1395TPP協定の大筋合意を喜ぶ」(107日(水)晴れ)

 

「世界は一つ、人類みな兄弟」とは理想であるけれども、現実にはなかなかうまくゆかぬ。

然しそれを理想と考えるなら、皆が楽しく暮らせるように、自由に行き来でき、特定の権利の保護にはルールを決め、関税など無くしてしまうべきではないか。

しかし個人はどんな場合でも自己の利益を最優先で考える。その上で少しだけ他己の利益も考える。国家は個人の集合体である。さまざまな欲望を持った個人が国家を形作る。人類全体の希望を国家や個人が認識しないわけではない。しかし自国の利益を犠牲にしてまで、全体の利益を優先する国家は残念ながらほとんど出てこない。その結果が地域の不安定を招き、戦争を起こす原因を導く。

環太平洋経済協定(TPP)に関する5年半に及ぶ交渉が決着し、人口8億人、世界の国内総生産(GDP)4割を占める最大の自由貿易圏が誕生する。素直に喜びたい。

以下、日経新聞の記事(6日)をもとに自分の意見を述べる。

今回参加したのは12か国

「米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージランド、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、日本」である。

逆に参加しなかった、あるいはまだ参加していない国は「中国、韓国、北朝鮮、ロシア、フィリピン、タイ、中米諸国等であろうか。

この協定の本質は参加国の間にこれまでなかった「国際ルール」の制定に或る。なぜ新しいルールの経済圏が必要なのか。自由で公正な競争を通じ高い経済価値を生みだす力を発揮するためだ。12か国が埋めがたい乳製品や医薬品での溝を最後に克服できたのは、目先の損得よりルール策定を優先する大局観からであろう。さらに人の交流と域内分業、投資で互いに相手を必要とする依存関係が深まれば地域の安定が増すからだ。次の課題は仲間を増やすことだ。担当した甘利大臣は「複数の国がTPP参加を待っている:」と語っているとか。期待したい。

別の見方で現状を考えると、この協定が成立する背景には中国の台頭がある。南シナ海に軍事進出し、国有ガリバー企業が幅を利かせる超大国、その恣意的な判断と腕力がものをいう不安定な未来が懸念される。TPPと同じような文言を唱えながら今一歩進まぬ様子のAIIBは、その衣の陰に「アメリカと世界を二分して新しい秩序を作ろう。」という意思が見え隠れするからではないか。日本も現段階では見送って正解であった、と思う。

TPPの経済効果は、2013年にGDP3.2兆円と押し上げるとはじかれていた。安い農産品を購入することで国内生産額が2.9兆円減る。しかし関税撤廃によって工業品の輸出が増えたり、安い海外製品が国内に入ってくることで消費が増えたりしてGDP6.1兆円押し上げるから差し引き3,2兆円の効果を認めていた。しかしこれは全品目の関税が即時撤廃されることが条件であるから、今回の合意ではそこまではゆかぬ。しかしそれでも日本の経済界は大歓迎である。一方農業では「攻めの農業」に転換できるかがどうかが問われる時代になったという事か。

またTPPは日本社会を覆う「内ごもり」を破るカギとなるかもしれない、という見方も重要だ。

歓迎されるTPP大筋合意だが、まだ油断できない。米国の場合

「法制上実際に署名できるのは大筋合意から90日後の来年1月の見込み。そこからさらに1か月ほど間隔をあけてTPP実施法案(批准書案)を議会に提出し、来週からやっと実質審議が始まる段取り。一方で来年2月以降は次期大統領選と連邦議会選挙が本格化する。来夏までに実施法案が成立しないとオバマ政権の間に批准できない恐れ。」。

日本国内でも異論は多く予断を許さぬ。この期に及んでも野党は「国益に即しているとは評価できない」「『聖域を守る』とした公約を安倍政権が公然と投げ捨てた。」「大きく譲歩しており極めて問題だ。」など反論のための反論としか言いようにない議論を繰り返す。

TPPと同じような意味あいを持つEUは、今ギリシャ問題など多くの問題を抱えている。しかし思想的には全く素晴らしい物ではないかと思う。今となっては、これを解体して昔のようにばらばらにしてしまえ、という発想は決して出てこないに違いない。

地球上でいくつもの地域で経済的結びつきを軸に安定した世界が出来上がる。それが当面の目標。となればTPP協定の最終目標も中国を取り込むことに或るのかもしれない。そしてそのずっと先にはこの地域ごとの協定が世界全体の物に広がればいい。いつの日にか「世界自由貿易化協定。」或いは「世界連邦の成立」・・・・・。そうすれば戦争もなくなるかも・・・・。

 

註 ご意見をお待ちしています。

e-mail address   agatha@ivory.plala.or.jp

ホームページ    http://www4.plala.or.jp/agatha/