1382「戦後七十年、安倍談話について思う」(8月14日(金)曇り)
安倍首相による戦後70年の総理談話が発表された。
私のパソコンには、村山談話と合わせて入れてある。安倍談話を聞いた時正直「うまいなあ、相手の顔を立てながら自分の主張は貫き通す。書き方というのはこういう風にするのだ。」と感じた。中国や韓国あるいは日本国内の反対勢力であろうとケチをつけにくい内容になっているように感じる。よほどブレーンがしっかりしているのか。
首相談話を誰のために、何のためにするのか、なぜこの時期にするのかという議論が行われていた。
首相談話は重い。首相の単なる談話とは違う。国家の意思表明を意味している。それ故に今後の日本、あるいは内閣の立場を表明するときに根本に据えられよう。それ故に今回は、首相は公明党に相談し、閣議決定したうえで発表したようだ。村山談話の方は諸外国への働きかけがメインであったように感じる。ところがこの談話はまず日本国民、中国韓国などアジア諸国、欧米の順に対象として思うところを述べている。
まず日本の歴史、立場を明確にし、日本国民のこうむった被害に対するコメントに多くを費やしている。まず20世紀の日本の歴史から説き起こしている。その中における日本の果たした役割を明確にしている。しかし中国や韓国の近代化を助け、太平洋戦争ではアジア近隣諸国を欧米の植民地支配から解放した、とは書けぬから日露戦争の話を持ち出している。
「百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。」
そして日本が軍国主義化していった経緯を述べるが、ここではこれも「欧米の締め付けが日本の戦争原因」としたいところをさりげなく書いている。
「世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。」
そしてその結果について日本国民のこうむった被害をまず述べる。村山談話はこの意識が薄い。
「先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱の、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。」
諸般の情勢から入れざるを得なかった「侵略と植民地支配」への「痛切な反省とおわび」などという文言を半ば引用のような形で述べる一方、先の大戦への深い悔悟の念」を表明し
「自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。」
お詫びの表明をしながら、ODAなどによる援助の話をこれもそっと言及している。
「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。」
そしてここで村山談話等と決別し、未来志向の日本を築きたいという思いがにじみでる。拍手を送りたい。「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」
今回の談話には支持率低下と安保法制の問題があると指摘する声もある。60年安保は日米を対等の位置に置き、安全を享受しながら日本は発展してきた。しかし昨今の情勢は「日本人が危ないところに行かず、自分たちだけの幸せを守って行けるような時代は終わった。」のであり、其のために集団的自衛権利等を盛り込んだ安保法案の成立と国民の支持が重要である。それを勘案しながら次の下りを入れたのであろうか。
「だからこそ、我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。」
後記 村山前首相が「何のための談話だ、出す必要などなかった。」と憤慨しているとか。安倍談話と村山談話、今国民がのぞむ方向はどちらか、みなさん自身が読み比べて考えることをお勧めする。
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