1374「新安保闘争に思う」(714日(火)晴れ)

 

安全保障関連法案の政府案が衆議院特別委員会で怒号の中承認され衆議院に送られた。浜田議長の議事運営も相当なものだが、出席しないと言っていた野党が議場に姿を現し、採決にあたってはプラカードを掲げるパフォーマンスにはあきれてしまった。衆議院では野党は、意見陳述はおこなったものの採決では皆退場してしまった。プラカード作戦は本会議場では取れないと考えたからか。

この法案の成立を与党が急いでいる理由はもちろん安倍首相が5月の米連邦議会演説でこの法案の今夏成立を約束したことによるところが大きいのだろう。参議院でもめた場合でも60日間議決できなければ否決されたものとみなし衆議院に送り返す、そこで3分の2の賛成を得て再可決することができるとのルールを念頭に入れたものらしい。

私自身は集団的自衛権を容認する今回の法案について反対する気にはならない。一番大きい理由は、国際情勢の変化する中、大国となった日本もそれ相応の義務を負わざるを得ない、負わなければ自分自身を守ってもらう事すら期待できない世の中になった、と感じるからである。「憲法解釈の勝手な変更」というものもいるが、自衛隊の誕生など時代に応じた解釈の変更を行ってきたのではないか、と考える。憲法はずるいと思うのだが、民主主義の世の中でありながら国民の3分の2の賛成が無ければ改正できないとなっている。つまり3分の1の主張が、残りの考えを押しつぶしていいという事になっており、これこそ民主主義に反するものと考える。

しかし私の主張は、今回は置くとして、今回の一連の世の中の動きがあの安保闘争の再現のように見えて仕方がないところがある。両者の主張も議論がかみ合っていないところも・・・・。そしてたとえばこれが「戦争につながる。」などという煽動も・・・・。そこであのころをウイキペデイアを繰りながら復習してみたいと感じた。

安保闘争とは「1959から1960年、1970年の2度にわたり、日本で展開された安保条約(日米安全保障条約)の与党自民党による慎重審議なくして強行採決を行ったことに関して反発した国会議員、労働者や学生、市民、および批准そのものに反対する国内左翼勢力が参加した日本史上で空前の規模の反政府、反米運動とそれに伴う政治闘争である。・・・」

60年安保闘争の頃、私は最初の闘争の頃予備校生であった。一度参加し、そのころあの樺美智子さんが殺される事件が起こった。しかし私も含め、多くの人は安保条約の本質を理解していなかったように思う。世の中は安保反対一色で塗りつぶされていたように見えるが、岸首相の「声なき声」が改正を支持している、との発言が記憶に残る。

更に引用編集すると

「安保条約を単にアメリカ軍に基地を提供するための条約から、日米共同防衛を義務づけたより平等な条約に改正するものであった。19601月に岸以下全権団が訪米、アイゼンハワー大統領と会談し、新安保条約の調印と同大統領の訪日で合意。119日に条約が調印された。・・・・」

「条約は参議院の議決がないまま、619日成立。・・・岸内閣は混乱を収拾するため、責任をとる形で、総辞職を表明した。岸は、715日の総辞職の前日、暴漢に襲撃され重傷を負った。「60年安保闘争」は空前の盛り上がりを見せたが、戦前の東条内閣の幕僚でありA級戦犯容疑者にもなった岸とその政治手法に対する反感により支えられた倒幕運動という性格が強くなり・・・安保改定そのものへの反対運動という性格は薄くなっていたため、岸内閣が退陣し池田勇人内閣が成立すると、運動は急激に退潮した。」

1970年に10年間の期限を迎え、日米安保条約が自動延長するに当たり、これを阻止して条約破棄を通告させようとする運動が起こった。・・・・・東大闘争、日大闘争を始め、全国の主要な国公立大学立大学ではバリケード封鎖が行われ、「70年安保粉砕」をスローガンとして大規模なデモンストレーションが全国で継続的に展開された。」

しかし其の後、日本がこの条約のおかげで大いに発展したことは事実であろう。アメリカに守られて日本はぬくぬくと成長を楽しんだのである。今回、安全保障関連法案が国会を通過し、自衛隊が海外で今少し自由に活動できるようになったとし、そのあと10年、15年たって、日本国民は今回の改正をどう見るであろうか。

後記 18日、NHKスぺシアル「戦後70年ニッポンの肖像」が面白かった。戦後日本の復興を目指してアメリカ好きの吉田首相は対米追従路線を取った。経済に重きを置き、防衛など金のかかることはアメリカに任そう。一方パージから戻ってきた岸首相は自立路線を志向した。憲法は米国の作った者、日本人で作りなおさねばならぬ。その道筋をつけるために不平等になっている安保条約を改定しようとした。然し思わぬ反発を招き、退陣に追い込まれる。憲法改正には、其の後の内閣は情勢を鑑み消極的であったが、安倍首相はこれに積極的に取り組もうとしているようだ。

また国家の動きや今回の評価については次の記事が冷静に物を見ているように思う。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150718-00075213-diamond-nb&ref=rank

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/

 

読者から次のメールをいただきました。

日米安保条約の詳細は全く知らないが、アメリカにとっては理想的な条約ではないか、と思う。

アメリカ本土から遠い日本が、ロシアや中国に対する防波堤になって、「戦争になればアメリカはそれを支援する」というポーズを示しているのが、アメリカにとって最善のシナリオであろう。

元々アメリカにとって、太平洋の向こうのアジアは、ヨーロッパや石油の出る中東に比べて、重要度ははるかに小さい。

アメリカは沖縄を中心に日本の基地を自由に無償で使用できる。日本に軍隊を駐留させ訓練をし、その費用は「思いやり予算」として日本が負担している。少なくとも戦後70年、アメリカ軍は、日本を守るために一人も戦争犠牲者を出していない。日米安保はアメリカにとっては十分ペイしている。

日本が攻撃された場合、アメリカが本気で日本を守ってくれる、と思っている日本人はほとんどいないだろう。「最強軍事大国アメリカの核の傘の下にいる」という形が大事なのであって、中国、ロシア、北朝鮮の指導者も、それを口実に自国内の強硬派を抑えることができる。

今回の「集団的自衛権」容認によって、もし自衛隊が地球の裏側にまで支援に行ったら、それこそ日本の防衛が手薄になり、危険になる。どうせ自衛隊は安全な地域での後方支援なのだから、アメリカにとっては、自衛隊派遣よりは、今まで通り、金銭支援の方がありがたい。

確かに、中国は、経済・軍事の両面で勢いを増してきている。したがって、「辺境防備」において、海上自衛隊と海上保安庁との共同作戦を充実させた方が良いのではないかと思う。

余談:岸内閣が「安保改定」に、竹下内閣が「消費税の創設」に、民主党内閣が「消費増税」に、安倍内閣が「集団的自衛権」に政治生命をかけ、それを実行して自らも倒れる、というのはひとつのパターンであろう。私は「消費税」はその後の日本にとって良かったが、「安保」や「集団的自衛権」は成立しても日米同盟の本質や日本の安全にはあまり影響がないと思う。何か無駄な「文言論争」「神学論争」をして、政治エネルギを浪費しているような気がする。成熟した日本社会の今後の方向性の議論や少子高齢化対策のほうがずっと大事なのに、と思う。