1373  「同期の花、aさんの死。」718日(土)

 

(日記から抜粋)

77()  雨時々曇り  また訃報が入った。同期のaさんという女性である。私は彼女のことを良く知らぬ。クラスが一緒になったこともない。しかし彼女は同期会の会長であるうえ、同期の歌の会や歩く会に時々やってきたので少し知っている。

喉頭がんを患っているとの話を半年くらい前であろうか聞いた。手術には摘出する方法と放射線治療による方法がある。「絶対後者にすべきだ。」とb君が言っていたが、彼女は後者をえらんだ。其の後、なかなか集中治療室から出られない様子だ、と見舞に行った人の話であった。

彼女は心理学のコンサルタントのようなことをやっていたらしいが、ある時仕事を終えて、お刺身などどっさりお土産を抱えて、男ばかりの歌会にはせ参じてきた。彼女は私の歌を「音程が狂っている」とご挨拶。くそっと思った。みなに勧められると「上海がえりのリル」を唄った。高音がきれいであった。

最後に彼女が歌会に来たのは半年くらい前であったような気がする。この年齢になると人間なんて何とあっさり死んでしまうのか、と思う。明日葬式。縁はうすいが、お刺身のお土産の思い出が強くゆこうと決めた。

テレビで「七夕の飾りにどんな願い事を書きますか。」と聞かれた往年の名歌手が「元気で長生きしたいですよ。」と答えていた。なでしこは残念であった。然しよく決勝まで言った者だ。錦織もすごいが、最近はずいぶん相手に研究されているようだ。楽天は8連敗の後やっと一勝。世の中には色々なことが起こっている。一つ一つ見て行くことは作りもののテレビドラマや映画よりずっと面白い。こういう面白い物を見るためにも長生きはしたいものだ・・・・。

静岡に住む従妹が送ってくれたサクラエビを使って、今日はガールフレンドのAさんと天ぷらの夕食。

「明日はaさんのお通夜にゆく。キリスト教式らしい。」というとキリスト教徒のAさんは「お通夜ではなく前夜祭よ。」「何かお祭りみたいだな。」「それから御霊前とかそういうのではなく、お花代とするのよ。」・・・・私は黙って聞いている。

78日(火)雨  久しぶりに黒い喪服を着た。ズボンがやっと入った。その上から最近買ったベルトを締めた。一番奥の穴までしめこんだがベルトはゆるゆる・・・・腹が出たものだ。やすらぎ会館は乃木坂を降りてすぐのところにある区営の葬儀場であった。キリスト教式の葬儀。お通夜とはいわず「前夜式」というのだそうだ。5分くらい前に行ったが中は一杯。一番後ろにbさん夫妻が見えた。讃美歌を唄い、牧師の話があったあと献花。祭壇には花に囲まれてにこやかに笑う彼女の写真。とても73歳とは思えぬ。少し若い時の写真かもしれぬ。献花をするときに合掌はしないでくれと牧師。キリスト教流なのであろうが、いつもの習慣でつい手を合わせそうになる。

お清めの席。これはキリスト教でも同じようにやるという事か。

葬儀には高校同期の者が目立った。彼女は正確には診療心理士というのだそうだ。

牧師は、遺族から話を聞いてそういう仕事をしているのなら私も生前にあっておきたかった、としていた。しかし遺族の希望で彼女の一生については何も書かないことにしたとか。パンフレットの裏には194225日出生、201575日召天(73歳)とのみあった。故人は、ずいぶん頑張り屋さんで勉強していたことを始めて知った。40歳代になってからどこかの大学院に行き学んだとか。

7時過ぎにようやく帰途についた。雨はまだ全然止んでいない。家に戻るとずいぶん疲れた感じがした。部屋の隅に脱いだばかりの喪服、私もそろそろ身辺整理でもするかと感じた。同期のc君はすでに始めていて「死ぬときくらいきれいな家でしにたい。」と大工を入れて自宅を随分手直ししている様子。

711日(土)晴れ  夜、同期の飲み会。今日の会の通知に次のようにあった。

「aさんを 偲んで・・aちゃんは、この会の常連でもありました・・・。」

d君が、彼女とのメールのやり取りや病状の経過をコピーしたものを用意してきた。

それを読み上げる。今日は別の場所でも偲ぶ会のようなものをやっているらしい。

彼女は東大病院に入院していたという。一度一般病棟に移されたが、再度悪化、再びICUにうつされてしまったのだそうだ。彼女は、乳がんもやっていたと聞くからその影響もあったのか・・・・わからぬ。いつものメンバーに加え珍しいメンバーが3人ほど来ていた。メンバーが新しく入ってくるたびに献杯をおこなった。同じ仲間が次々なくなってゆくのは何ともさびしいものだ。

そして通夜と葬儀の話。私は通夜にのみ出たため、彼女の死に顔を見なかったが、葬儀に出た人はお別れのときに見られたとか。安らかな眠りであったと噂していた。

やがて歌が始まり、それが終るとお開き。帰りにd君が言っていた言葉が印象的。

「女性のお見舞いは難しい。相手が気を使い、時には嫌がるのだ。」

女性は男に、あるいは世間にきれいであった頃の自分の印象を持ち続けてほしいと願うのか。ご冥福を祈る。

 

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