場。ちょっとと覗いて同じ説明をした後「ほら、ここですよ。」と鏡を使って見せてくれる。黒く汚れた穴。詰め物をしてまた冠をかぶせ、5分くらいで終了。

お会計係は先生の奥様。清算しながら中を覗くとあのcさんは、作業パンタロンの裾をつまみながら、私のことなど忘れた様子でなにやら先生と真剣に打ち合わせていた。

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/